天塩川で見つけた未来への扉

前回からつづく)

私が休日に幌延へと向かった理由は
もちろん観光だけが目的ではない。

空き時間は間違いなくある。

だから、しれーっとだが、
タックルを積むことは忘れない。

そんなこんな、
少しばかりの時間を使って、
天塩川の本流を歩いてみた。

中川町あたりの中流域は、
相変わらずの減水状態。

水が出た形跡もなく、
見た目には、お世辞にも
良いコンディションとは言えない。

広く露出した河原を歩きながら、
いくつかのポイントを
軽く流してみたけれど、
イトウからの反応が訪れることは
一度たりともなかった。

夕刻までには、まだまだ時間はあったが、
少し早めに、今晩の宿、
「てしお温泉 夕映」(外部リンク)に
チェックインを済ますことにした。

最近リニューアルして
だいぶ部屋がモダンになったこの宿、
宿代がかつての倍くらいになったので、
出費を考えると結構痛い。

それでも、強烈なアンモニア臭を放つ
琥珀色をした独特の泉質は、
ほかでは味わえない唯一無二のモノ。

ここは公共の温泉だから、
この時代、いろんな処理が
なされているのは仕方ないとして、
その部分を割り引いても
十分におつりがくるくらい
魅力的な泉質を誇っていると思う。

コスパを考えれば、
以前が安すぎただけとも
言えなくはないかもしれない。

チェックインを済ませ、
もう一度、車に乗り込んで、
宿からもほど近い
天塩川の下流域へと向かう。

だだっぴろい景色が広がるこの流域を
隅々まで探り倒すことは
およそ容易なことではない。

実際、イトウが付きやすいポイントは
何カ所か掴んではいたものの、
まだまだ開拓途上。

そんなこともあって、この日は、
いままでエントリーしたことのない場所を
リサーチの意味も込めて、
のんびりと歩いてみることにした。

距離にして、およそ7~800m程度は
河原を歩いただろうか。

景色が開けているから、
あまり距離感を感じないのだが、
「あそこを叩いてみよう」と
決めたポイントまで、
実際に歩いてみると
思いのほか距離があって少し驚く。

ドッカーンと豪快にイトウがヒットする
イメージを頭に浮かべながら、
ハイピッチでポイントを叩いていくものの
イトウからの反応はない。

そう言えば、
この日は土曜日だというのに、
全くと言ってほど、下流域で
アングラーの姿を目にすることがなかった。

確かに6月の下旬ということを考えれば、
常識的に下流域にいる
魚の数はきっと多くはないはず。

そんな背景もあって、
アングラーを見かけないのかもしれない。

ゴン!

突然の衝撃が
ロッドティップに伝わったのは、
だだっぴろい景色の中では、
少しばかり周囲とは異なる
シチュエーションのスポットに
差し掛かった時のことであった。

濁りのない流れのなかで、
イトウが激しく身を翻す。

サイズ的には全然なのだが、
そのパワフルなファイトに、
こちらもヘラヘラしている余裕はない。

貴重な1尾だ。

ミスってバラすことがないように
慎重なファイトに終始。

ようやくキャッチしたそのイトウは
シルバーメタリックに
美しくその身を輝かせていた。

サイズ的には、
きちんとは計測しなかったけれど
70cm台後半がいいところ。

天塩川下流域のイトウとしては、
せいぜい中学生レベルだろうか。

それでも、コンディションに関しては、
まるで非の打ち所がない。

特に、傷ひとつない体側の輝きには
本当に魅了される。

数あるイトウフィールドの中でも
この流域の魚が
こと美しさについては、
群を抜いていると言ってもいいだろう。

時間をかけて体力を回復させてから、
イトウをゆっくりとリリース。

元気よく、重たい流れの中に帰っていった。

何より、この1尾には大きな価値がある。

それは、今まで釣ったことのないポイントで
ヒットした1尾だから。

もしかすると、未来に訪れるかもしれない
とんでもない魚への
布石になる可能性だってありうる。

この瞬間、未来への扉が開いたのは、
きっと間違いないだろう。

まさに、充実の時間。

サイズだけでは語れない大きな収穫を胸に
意気揚々と宿へと戻り、
のんびりと温泉に浸かることにした。

スポンサーリンク
レクタングル広告(大)
レクタングル広告(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする