イトウ

イトウ(Hucho perryi)

イトウ(Hucho perryi)

イトウ(Hucho perryi)

【目 次】

1 イトウの主な生息地
2 イトウのルックス・表情

3 イトウの運動能力・賢さ
4 イトウのサイズ
5 イトウの年齢

6 イトウのライフサイクル
7 はじめてイトウを狙うならココ

1 イトウの主な生息地
  • 猿払川(宗谷管内猿払村)
  • 朱鞠内湖(上川管内幌加内町)
  • 天塩川(上川管内中川町ほか)
  • 釧路川(釧路管内標茶町、釧路市)
  • 金山湖(上川管内南富良野町)
  • 尻別川(後志管内京極町ほか)
  • その他、宗谷、釧路、根室地域の一部の河川等

2 イトウのルックス・表情

ちょっとブサイクで
ユーモラスな雰囲気を醸し出す表情は、
およそ「鱒」らしくはない。

特に、長さ80cmを超えるくらいから、
徐々に顔の形が扁平になってくるため、
そのルックスは、「鱒」特有の
「流線型の美しいプロポーション」とは
お世辞にも言えないのだ。

正面からのアングル

正面からのアングル

それでも、90cmを超えるあたりから
表情から幼さが消え、
周囲を威圧するような
イトウらしい風格が備わってくる。

そんな大人なイトウの大胆不敵かつ
威風堂々とした立ち振る舞いには、
北の大地に君臨する王者の雰囲気が漂う。

ミノーを丸呑みする大胆さ

ミノーを丸呑みする大胆さ

3 イトウの運動能力・賢さ

瞬間的なスピードに乏しく
あまり機敏さを感じさせないが、
強靭なトルクと粘り強さが身上。

それでも、時に激しいジャンプを見せるなど、
機敏な一面を見せることも。

スーパージャンプ!

スーパージャンプ!

一般的に警戒心は薄く、
学習能力もあまり高いとは思えない。

けれど、プレッシャーの高い特定流域には、
目の前に人間がいることを悟っていながらも
全く意に介さずに捕食活動を続け、
ルアーやフライには一切目もくれず、
リアルベイトのみをきっちりと見分ける
ツワモノもいたりする。

そんな奴を私は尊敬の念を込めて
「天才クン」と呼び、一目置いている。

つまるところ、運動能力も賢さも
とにかく、個体差が大きいのだ。

だから種としてのその素性は、
神秘のベールに包まれたままである。

4 イトウのサイズ

私が自然体でイトウ釣りをしていて、
年間に30尾以上のイトウをキャッチすれば、
魚のサイズのアベレージは、
概ね50cm台に収束していく。

川の上流域から下流域まで偏りなく巡って、
標本数が増えれば増えるほど、
誤差は小さくなり、
だいたい53cmあたりに
着地することが多い。

表情に幼さが残る中型イトウ

表情に幼さが残る中型イトウ

ところで、私は、
2011年と2012年の2年間、
イトウを狙うときは、
大型魚だけにターゲットを絞り込んで
釣行に挑むというチャレンジをした
経験がある。

結果、2011年は28尾、
2012年は33尾と、例年と比較して、
キャッチしたイトウの数は大きく減ったが、
魚のサイズのアベレージは、
2年とも88cmと一気に大型化。

大型イトウのヒットシーン

大型イトウのヒットシーン

大型魚の内訳を見てみると、
2011年は100cm以上が9尾で、
最大サイズが113cm、
2012年は100cm以上が11尾で、
最大サイズが112cmというもの。

全体をグラフ化すると、
2年とも概ね92cmを頂点とする
正規分布に近い形状を示した。

なお、頂点が、4cmほど
アベレージとズレているのは、
2011年は40cm、
2012年は51cmという中・小型魚が
1尾ずつ混じったためだ。

大型イトウのファイトは迫力満点!

大型イトウのファイトは迫力満点!

このように、2年続けて同様の傾向を
示したことは極めて重要な事実であり、
一定の再現性が確認できたという意味で
大きな収穫だと捉えている。

一般的に、メーターオーバーのイトウが
アングラーの間で
神聖化されている印象があるが、
確かに、その老獪なファイトは
90cm台の魚のそれとは、明らかに別物だ。

一方で、ここまでのデータを見れば、
100cmをちょっと超える程度の
個体はさほど珍しくないことがわかる。

1mをちょっと超えたくらいのイトウ

1mをちょっと超えたくらいのイトウ

ところが、110cmを超えるイトウとなると
事情は大きく異なり、
出逢いの機会は極端に減る。

運よく、上記の2年間に110cm超えを
1尾ずつキャッチすることに成功したが、
その後2016年にキャッチした
116cmを加えても、
今まで3尾しか出逢えていないのだから、
これは本当に希少な存在と言っても
言い過ぎではないのであろう。

110cmを超えるイトウはさすがにレアだ

110cmを超えるイトウはさすがにレアだ

ちなみに、フィールドで泳ぐ姿を確認した
最大のイトウは、およそ125cmである。

5 イトウの年齢

私が過去にキャッチした100cmを超える
イトウ数尾から鱗を採取し、
研究者に耳石を顕微鏡で観察してもらって
おおよその年齢を推定してもらったことが
ある。

私が出逢った最大魚である
116cmは17歳、
サンプルの中でもっとも若かったのは
103cmの13歳であった。

116cmは、さすがに20歳以上かと
にわかに期待したが、さにあらず。

長く生きる魚だからこそリリースの質を上げることが大切

長く生きる魚だからこそリリースの質を上げることが大切

イトウの生息する環境によって、
成長スピードは大きく異なるようで、
私が訪れるフィールドの中では、
特に天塩川のイトウが、
他の河川のイトウよりも
成長が早いという結果であった。

尻別川のイトウについては、釣りを
自粛しているため個人的なデータはないが、
学術的な研究結果からは、
他の河川のイトウより成長が早いことが
報告されている。

なお、年齢については、
私のチャレンジでは標本数が十分でなく、
再現性の担保が保証できないため、
おおよその傾向として
理解するにとどめている。

101cmあるが醸し出す雰囲気はまだ若い

101cmあるが醸し出す雰囲気はまだ若い

6 イトウのライフサイクル

<1月~3月>

結氷した湖沼や河川で、
あまり大きくは移動せずに過ごす。

河川では低水温には高い適応を見せ、
来たる産卵の季節に備えて
捕食活動を継続して行っている。

天塩川のフロストフラワー

天塩川のフロストフラワー

<4月~5月上旬>

雪代による川の増水に乗じて、
一気に上流を目指す。

オスはド派手な赤色の婚姻色に身を染め、
時にメスの奪い合いで大けがをするほど
激しいバトルを繰り広げることも。

産卵に参加せず、川を遡上することなく
下流部で捕食活動を行う個体もいる。

尻別川流域の春

尻別川流域の春

<5月中旬~6月>

産卵を終えた個体は、
一気に川の下流を目指す。

産卵の際に負った傷が痛々しい
個体も珍しくないが、
それでもベイトが豊富な流域まで下ると、
ベイトを大量に丸呑みしてしまうような
豪快な捕食活動を行う個体もいて、
一年でもっとも大胆な挙動を見せる。

5月のオスは婚姻色が残っていることが多い

5月のオスは婚姻色が残っていることが多い

<7月~9月中旬>

高水温に弱いイトウは、水温の上昇に伴って、
支流や本流でも湧水の影響などで
比較的低水温の流域に移動する個体が多い。

移動後も、高水温と渇水の影響で
活性は著しく低下するが、適度な雨が降って
水温の低下と水位の上昇が重なった一時、
狂ったような捕食活動を見せる瞬間がある。

神出鬼没な夏イトウ

神出鬼没な夏イトウ

<9月下旬~11月>

一年で、もっとも美しい魚体に出逢える季節。

適水温となるこの時期、
イトウは活発にベイトを追うようになる。

コンディションもMAXとなり、
ヒット後は暴力的なファイトを繰り広げる。

ただし、移動の速度が速く、
魚のポジションを絞り込むのに
苦労することが多い。

秋の天塩川のイトウは強くて美しい

秋の天塩川のイトウは強くて美しい

<12月>

多くのフィールドが雪と氷で閉ざされる季節、
水温が0℃近くまで下がっても、
イトウはまだまだベイトを追う。

秋シーズンと比べると、
さすがに捕食スピードやパワーは
落ちるものの、魚体の美しさは衰えない。

深い雪に覆われた北の大地に、
エゾシカと協力して切り拓いた
一本のけもの道を通って、川辺に立つ。

そんな経験ができるのも、
厳しい季節になっても心折れることなく
フィールドに向かう強い意志を持った
アングラーだけの特権だ。

結氷期のイトウ すぐにリリース

結氷期のイトウ すぐにリリース

7 はじめてイトウを狙うならココ

☆ 猿払川

猿払川(さるふつがわ)

猿払川(さるふつがわ)

学術的な研究結果からも明らかなように、
他のフィールドを圧倒する魚影を誇る。

この川に立てば、
少なくともイトウが幻の魚でないことを
実感できるだろう。

その分、
圧倒的なフィッシングプレッシャーとの
戦いを強いられることになるが、
いかんせん魚のストック量が多いため、
決してあきらめないハートをもって
魚と対峙すれば、きっと出逢いの瞬間が
訪れるに違いない。

ハイシーズンには
かなり混雑するフィールドでもあるので、
譲り合いの精神を持って、
他のアングラーにも十分配慮しながら
気持ちよく釣りを楽しんでほしい。

安全面では、本流河川にエントリーした
経験のあるアングラーであれば、
さほど危惧するところはないが、
下流部の潮汐による
カレントの発生には十分注意が必要だ。

▼ 猿払イトウの会ホームページはこちらから

☆ 朱鞠内湖

朱鞠内湖(しゅまりないこ)

朱鞠内湖(しゅまりないこ)

道内では珍しく、しっかりとした
管理が行われているフィールドで、
魚影の濃さは折り紙付き。

渡船などのサービスも充実していて、
直近の釣果情報なども得られるので、
遠征者がエントリーしやすい環境が
整っているフィールドと言えるだろう。

実は、いろいろと思うところがあって、
私はこのフィールドで
釣りをしたことがないのだが、
常連組から聞こえてくる話では、
サイズを選ばなければ猿払川以上に
釣りやすいとの声がほとんど。

自分の経験談ではなく申し訳ないのだが、
期待値の高いフィールドあることに
疑いはないであろう。

なお、朱鞠内湖は、
漁協による管理が行われていて、
釣行の際は入漁料が必要となる。

レギュレーション
しっかりと定められているので、
事前に確認してから釣行に臨んでほしい。

▼ 朱鞠内湖漁業協同組合ホームページはこちらから

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