情報発信の難しさ

先日、このブログの中で
支笏湖のサクラマス釣りルール
についての記事を書きました。

記事を掲載してしばらくすると
にわかにアクセスが急増。

ちょっとビックリはしたけれど、
支笏湖を愛する
多くのアングラーの方々が
このヒリヒリする問題と
正面から向き合おうとしていることが
ネット越しに伝わってきて、
なんとも心強く思ったものです。

反面、アクセス数が
増加するということは、
僕が書き込む一文字一文字の重さも
だんだんと増していくということ。

それを考えると、
とても身が引き締まる
思いになりましたね。

そんな一件もあったので、
今回は、支笏湖の
サクラマス釣りルールの件を意識しつつ、
情報発信の難しさについて、
少し書き綴っておこうと思います。

まず、はじめに、
「ブログは何のために書くのか」
というところから。

いろいろな方の
ブログを拝見していて思うのですが、
ザックリ言って、
ブログは、次の3つのパターンに
分類できるように見えます。

① 日記や備忘録的なもの
② 自分の思いを誰かに伝える場的なもの
③ 1と2の両方を目的としたもの

ちなみに、このブログ
「北の大地に鱒を追う」は
③のパターンに属すると思っています。

上記のうち、①については、
ある意味、自己完結的なものだから、
公序良俗に反しない限り、
記事を書くにあたって、
過剰に神経を遣う必要までは
ないのかもしれません。

実際、僕自身も、
釣行記を書くだけなら、
さほど神経は遣いませんし、
自分では気づかぬところに
多少の表現の間違いや
誤字・脱字があったとしても
それほど大きな問題になるとまでは
思っていないのですね。

ところが、②の要素については、
かなり事情が違ってきます。

単に、一般的な時事ネタについて
私見を述べるにとどまるのであれば、
さほど大きな問題が
生じることはないのかもしれない。

けれども、
法解釈にかかわる問題に対しては、
発信する側が、かなり慎重に
言葉を選ぶ必要があるのではないかと
思うわけです。

後に詳述しますが、
「支笏湖のサクラマス釣りルール」
みたいな記事を書くときは、
特に神経を擦り減らします。

さて、ここからは、
発信する側が
どうして言葉を慎重に選ぶべきなのか、
具体的な例を挙げながら、
考えてみたいと思います。

釣りに関連して
よく耳にするトラブルが、
「駐車」に関すること。

なので、まずは、
釣り場での駐車に関する話題を
取り上げてみることにしましょう。

釣り人Aさんの書いたブログに、
「○○橋横の空き地に駐車できますよ」
という記述があるのを見つけたBさん。

後日、Bさんが
○○橋横の空き地に車を停めて
釣りをしていたところ、
実は、その場所は私有地だったため、
怒った地主が警察に通報し、
不法侵入の容疑で
事情聴取をされてしまった。

・・・みたいなヤツです。

北海道ではあまり聞かないですが、
都市部の河川などでは、
この類の情報に接する機会が
少なくないのではないでしょうか。

ここでは、情報を発信した
Aさんの行為に
フォーカスしてみたいと思います。

おそらくAさんは、
○○橋横の空き地が
私有地であるとは理解しておらず
悪意などまったくないまま、
普段からその場所を
駐車スペースとして利用していた。

そして、自身は、
たまたまトラブルに
巻き込まれていなかっただけであることが
なんとなく推察されますね。

Aさんは、
こうした独自の経験に基づいて
ブログを見たアングラーが
釣行時に駐車場所に困らないようにと
おそらく善意で
情報発信しようとしたのでしょう。

ところが、
良かれと思ってやった情報発信が、
結果的にBさんを
傷つけることになってしまった。

では、どうして、
こんなことにしまったのか。

それは、Aさんが
現場の状況を俯瞰することなく、
自分だけの感覚で
安易に記事を書いたことに
問題があったからではないでしょうか。

次は、もっと
ヒリヒリする事例です。

実際、ランドロックの
サクラマス関連でも、
過去にこんな事件が起きていますので、
紹介しておこうと思います。

その事件が起こったのは、
東京都の水がめであり、
多摩川の上流に位置する「奥多摩湖」。

奥多摩湖に流入する河川には
多くのヤマメが棲息していて、
その一部が、湖に降って
大型化することがしばしばなんですね。

これに目をつけた某釣り雑誌が、
冬に奥多摩湖で60cmクラスの
ランドロックサクラマスが釣れることを
記事の中で紹介しちゃったんです。

これは、1980年代に
起こった事件なのですが、
当時も今と変わらず、
東京都の内水面漁業調整規則では
10月1日から翌年2月末日まで
ヤマメの採捕を禁止していたので、
この記事は、実際に多くの
波紋を呼ぶことになりました。

記事を読んだ多くのアングラーが
サクラマスを狙って冬の奥多摩湖を
訪れるようになったことを契機として、
事態を看過できなくなった
行政と地元警察は
連携して密漁の取締りを強化。

実際に僕も、
冬に奥多摩湖でワカサギを釣っていて、
何を狙っているのか
警察官に質問されたこともあります。

また、これは知り合いからの情報ですが、
冬に奥多摩湖でスプーンを投げていたら、
近くの派出所に連行され、
念書を書かされた挙句、
拇印を押すことまで
強要されたケースもあったと
聞いているんですね。

もっとも、これが事実なら
明らかにやり過ぎだとは思いますが、
先般の「道警ヤジ排除事件」を
見てもわかるとおり、
この国の内情を注視すれば、
こうした行き過ぎにも見える
公権力の行使が行われたとしても
決して不思議なことではないでしょう。

未確認の情報ながら、
この事件では、
誤報を流布した出版社にも
行政の指導が入ったという話もあります。

ただ、それが事実かどうかはともかく、
最も割を食ったのは
記事の内容を信用してしまったがために
「指紋」という高度な個人情報を
公権力に抑えられてしまった
アングラーたちですよね。

雑誌という有料媒体から
発せられた情報であったという点は
極めて重い事実なわけですが、
ひとまずその点を措くとすれば、
ライターさんは、
読者に有用な情報だと思って
記事を書いたことは
ほぼ間違いないでしょう。

けれども、その結果、
本来、最も大事にしなきゃいけない
雑誌の愛読者の方々に
取り返しのつかない迷惑を
かけてしまったことになります。

少しだけ補足しておくと、
この事件には、
奥多摩湖にヤマメの漁業権が
設定されていなかったという
ひとつの背景があります。

その事実をもって、
奥多摩湖は、
東京都内水面漁業調整規則の
適用範囲外であると
曲解したライターさんが
独自の判断で記事を書き、
出版社のチェックをも
すり抜けてしまったというわけです。

ものすごく乱暴な
言い方にはなってしまいますが、
このライターさんが、
冬の奥多摩湖で
ランドロックサクラマスを釣って、
逮捕されるようなことがあっても
すべては自己責任だから、
あとは公権力とガチンコで闘うなり、
法的に課された責任を
自らが全うすればいい。

そう、責任の取りようがあるのですよ。

ところが、独自の理解に基づいて
記事にして発信してしまった結果、
とばっちりを喰わされた
愛読者の皆さんを
このライターさんや出版社が
法的に救済することなどできるはずがない。

その事実は、
本当に重いことだなと・・・。

まあ、古い事件なので、
僕の記憶もだいぶ風化していて、
ややあいまいな表現を
使わざるを得ない部分があることは
お許しいただきたいのですが、
当時の雑誌の一読者として、
はっきりと記憶していることもあるので、
ちょっと紹介させてもらいました。

さてさて、ここまでの話を
支笏湖のサクラマス釣りルールに
当てはめてみるとどうでしょう。

背景や事情に
細かい違いはあるものの、
ザックリ言えば、
先に紹介した奥多摩湖事件と
支笏湖のサクラマス釣りルールの問題は
かなり酷似した事案なんですよね。

このタイミングで、僕が
このヒリヒリするテーマについて
あえてブログで発信しようと思ったのは、
4月、5月に
支笏湖でサクラマスを釣ることが
あたかも合法であるかのように
断定的に発信された
情報に触れたからなんです。

もちろん、発信者を
誹謗・中傷する意図など
僕にはまったくありません。

きっと良かれと思って
やっているのだろうと想像ができますし、
悪意がないことも明白。

ただ、こうした事実を知っていながら
見て見ぬふりをするとすれば、
結果的に、
支笏湖というフィールドを純粋に愛し、
日常の一部として
釣りを楽しんでいるアングラーが
取り返しのつかない危機に
直面してしまうリスクがあるなと。

そう、あの奥多摩湖事件のように・・・

ちなみに、誤解を恐れず言うと、
もし僕が、北海道漁業調整規則を
文理だけに沿って解釈するならば、
4月、5月に
支笏湖でサクラマスを釣ることは
どちらかというとシロのように見えます。

やろうと思えば、
もっともらしい理屈をつけて、
自身の直感に
多少の説得力を持たせることだって、
できるかもしれません。

でも、もし仮に
この考えがいかに確信的であり、
かつ、法令解釈として
一定の合理性を帯びていたとしても、
それは、あくまでも
個人的な見解の域を出ないのは当然のこと。

加えて、
そもそもの規則の理念を検討したり、
規則を所管する官庁の公式見解を聴いたりと
問題全体を俯瞰してみれば、
クロという判断にも
十分な合理性がうかがえることもわかる。

そうすると、
僕の個人的な法令解釈なんかは
もはやどうでもよくて、
ここに訪問してくださる
皆さんに向けて発信すべき情報は、
あくまでも客観的なものに
限られるべきだと考えたんですね。

ここまでは、
僕的にブレることはないのですが、
でも、ここから先が難しかった。

客観的な情報を
単に並べるだけでは、
「あとは自己責任でお願いします」
みたいなメッセージとして
皆さんに伝わってしまう可能性も
にわかに否定できない。

とは言え、
こうした法的解釈が
二分される問題について、
最終的にシロかクロかを判断するのは
裁判所であるわけだから、
一個人が、あまりに突っ込んだ
表現を使ってもよろしくない。

ということで、
「限りなくクロに近いグレー」
という表現に着地したのですね。

ただ、この表現が
最適解であるのかどうかは
なんとも自信がありません。

結果的にですが、このブログを
見てくださったことがきっかけで、
4月、5月に支笏湖で
サクラマスを狙って釣ることを思いとどまり、
法的な罰則を受けるリスクを
回避できたアングラーの方がいたとすれば、
最適解とまでは言えないまでも、
適解ではあったのかなと
思うこともできるのですが・・・。

たぶんですね・・・

シロ派の人たちだって、
みんな良かれと思って
情報を発信しているはずなんです。

結論はどうあれ、
こうしたヒリヒリする問題を
直視しようとする姿勢だけでも
十分リスペクトに値すると思います。

でも、その結果、
自分を信頼してくれている人を
リスクにさらしてしまう
可能性があるのだから
情報発信というのは、本当に怖い。

これは、
他人事なんかじゃないと
僕は思っているんですね。

僕自身も、無意識のうちに、
このブログを訪問してくださる方に
リスクをもたらすような
情報を発信してしまうかもしれない。

う~ん、情報発信って、
考えれば考えるほど、本当に難しいな。

今回、ブログの記事
「支笏湖のサクラマス釣りルール」を
紹介してくださった方、
情報に触れて、このブログを
訪問してくださった方には、
この場をお借りして
感謝の気持ちを伝えたいと思います。

このブログへの
アクセスが急増したことで、
もっともっと読み手の皆さんに
寄り添った情報提供ができるよう、
今後も努力を
続けていかなければならないと
改めて強く思いました。

さてさて、
自分磨き、もっと頑張らなきゃ。

まあ、磨いて光るかどうかは
なんともなんですけど・・・(笑)

スポンサーリンク
レクタングル広告(大)
レクタングル広告(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする