最近、ネット上では、
4月、5月に支笏湖で
サクラマスを釣ることに関して、
クロだ、シロだと
情報が錯そうしているようです。
この状況は、
アングラーの間でも混乱が起きかねず、
非常によくない状況であると
憂慮してしまいますね。
そこで、何が正しい理解なのか、
できるだけ、
客観的に情報を整理して、
発信しておこうと思います。
結論から先に書くと、
4月、5月に
支笏湖でサクラマスを釣ることは
限りなくクロに近いグレーです。
その根拠は、こうです。
そもそも、
北海道の内水面での
遊漁に係るルールを定めているのは、
「北海道内水面漁業調整規則」。
この規則を所管しているのは北海道であり、
担当部署は、
水産林務部水産局漁業管理課
サケマス・遊漁内水面グループになります。
支笏湖でサクラマスを釣る際に
留意する必要がある
規則の条文は、第45条と第47条。
おそらくここまでは、
クロ派もシロ派も
異を唱える方はいないでしょう。
そこで、北海道内水面漁業調整規則
第45条と第47条の抜粋を
ここに記載しておこうと思います。
同規則45条では、
「次の表の左欄に掲げる水産動物は、
それぞれ同表の右欄に掲げる期間中、
これを採捕してはならない。」とされ、
表中においては、左欄に「やまべ」、
右欄に「石狩振興局の所管区域内の河川
(第47条第1項及び第2項に規定する河川を除く。)
4月1日から5月31日まで」とあり、
同規則47条では、
「『支笏湖』では、『ひめます』を対象として、
指定の区域内において、
指定期間内の採捕が禁止」とあります。
先日、この条文の解釈について、
北海道水産林務部水産局漁業管理課に
メールで問い合わせたところ、
後日、電話で回答があり、
その内容を要約すると、
4月、5月に
支笏湖でサクラマスを釣るのはクロ
というものでした。
その理屈を端的に書くと、
こんな感じです。
規則第47条は、
支笏湖の「ひめます漁」
に関する規定であって
他の魚種に関する
漁を規定したものではない。
支笏湖の湖沼型サクラマスは
「やまべ」と同魚種であると
認められることから、
支笏湖で
湖沼型サクラマスを釣る場合も
規則第45条の
適用を受けることになる。
よって、石狩振興局の
所管区域内にある支笏湖では、
4月、5月に湖沼型サクラマスを
採捕することは禁止されている
というのが正しい理解である。
極めて従順に言えば、
監督官庁がクロと言っているのだから、
まあ、クロなんでしょうかね
といったところでしょうか。
ただ、それじゃあ
あまりに一方的な解釈で、
やや思考停止の感もあり・・・
そこで、シロ派の理屈についても
ちゃんと見ておく必要がありますね。
根拠に基づかない
感情的な理由をスルーするとすれば、
シロ派の理屈は、
だいたいこんなふうに集約されそうです。
規則第45条の表中には、
「第47条第1項及び第2項に規定する河川を除く」
という文言があり、
その第47条に
「支笏湖」が規定されているのだから、
「支笏湖」は、
規則第45条の適応外だというもの。
文理に忠実に
規則の条文を読み返してみると、
このシロ派の理屈にも
相応の理由があるようにも見えます。
っていうか、
シロ派の解釈の方が
むしろ自然な
文理解釈なのかもしれません。
ここで、一旦、事実関係を
整理してみることにしましょう。
まず、規則の条文解釈については、
クロ派、シロ派、双方の理屈とも
誤りではないと考えられます。
そうすると、
そもそもの規則の文言が
おかしいんじゃないのか
ということになるわけで、
私もそう思うのですが、
その点は、現状分析ではなく、
あるべき姿に関する議論なので、
一旦、措くとして・・・
少なくとも
監督官庁の北海道が
クロと言っている以上、
まあシロではないですよね。
一方、シロ派の理屈にも
一定の根拠はありますから、
完全にクロと断定するのも、
ちょっと違うかなと・・・。
そこで、
今度は、違う角度から
北海道内水面漁業調整規則を
見てみようと思います。
北海道内での「やまべ」釣りに
禁止期間を設けているのは、
ザックリ言うと、
降海型のサクラマス資源の
枯渇や減少を防止するため。
その視点で言えば、
どうせ降海できない
支笏湖のサクラマスに
禁漁期間を設定したところで
何の意味もない。
そんな解釈の成り立つでしょうし、
現に、私もそう思います。
規則の理念と
実際の規制内容に
ある種の矛盾があるのは事実で、
これはこれで、
問題だとは言えそうですね。
ただ、支笏湖は
第47条で例外扱いされているから、
第45条の適応外だというのなら、
他の一部の湖やリザーバーだって、
適応外にしてもよさそうなもの。
でも、実際は、
そういうルールになっていません。
そう考えると、支笏湖だけを
あえて第45条の適用除外にする
積極的な理由はないことが
十分にうかがえますよね。
そう、条文の文言が
言葉足らずなのであって、
理念がブレているわけではない。
この側面から考えれば、
道の説明には一定の説得力があって、
シロ派の文言解釈が
独自の解釈であると言われても
仕方がないのかなと思えるわけです。
規則の文言があいまいである以上、
シロ派の理屈にも
それなりの理由は認められて、
4月、5月に支笏湖で
サクラマスを狙って釣ったとしても、
逮捕、起訴される可能性は
低いのかもしれません。
そう、はっきり
クロとまでは言えないのですね。
ただ、そんな重箱の隅をつついてまで、
4月、5月に
支笏湖でサクラマスを狙うことを
正当化する理由があるのでしょうか。
もちろん、ルールの妥当性について
見て見ぬふりをするのはダメだけれど、
現状のルールがザルだからと言って、
そのすき間を突くことが正義かと言えば、
決してそんなことはないでしょう。
そんな主張は、一般の人から見れば、
単なる釣り人のエゴにしか聞こえず、
未来永劫、
市民権を得ることはありません。
まったく同じとは言いませんが
「外出禁止」じゃなくて
「外出自粛」なんだから、
別に外出したって、
いいじゃないかという理屈と
大して変わらないなと。
確かに、規則の理念と
降海できない「やまべ」の釣りを
第45条で縛ることの矛盾は
速やかに解消されるべきと考えられますし、
見る人によって、
異なる解釈が可能な
規則の文言が長期間放置されていることも
大きな問題だと捉えています。
また、私のメールでの質問に
北海道の担当者が
メールではなく
電話で回答してきたことからも
「言質」を取られたくないという
組織としての狙いが透けて見えるわけで、
行政の対応としては、
決してほめられたものではないでしょう。
けれども、
いい方向に考えれば、
道の担当者も
必ずしも現状を良しとは考えておらず、
一定の問題意識はあるということ。
口頭ではありますが、
近く行われる漁業法の改正に併せて、
北海道内水面漁業調整規則の改正も
検討する予定である旨の
発言もありましたし・・・。
長年、規則の問題点を放置してきた職員と、
今、規則を担当している職員とでは、
異なる考え方を持っていることだって
考えられるわけです。
その点には、
ちょっと期待したいなと思います。
この4月、5月の
支笏湖でのサクラマス釣りに関する議論は、
行政のあるべき姿を
問い直す場面であるとともに、
私たちアングラーも、遊漁と
いかに自律的に向き合っていくべきかを
問われている。
私は、そう解釈しています。
だから、4月、5月は
支笏湖でサクラマスを狙っては釣らない。
もし、不意にヒットしても、
魚には指一本触れないで、
リリースする。
自らの意志で
そういった対応を行うことにより、
ひとりのアングラーとしての矜持を
示せればいいなと思います。
現状は、行政とアングラーの間に
信頼関係が醸成されているとは
お世辞にも言えないわけですが、
その原因のすべてが
行政側にあるわけじゃない。
私たちアングラーの側も
言うべきことはしっかりと言いつつも、
相手から信頼されるような行動を
積極的にとる必要が
あるんじゃないでしょうか。
さてさて、ヒリヒリするこの問題、
都合の良い解釈をするのではなくて、
問題の本質にも
しっかりと想いを巡らせながら、
すべてのアングラーが
真正面から向き合っていけるような
そんな空気が生まれるといいなと
切に願っていようと思います。