釣り人的PCR解説

先日、釣りバカを地で行く
旧知の友人から
突然の連絡がありました。

彼曰く・・・

知り合いが
新型コロナウイルスの
PCR検査を受けることになった。

PCR、PCRって、
毎日、言葉だけは聞いているけれど、
PCRが何者なのか、
ネットで調べても
専門的すぎて、よくわからない。

しかも、PCRは、
やれ信頼性が低いとか
いやいや、
もっとPCR検査をやるべきだとか
評論家は、みんな
好き勝手なことを言ってるけど、
本当のところがわからなくて
困っているんだ。

たしか、
オマエの大学時代の専門は
分子生物学だったよな。

オレにもわかるように
PCRのことを教えてくれよ!

・・・と。

彼から、釣り以外の用件で
僕に連絡が来るなんてことは、
ここ20年来なかったこと。

そりゃ分子生物学の単位は
はるか昔に取ったかもしれないけど
専門なんかじゃないし、
いったい、いつの話をしてるんだよと
しばし狼狽するわたくし・・・。

でも、さすがに
のっぴきならない様子の彼を
完全スルーするわけにもいかず、
湖の釣りを引き合いに出しながら
恐る恐る僕なりに
PCRを解説してみたわけです。

すると・・・

いつもは、とっても
ものわかりがよろしくない彼が、
僕の話に素直に耳を傾けている。

ほー、なるほど。

最近、PCRって言葉を
聞かない日はなくなったけれど、
PCRが何なのかがよくわからず
なんとなく不安に思っている人が
結構いるんじゃないかと
ふと気づいたわけです。

そこで、このブログでも、
PCRについて、
簡単な釣り人的解説を
掲載してみることにしました。

解説をはじめる前に、
ちょっとした前置きを。

ここに掲載する資料は
つい先日、
僕が仕事用につくったパワポのデータを
テキトーに
カスタマイズして作成したものです。

なので、とてもじゃないけど
精巧なつくりの資料とは言えないので、
その点はどうかご容赦を!

もうひとつ、
ウイルス検査には、
PCRのような
遺伝子レベルの検査のほかに、
タンパク質レベルの検査や
ウイルスそのものを
調べる検査もあります。

もし、科学的にPCRを説明するなら、
釣り人的な部分も
遺伝子レベルで説明しないと
いけなくなっちゃうのだけれど、
それじゃあ、
このブログに掲載する意味がない。

ということで、
大胆にも、専門家的見地を
半ば無視するような建付けの
ゆるゆる資料となっていますので、
その点も、ご容赦ください。

では、ここからは
釣り人的視座から
PCRをゆる~く
解説していきたいと思います。

なお、便宜的に
新型コロナウイルスCOVID-19を
ブラウントラウトに例えて
説明していくことになります。

ブラウンさん、
ツライ役回りを与えてゴメンナサイ。

では、まず図1をご覧ください。

図1_COVID-19 陽性モデル

実際のPCR検査では、
Aさんの唾液(正確には咽頭拭い液)を
サンプリングして
PCRキットに注入し、
その中にCOVID-19があるかどうかを
調べることになります。

それを釣り人的に説明すると、
Aさんの養魚場に水路を繋ぎ、
湖に入ってきた
ブラウントラウトだけを狙って
ルアーをキャストする
イメージになります。

もし、Aさんの養魚場に
たくさんのブラウントラウトが
泳いでいたとしたら、
一定数の魚は
水路を伝って湖に泳ぎ出ていくはずです。

そこに、
ブラウントラウトだけが反応する
ルアーを何回もキャストしていれば、
いずれヒットする可能性は
高いと言えるでしょう。

PCR検査も同様で
検査キットの中に
COVID-19に特異的な遺伝子にだけ
反応する試薬を投入するので、
もし、キット中に
COVID-19が存在すれば
高い確率で
反応を起こす(ヒットする)ことに
なるわけです。

ところが、
通常のPCR検査の感度では、
1尾や2尾のブラウントラウトを
ヒットさせただけでは、
その魚が、本当に
ブラウントラウトであったかどうかを
判定できないわけです。

そこで、連鎖的な反応を
人工的に起こして
一気にブラウントラウトを増殖させ
検出可能なレベルの量まで増やす。

この工程がまさに「PCR」
Polymerase
Chain
Reaction
であり、日本語に置き換えると、
「ポリメラーゼ連鎖反応」
ということになります。

図1に示したCASE1では、
実際にブラウントラウトがキャッチされ、
検知可能なレベルにまで
増殖することに成功したので、
結果は「PCR陽性」、
すなわち「COVID-19陽性」
ということになるわけですね。

続いて、図2では
COVID-19陰性モデルを示してみます。

図2_COVID-19_陰性モデル

図の見方はすべて同じなので、
ここからは説明を簡略化しますが
そこは、ご容赦ください。

CASE2では、
そもそもBさんの養魚場に
ブラウントラウトがいないので、
養魚場と湖を
水路で繋いでみたところで
湖でブラウントラウトが
釣れるはずはありません。

釣果がゼロなのだから、
いくら連鎖反応を起こそうとしても
ゼロはやっぱりゼロ。

だから、結果は「PCR陰性」、
すなわち「COVID-19陰性」
ということになるわけですね。

どうでしょう、
ここまでは
さほど難しい話ではないですよね。

ではでは、ここからが
PCRの精度が低いと言われる原因と
リンクする内容になりますので、
もうしばらく
お付き合いいただければと思います。

それでは、
ここで図3-1をご覧ください。

図3-1_COVID-19 偽陰性モデル1

これが、「COVID-19偽陰性」
と呼ばれるケースの
ひとつのモデルになります。

「偽陰性」とは、
読んで字のごとく
「偽の陰性」という意味で、
本当はウイルスが体内に存在するのに
検査結果が
「陰性」と出てしまうことを言います。

図の左側を
見ていただくとわかるのですが
Cさんの養魚場には
ブラウントラウトが泳いでいるものの、
その数が少ない。

そのため、養魚場と湖を
水路でつないでも
ブラウントラウトが
湖に泳ぎ出ていかないことも
当然、起こりえますよね。

そうすると、
湖でブラウントラウトが
釣れることはないわけだから、
CASE2の時と同様、
結果は「PCR陰性」、
すなわち「COVID-19陰性」
ということになるわけです。

要は、Cさんの唾液には
COVID-19が存在するのだけれど
その数が少なかったり、
他のウイルス量が多かったりして
サンプリング時に
うまく採取されなかったため
結果的に「陰性」と
判断されてしまったということ。

これは、PCRには限らず
一般的な検査でも
往々にして起こる現象なのですが、
COVID-19のPCR検査では、
より顕著な課題に
なっているのかもしれませんね。

図3-2_COVID-19 偽陰性モデル2

図3-2は、
PCR検査で偽陰性が出る
もうひとつのパターンを示したものです。

先ほどのCASE3-1は、
そもそも、ブラウントラウトが
養魚場から湖へと
泳ぎ出さないパターンでしたが、
このCASE3-2では、
数は少ないものの
ブラウントラウトが
ちゃんと湖に泳ぎだしています。

ただ、あまりに魚影が薄いので
がんばってみたけれど、
結果的に、ヒットには
持ち込めなかったというわけですね。

なので、
結果は「PCR陰性」、
すなわち「COVID-19陰性」。

要は、Cさんの唾液には
COVID-19が存在するのだけれど
その数が少なく、
うまくサンプリングまではできたものの、
検査試薬と出逢うまでには至らず、
結果的に「陰性」と
判断されてしまったということになります。

一般的に言って「偽陰性」は
検査サンプルの中にある
目的のウイルス量が
少ない時に起こりがちな現象と
捉えてもらうと
わかりやすいと思います。

図3-3_COVID-19 ギリギリ陽性モデル

さて、上記の図3-3で示した
CASE3-3モデルは、
先ほどのCASE3-2モデルと
状況は同じなのだけれども、
たまたま運がよかったのか、
それとも釣り人の腕がよかったのか、
見事、ブラウントラウトが
キャッチされたことを表すものになります。

このモデルでは、
ベースとなる魚を
無事キャッチすることができたので、
連鎖反応が起こり、
Cさんは、COVID-19陽性であるという
正しい結果を導き出しました。

ただ、これが
紙一重の結果であるということは
皆さんにも
十分ご理解いただけるかなと思います。

そう、もう一度検査をやったら、
「偽陰性」になる可能性が
それなりにあるんじゃないかと。

このような現象が
しばしば起こるのも
PCR検査の
ひとつの特徴だったりするんですね。

2回の検査で
COVID-19陰性となって
ようやく退院できた患者さんが
その後、再び、
陽性になったというニュースを
たびたび耳にしますが、
それは、おそらく検査結果が
「偽陰性」と「陽性」を
行ったり来たりしていると
考えるのが自然かなと思うわけです。

どうでしょう、
ここまでの解説で、
今までよりもPCRのことが
わかってきたような気がしますか?

そうであったら、
とってもうれしいですね。

最後にもうひとつ、
「偽陽性」についても
触れておくことにしましょう。

図4_COVID-19 偽陽性モデル

図4で示すCASE4は、
「COVID-19偽陽性」
と呼ばれるケースのモデルになります。

「偽陽性」とは、
文字どおり「偽陰性」の逆で
「偽の陽性」という意味で、
本当はウイルスが体内に存在しないのに
検査結果が
「陽性」と出てしまうことを言います。

上記のCASE4では、
Dさんの養魚場に
ブラウントラウトはいませんので、
養魚場と湖を水路でつないだところで、
本来的に湖でブラウントラウトが
釣れるはずはありません。

ところが、
検査担当者が誤って
Aさんの養魚場と
Dさん用の湖を繋いでしまった。

すると、Aさんの養魚場には
もともと多くのブラウントラウトが
泳いでいましたから、
その一部が湖に泳ぎ出たところ
待ってましたとばかりに
釣り人にルアーで仕留められて
しまったというわけです。

ブラウントラウトが
キャッチされてしまった以上、
正常に連鎖反応が起こり、
判定は、「PCR陽性」、
すなわち「COVID-19陽性」。

こうして、
本当は新型コロナウイルスに
感染していないDさんが、
感染者とされてしまったわけですね。

このように、
PCR検査で発生する「偽陽性」は、
その大部分が
人為的なミスによって
発生するものと考えていいでしょう。

実際に、愛知県では同種の事案が発生し、
対応に追われる場面も
メディアで取り上げられていましたね。

ただ、人が検査を行う以上は、
こうしたミスは
現実に起こりうるもの。

私も学生実験の際、
「偽陽性」を出した黒歴史を持つので、
検査に100%の
正確性を担保できないことは
よくわかります。

メディアは批判的にしか報じませんが、
PCR検査というのは
もともとそういう性格のものであると
理解してもらう方がいいのかなと
個人的には思います。

すみません、
「簡単に」とか言っておきながら、
だいぶ長くなってしまいました。

いつも釣りのネタばっかりじゃ
社会貢献にもなんにもなっていないので、
今日は、ゆるゆるながらも
ちゃんと記事を書いたつもりです。

ホント、少しでも
皆さんの参考になったらうれしいな。

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