夏色と秋色のはざまで

前回からつづく)

ホウライマスの川を後にし、
午後、最初に入ったのは、
襟裳岬の東側を流れる小河川。

ここは、
流程が短いことも影響してか、
どちらかというと
川の栄養状態がよろしくない。

もちろん、
日高山脈の川だけあって、
見た目の水質は抜群。

だけど、
釣れてくるエゾイワナの体型は
判で押したように
皆、こんなふうに痩せていた。

それでも、
毒々しいくらいに鮮やかな
おなかのオレンジ色は、
これぞネイティブトラウトといった趣。

鱒たちにとっては
とても過酷な環境なのだろうが、
これはこれで、
この川の立派な個性なのかもしれない。

そんな貧相な流れの中からも、
ラッキーなことに
尺を超えるサイズの
エゾイワナが飛び出してきた。

やっぱり痩せてはいるが、
先ほどの魚と比べると、
多少は風格らしきものを漂わせている。

よく観察してみると、
やはりというか何というか、
海から遡上してきた魚とは明らかに違い、
サイズの割に
スポットがかなり小さめ。

これなら、
胸を張って河川残留型の
尺エゾイワナと言ってもよさそうだ。

次に向かったのは、
さらに規模が小さい流れ。

ジャンプすれば
オッサンでも飛び越えられそうな
いわゆる細流である。

ただし、
こっちの川には
サクラマスが遡上するらしく、
ちゃんとヤマメが棲息。

それを知っている分、
ワクワク感は
相対的にこちらの川のほうが大きい。

そして期待どおり、
入渓してすぐに、
小型のヤマメと
エゾイワナが連続ヒット。

とりあえず、
僕が普段から勝手に
気に入っているタンデム写真を
一枚だけ撮影しておく。

ちなみに
このあたりの川は、
それなりの高低差を保ったまま、
こんなふうに海へと
流れ込んでいるケースが多い。

だがら、海辺から
川を釣り上がっても、
すぐに渓魚がヒットする。

そうそう、
実にシンプルな仕組みなのだ。

そして、
次にヒットしたヤマメは
心を揺さぶられるような
見事な魚だった。

見事と言っても、
もちろんそれは
サイズの話ではない。

確かに27cmと、
川の規模を考えれば
十分すぎる良型ではある。

が、一瞬にして
僕が引き込まれたのは、
夏色から秋色へと
変化を遂げるはざまにある
なんとも艶めかしい
そのビジュアルに、であったのだ。

尾に近い部分は、
まだどことなく
夏色を残している感もありつつ……

腹側は、
すでに色のトーンが
かなり落ちてきていた。

それにしても
このヤマメのマダラ模様は独特で、
この部分だけを観たら、
まるでカエルみたい。

一般的なヤマメの
上品さを感じさせることはなく、
むしろ純血を思わせる
野生のえぐみすら漂わせている。

その一方で背中側は、
まるで夏色と秋色のはざまを
行き来しているかのような
なんとも微妙な色合い。

だがそれがかえって、
このヤマメの個性を
存分に引き立たせていたように思う。

う~ん、
艶めかしくて、
これは純粋に美しい!

本当ならもっと長い時間、
ずっとずっと眺めていたいくらいの
気持ちではあったけれど、
魚に対する負荷を考えれば、
もうそろそろ限界が近づいているだろう。

名残惜しさを感じつつも、
しっかりと回復を図ってから、
そっとリリース。

もともと隠れていた
岩陰のエグレへと、
一目散に逃げ帰っていった。

次に立ち寄ったのは、
この日、最後に
エントリーすることとなった小河川。

もっと釣り歩いていたい
気持ちもあったけれど、
予定の時間が近づいてきていたので、
ここを最後に
納竿することを決めた。

ここでは、
明らかに海から
遡上してきたばかりとわかる
アメマスがヒット。

「The アメマス」的な、
なんともオーソドックスな
いでたちである。

ちなみに、
この襟裳岬周辺の渓に
遡上してくるアメマスには、
極端にヒレが黄色くなる個体と
そうでない個体がいる。

この魚なんて、
腹ビレの透き通ったレモン色が
実に美しいのだけれど、
すべての魚が
このような発色になるわけではない。

さて、何が原因で
そのような違いが生じるのか?

アメマスの発色の違いとか
コツコツと研究している人、
国内にいたりするのかなあ~???

そんなこんな、
釣りがメインなのか
仕事がメインなのか、
結局、最後はまったく
わからなくなってしまったけれど、
今回の日帰り旅は、これにて終了。

さすがに
往復7時間の行程を
日帰りとかになると
最近はどうにもカラダに堪える。

反面、ひたすら
ステイホーム生活を続けていたら、
運動不足になって、激太り必至。

う~ん、
コロナに罹らないようにしながら、
うまく生活のバランスを保つのって、
本当に難しいんだよなあ~。

でも、人との接触を増やすことなく
こんな素晴らしい鱒に出逢えるのなら、
わざわざ思考を止めて
あえてじっとしている必要もないだろう。

激戦区だと
さすがにそうもいかないだろうから、
自戒の念も込めて言うなら、
マイナー河川の大事さにも
常に目を向けていないといけないよな。

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