「feat.鱒」出版に込めた想い

「feat.鱒」は、
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ところで皆さんは、
北海道トラウト
フィッシングガイドブック
「feat.鱒」の表紙に
使われているこの写真、

魚種がなんだかわかりますか?

トラウトフィッシングに
精通されている方なら
すぐにピンとくることでしょう。

そう、この魚は
幻の魚とも称される「イトウ」。

道北地方を流れる
湿原河川でキャッチした
イトウのまなざしを
アップで撮影したものなんですよ。

でもなぜ、
「ビッグトラウト、ドーン!」
じゃなくて、
イトウのまなざしなの?

きっと、
そんな疑問を
抱かれたアングラーの方も
少なくないのではないでしょうか?

だって、
大概のトラウト系の本や雑誌、
ムックなどでは、

「ビッグトラウト、ドーン!」
が普通ですものね。

もちろんそこには、
著者なりのさまざまな思いがあって
この最終形に
落ち着いたわけですけれど、
「そのなぜ?」について、
少しだけここで
お話してみたいと思います。

これは、
本を出版しようと思った動機とも
密接にリンクする話なのですが、
もし、既存のトラウト系雑誌などと
一線を画すものでないとすれば、
わざわざ自分が
本を世に送り出す意味はない。

本を書こうかどうしようかと
ふと考え始めた時点から、
そんなふうに
私は考えていたのですよね。

ならば、
本の中身はもちろんのこと、
表紙についても、よくある
「ビッグトラウト、ドーン!」じゃ
「feat.鱒」という
一冊の本に込めたつもりの
トラウトフィッシングの本質が
読者の皆さんに伝わることはない。

そんな想いが、
私の心の奥底にはありました。

だからといって、
「ビッグトラウト、ドーン!」を
全否定したりはしませんよ。

現に私だって、
「ビッグトラウト、ドーン!」を見て、
「この魚、スゲーな!」って
純粋に思うこともありますし、、、

また大手出版社さんが
商業出版する本だと、
一定の部数を売らないと
事業として成立しないということも
もちろん理解はできます。

だとすれば、
表紙のデザインのところで
あえてリスクを冒す必要がない、
という判断もまた、
当然、わからなくはありませんよね。

ただ誤解を恐れずに言うならば、
あの「ビッグトラウト、ドーン!」って、
いわゆる「リア充」の一面だけを
都合よく切り取っているに過ぎない。

これが、
私の率直な
思いであったりもしました。

決してそれが悪いって
意味じゃないんですけど、
大きな魚を釣ることだけが
トラウトフィッシングの
本質ではありませんからね。

だから、
「feat.鱒」の表紙に
「ビッグトラウト、ドーン!」は、
やっぱり違うよな、と。

ちなみに、
「見返し」と呼ばれるページも、
「ビッグトラウト、ドーン!」
じゃないんですよ。

印刷物よりも
かなり画質は見劣りますが、
実際に「見返し」の
デザインをお見せすると、
こんな感じになっています。

そうそう、
もちろんこのページも
著者として読者の皆さんに
感じてもらいたいことがあって、
こうしたデザインに
なっているのは確かです。

でも、
説明的になり過ぎることを
あえて避けたはずなのに、
ここでウダウダと
説明しすぎてしまっては
それこそ本末転倒に
なってしまいますから、
「見返し」のデザインの話は
ここまでとしておくことにしましょう。

閑話休題、
ここからいよいよ
"表紙のデザインが
なんでイトウのまなざしなの?"
という話になります。

ひとつ目の理由は
とってもベタなのですが、
「イトウは北海道に棲息する
ネイティブトラウトの代表格であり、
一般の人も含めて
その存在が広く認知されているから」
というのは当然ありました。

「北海道の鱒」を
主役に据えた本である以上、
表紙のデザイン選択を誤って
読者をミスリードするのはイヤ。

そんな思いも
あったかもしれません。

二つ目は、
feat.鱒という本には
「魚目線」というキーワードが
随所に埋め込まれています。

単語として、
「魚目線」という言葉を使った回数は
それほど多くないのですけれど、
本全体の構造が
魚目線を強く意識したものに
なっているのですよ。

私が普段から
疑問に思っていたのは、
学術書というカテゴリーで見れば
魚目線で描かれた本が多数派なのに、
トラウトフィッシング本になった瞬間、
なぜアングラー目線に極端に偏った
より主観的なものに
なってしまうんだろうということ。

もちろん、
すべてがすべてとは言いませんけど、
その点がどうしても
不思議でならなかったんです。

これは
トラウトフィッシングの世界に
限ったことではなく、
一般社会にも
当てはまることですが、
もし相手を動かしたければ、
まずは相手の立場になって
いろいろと思考を巡らせてみる。

これって、
あえて言葉にするまでもなく
多くの人が実践している
ごくごく当たり前のことだと
私は思っているのですよね。

だから釣りをするときにも、
魚目線に寄り添うことが先にあって、
そこにエントリーするポイントや
道具をアジャストさせていく。

自分にとっては
これが普通ですし、
もっともシンプルな
アプローチだと考えていました。

でも、
私が直面した現実は違った……。

だから、
自分で本を出す時くらいは、
なによりも「魚目線」を
大事にしなきゃダメだよな、って。

それからもうひとつ、
著者の理念とか価値観を
過度に読者に押し付けるのではなく、
読者の皆さんにいろいろと
想像力を働かせていただけるような
「余白」のある表紙にしたい。
そんな想いもありました。

例えば、、、ですが、
よく表紙の写真を見ると
このイトウのまなざしには、
雲ひとつない青空が
はっきりと映り込んでいますよね。

まずはそこに
ちょっとした気づきがあるわけです。

そして今度は
その気づきをきっかけとして、
さらにあれこれと想像が膨らんでいく。
そんな感じでしょうか。

さて、
もしこのデザインが
「ビッグトラウト、ドーン!」
だったとしたらどうでしょう。

釣った人間と
釣られた魚との間に横たわる
主従関係が強調されるばかりで、
それ以上、読者として
想像力を働かせる余地が
ほとんど残されていないような気が……

魚の解説をするページには
こういう写真が
必要な場面もあると思うのですけれど、
表紙にコレを使っちゃうと、
「余白」も何も
あったもんじゃないですよね。

あくまでも私見ですけれど、
つまるところ、
「どうだ!スゴイだろ!」にしか
ならないんじゃないか、と思うんです。

そうそう、
時には釣られた瞬間の
魚の気持ちになってみて、
「釣り」という遊びの本質について
あれこれと想いを
巡らせてみる時間も大事。
だからやっぱり、
「余白」のあるデザインがいいなって。

そして
最終的に行きついたのが、
「イトウのまなざし」だったというわけ。

表紙のデザインを
最終決定するにあたっては、
実のところそんな過程を
踏んでいるのですよね。

今度は、
裏表紙のデザインに
話を移していこうと思います。

皆さんもうお気づきだと思いますが、
この裏表紙には、
北海道に棲息する
ネイティブ・ワイルドトラウトの
一部分を切り取った写真を
組み合わせて使用しています。

魚種は、
ミヤベイワナ、オショロコマ、
ニジマスの計3種なんですけど、
こうやって並べてみると、
もはやひとつの芸術みたいだな、って。
著者の私が言うのも
おこがましいんですけどね(笑)。

ちなみにこの裏表紙、
「鱒の写真をコラージュさせる方向で、
デザインを検討してもらえませんか?」と
私がデザイナーさんに
アイディアをお伝えしたのがきっかけで、
最終的にこのような
仕上がりになったのですよ。

でも正直、
これほどまでに
洗練されたものになるとは
思っていなかった……。

感性豊かで
センスの塊みたいなデザイナーさんは、
やっぱりひと味もふた味も違うと
思わず感嘆してしまいましたね。

テンテツキの金子さんは、
やっぱりスゴイ人だったな。

ところで、
本づくりにおいて
デザインの美しさが
大切なのはもちろんなのですが、
それとは別に、
裏表紙のデザインを通じて
著者としてのメッセージを
読者の皆さんにお伝えしたかった。

デザインの最終形が
このようなビジュアルとなった
理由の一つには、
そんな側面があったりもします。

そうそう、
コラージュ写真というのは、
「ビッグトラウト、ドーン!」とは違い、
ある一瞬を切り取っただけで
完成するものではありません。

だからこそ、
成功も失敗も全部ひっくるめて
その人その人がこれまで歩んできた
アングラー人生の全景が
はっきりと浮かび上がってくる。
そう思うのですよね。

ちなみに
この裏表紙を例にしてみると、、、

ブルーバックの
ミヤベイワナに辿り着くまでの
長く険しい道のりを
嫌でも思い出しますし、
独特のビジュアルをした
オショロコマと出逢うために
重ね続けた苦労が
フラッシュバックしたりもします。

つまり、
ビッグトラウトをキャッチした
「あの瞬間」のことだけでなく、
そこに至るまでの過程も含め
過去に直面したさまざまなシーンが、
ビックリするほど
鮮明に蘇ってくるんですよ。

言い換えれば、
点ではなく線や面として、
自らのアングラー人生を
俯瞰的に振り返ることができる。
そういうことなんです。

だから読者の皆さんには、
この裏表紙の写真を、
自身がこれまでに出逢った
魚の画に置き換えて、
いろいろと想像を膨らませてほしい。
そんなふうにも思うのですよね。

だって、
これまでに経験した
どんなビッグトラウトとの
出逢いの瞬間も、
ひとりの人間として
これまで一歩一歩刻んできた
アングラー人生そのものの尊さには、
到底かないませんから。

そんなこんな、
本のデザインに込められた著者の想いを
ちょっと深掘りして、
「feat.鱒」の出版コンセプトについて
少しだけ言葉にして
説明させていただきました。

ただし
これ以上お話してしまうと、
大事な「余白」がなくなってしまうので、
今回はこれくらいに
しておこうと思います。

皆さんには、
せっかくですから
おもいおもいの自由なスタンスで
「feat.鱒」を眺めて
いただけらうれしいですね。

それでは、
読者の皆さんのアングラー人生が、
これから先、今まで以上に
素敵なものとなりますよう
心からお祈り申し上げます。

最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました!

feat.鱒 著者 喜島 進

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