イトウ(Hucho perryi)
![イトウ(Hucho perryi)](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-12-1024x683.jpg)
イトウ(Hucho perryi)
1 イトウの主な生息地
2 イトウのルックス・表情
3 イトウの運動能力・賢さ
4 イトウのサイズ
5 イトウの年齢
6 イトウのライフサイクル
7 はじめてイトウを狙うならココ
- 猿払川(宗谷管内猿払村)
- 朱鞠内湖(上川管内幌加内町)
- 天塩川(上川管内中川町ほか)
- 釧路川(釧路管内標茶町、釧路市)
- 金山湖(上川管内南富良野町)
- 尻別川(後志管内京極町ほか)
- その他、宗谷、釧路、根室地域の一部の河川等
ちょっとブサイクで
ユーモラスな雰囲気を醸し出す表情は、
およそ「鱒」らしくはない。
特に、長さ80cmを超えるくらいから、
徐々に顔の形が扁平になってくるため、
そのルックスは、「鱒」特有の
「流線型の美しいプロポーション」とは
お世辞にも言えないのだ。
![正面からのアングル](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-16-252x300.jpg)
正面からのアングル
それでも、90cmを超えるあたりから
表情から幼さが消え、
周囲を威圧するような
イトウらしい風格が備わってくる。
そんな大人なイトウの大胆不敵かつ
威風堂々とした立ち振る舞いには、
北の大地に君臨する王者の雰囲気が漂う。
![ミノーを丸呑みする大胆さ](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-11-1024x683.jpg)
ミノーを丸呑みする大胆さ
瞬間的なスピードに乏しく
あまり機敏さを感じさせないが、
強靭なトルクと粘り強さが身上。
それでも、時に激しいジャンプを見せるなど、
機敏な一面を見せることも。
![スーパージャンプ!](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-05-1024x683.jpg)
スーパージャンプ!
一般的に警戒心は薄く、
学習能力もあまり高いとは思えない。
けれど、プレッシャーの高い特定流域には、
目の前に人間がいることを悟っていながらも
全く意に介さずに捕食活動を続け、
ルアーやフライには一切目もくれず、
リアルベイトのみをきっちりと見分ける
ツワモノもいたりする。
そんな奴を私は尊敬の念を込めて
「天才クン」と呼び、一目置いている。
つまるところ、運動能力も賢さも
とにかく、個体差が大きいのだ。
だから種としてのその素性は、
神秘のベールに包まれたままである。
私が自然体でイトウ釣りをしていて、
年間に30尾以上のイトウをキャッチすれば、
魚のサイズのアベレージは、
概ね50cm台に収束していく。
川の上流域から下流域まで偏りなく巡って、
標本数が増えれば増えるほど、
誤差は小さくなり、
だいたい53cmあたりに
着地することが多い。
![表情に幼さが残る中型イトウ](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-09-300x200.jpg)
表情に幼さが残る中型イトウ
ところで、私は、
2011年と2012年の2年間、
イトウを狙うときは、
大型魚だけにターゲットを絞り込んで
釣行に挑むというチャレンジをした
経験がある。
結果、2011年は28尾、
2012年は33尾と、例年と比較して、
キャッチしたイトウの数は大きく減ったが、
魚のサイズのアベレージは、
2年とも88cmと一気に大型化。
![大型イトウのヒットシーン](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-07-300x200.jpg)
大型イトウのヒットシーン
大型魚の内訳を見てみると、
2011年は100cm以上が9尾で、
最大サイズが113cm、
2012年は100cm以上が11尾で、
最大サイズが112cmというもの。
全体をグラフ化すると、
2年とも概ね92cmを頂点とする
正規分布に近い形状を示した。
なお、頂点が、4cmほど
アベレージとズレているのは、
2011年は40cm、
2012年は51cmという中・小型魚が
1尾ずつ混じったためだ。
![大型イトウのファイトは迫力満点!](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-01-1024x724.jpg)
大型イトウのファイトは迫力満点!
このように、2年続けて同様の傾向を
示したことは極めて重要な事実であり、
一定の再現性が確認できたという意味で
大きな収穫だと捉えている。
一般的に、メーターオーバーのイトウが
アングラーの間で
神聖化されている印象があるが、
確かに、その老獪なファイトは
90cm台の魚のそれとは、明らかに別物だ。
一方で、ここまでのデータを見れば、
100cmをちょっと超える程度の
個体はさほど珍しくないことがわかる。
![1mをちょっと超えたくらいのイトウ](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-04-300x200.jpg)
1mをちょっと超えたくらいのイトウ
ところが、110cmを超えるイトウとなると
事情は大きく異なり、
出逢いの機会は極端に減る。
運よく、上記の2年間に110cm超えを
1尾ずつキャッチすることに成功したが、
その後2016年にキャッチした
116cmを加えても、
今まで3尾しか出逢えていないのだから、
これは本当に希少な存在と言っても
言い過ぎではないのであろう。
![110cmを超えるイトウはさすがにレアだ](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-14-1024x683.jpg)
110cmを超えるイトウはさすがにレアだ
ちなみに、フィールドで泳ぐ姿を確認した
最大のイトウは、およそ125cmである。
私が過去にキャッチした100cmを超える
イトウ数尾から鱗を採取し、
研究者に耳石を顕微鏡で観察してもらって
おおよその年齢を推定してもらったことが
ある。
私が出逢った最大魚である
116cmは17歳、
サンプルの中でもっとも若かったのは
103cmの13歳であった。
116cmは、さすがに20歳以上かと
にわかに期待したが、さにあらず。
![長く生きる魚だからこそリリースの質を上げることが大切](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-15-1024x683.jpg)
長く生きる魚だからこそリリースの質を上げることが大切
イトウの生息する環境によって、
成長スピードは大きく異なるようで、
私が訪れるフィールドの中では、
特に天塩川のイトウが、
他の河川のイトウよりも
成長が早いという結果であった。
尻別川のイトウについては、釣りを
自粛しているため個人的なデータはないが、
学術的な研究結果からは、
他の河川のイトウより成長が早いことが
報告されている。
なお、年齢については、
私のチャレンジでは標本数が十分でなく、
再現性の担保が保証できないため、
おおよその傾向として
理解するにとどめている。
![101cmあるが醸し出す雰囲気はまだ若い](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-19-1024x768.jpg)
101cmあるが醸し出す雰囲気はまだ若い
<1月~3月>
結氷した湖沼や河川で、
あまり大きくは移動せずに過ごす。
河川では低水温には高い適応を見せ、
来たる産卵の季節に備えて
捕食活動を継続して行っている。
![天塩川のフロストフラワー](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/winter-300x200.jpg)
天塩川のフロストフラワー
<4月~5月上旬>
雪代による川の増水に乗じて、
一気に上流を目指す。
オスはド派手な赤色の婚姻色に身を染め、
時にメスの奪い合いで大けがをするほど
激しいバトルを繰り広げることも。
産卵に参加せず、川を遡上することなく
下流部で捕食活動を行う個体もいる。
![尻別川流域の春](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/spring-300x200.jpg)
尻別川流域の春
<5月中旬~6月>
産卵を終えた個体は、
一気に川の下流を目指す。
産卵の際に負った傷が痛々しい
個体も珍しくないが、
それでもベイトが豊富な流域まで下ると、
ベイトを大量に丸呑みしてしまうような
豪快な捕食活動を行う個体もいて、
一年でもっとも大胆な挙動を見せる。
![5月のオスは婚姻色が残っていることが多い](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-06-300x200.jpg)
5月のオスは婚姻色が残っていることが多い
<7月~9月中旬>
高水温に弱いイトウは、水温の上昇に伴って、
支流や本流でも湧水の影響などで
比較的低水温の流域に移動する個体が多い。
移動後も、高水温と渇水の影響で
活性は著しく低下するが、適度な雨が降って
水温の低下と水位の上昇が重なった一時、
狂ったような捕食活動を見せる瞬間がある。
![神出鬼没な夏イトウ](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-08-300x212.jpg)
神出鬼没な夏イトウ
<9月下旬~11月>
一年で、もっとも美しい魚体に出逢える季節。
適水温となるこの時期、
イトウは活発にベイトを追うようになる。
コンディションもMAXとなり、
ヒット後は暴力的なファイトを繰り広げる。
ただし、移動の速度が速く、
魚のポジションを絞り込むのに
苦労することが多い。
![秋の天塩川のイトウは強くて美しい](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-13-1024x683.jpg)
秋の天塩川のイトウは強くて美しい
<12月>
多くのフィールドが雪と氷で閉ざされる季節、
水温が0℃近くまで下がっても、
イトウはまだまだベイトを追う。
秋シーズンと比べると、
さすがに捕食スピードやパワーは
落ちるものの、魚体の美しさは衰えない。
深い雪に覆われた北の大地に、
エゾシカと協力して切り拓いた
一本のけもの道を通って、川辺に立つ。
そんな経験ができるのも、
厳しい季節になっても心折れることなく
フィールドに向かう強い意志を持った
アングラーだけの特権だ。
![結氷期のイトウ すぐにリリース](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/chirai-10-1024x683.jpg)
結氷期のイトウ すぐにリリース
☆ 猿払川
![猿払川(さるふつがわ)](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/06/sarufutsu-1024x683.jpg)
猿払川(さるふつがわ)
学術的な研究結果からも明らかなように、
他のフィールドを圧倒する魚影を誇る。
この川に立てば、
少なくともイトウが幻の魚でないことを
実感できるだろう。
その分、
圧倒的なフィッシングプレッシャーとの
戦いを強いられることになるが、
いかんせん魚のストック量が多いため、
決してあきらめないハートをもって
魚と対峙すれば、きっと出逢いの瞬間が
訪れるに違いない。
ハイシーズンには
かなり混雑するフィールドでもあるので、
譲り合いの精神を持って、
他のアングラーにも十分配慮しながら
気持ちよく釣りを楽しんでほしい。
安全面では、本流河川にエントリーした
経験のあるアングラーであれば、
さほど危惧するところはないが、
下流部の潮汐による
カレントの発生には十分注意が必要だ。
▼ 猿払イトウの会ホームページはこちらから
☆ 朱鞠内湖
![朱鞠内湖(しゅまりないこ)](https://troutparadise-hokkaido.com/wp-content/uploads/2018/05/shumari-01-1024x683.jpg)
朱鞠内湖(しゅまりないこ)
道内では珍しく、しっかりとした
管理が行われているフィールドで、
魚影の濃さは折り紙付き。
渡船などのサービスも充実していて、
直近の釣果情報なども得られるので、
遠征者がエントリーしやすい環境が
整っているフィールドと言えるだろう。
実は、いろいろと思うところがあって、
私はこのフィールドで
釣りをしたことがないのだが、
常連組から聞こえてくる話では、
サイズを選ばなければ猿払川以上に
釣りやすいとの声がほとんど。
自分の経験談ではなく申し訳ないのだが、
期待値の高いフィールドあることに
疑いはないであろう。
なお、朱鞠内湖は、
漁協による管理が行われていて、
釣行の際は入漁料が必要となる。
レギュレーションも
しっかりと定められているので、
事前に確認してから釣行に臨んでほしい。
▼ 朱鞠内湖漁業協同組合ホームページはこちらから