ネクトン(TACKLEHOUSE)

"ネクトン"

ごく一般的な説明をするならば、
今から約15年ほど前に廃盤となった
タックルハウス社製のミノー。

ベテランアングラーの方なら
「昔、そんなルアーあったよね」
と思い出してもらえそうだけれど、
若いアングラーの方には
「なんすか、ソレ!?」って
ツッコミを入れられてしまいそうですね。

でも、ネクトンが、
トラウトルアーのカテゴリーの中で
定番ルアーの地位を
確立できなかったことは事実。

だから、今となっては、
その存在を知る人が少ないことも
大いにうなずける
結果ではあるのでしょう。

ただですね、、、

あくまでも
僕の主観だけで言わせてもらえば、
廃盤から15年以上の
月日が経過した今日もなお、
このネクトンこそが
トラウト向けプラスチックミノーの
最高傑作であるに違いないと
ずっと思い続けています。

その理由は、
他のミノーでは絶対に体現できない
ミノーイングの奥深さを
ネクトンを使うことによって
とことんまで
味わい尽くすことができるから。

だいぶ変態じみた
表現になってしまったけれど、
ネクトンというミノーは、
それくらい唯一無二の存在で
あり続けているのですよね。

でもさあ、
そんな傑作のミノーが
なんで廃盤になっちゃったのよ!?

最高傑作だとか言うけど、
そんなのアンタの
勝手な思い込みなんじゃないの?

唐突に廃盤品を絶賛すれば、
このような批判の声が上がることは
まあ、必然とも言えるのでしょう。

率直に言えば、
こうした指摘のおよそ半分は
たしかに的を得ているとも
思うのですよね。

そう、もし多くのアングラーに
ネクトンが支持されていたとしたら、
廃盤なんかには
ならずに済んだはず。

現に、ツインクルなど
ネクトンよりも前に開発された
タックルハウス社製のルアーが
今も市場で生き残っていることを見れば、
ネクトンの廃盤に
それ相応の合理的な理由があったことは
僕でも容易に想像できますから。

ネクトンが廃盤になった理由の考察は
後段で行うこととして、
まずは、なぜ僕がネクトンを
そこまで絶賛するのかについて、
簡単に紹介してみようと思います。

実のところ、
その理由は至極単純で、
他のルアーでは
なかなか口を使わすことができない魚を
ネクトンを上手く操ることで
バイトまで持ち込むことが可能になるから。

実際、桂川や鬼怒川など
首都圏のいわゆる激戦区で
僕が20代の頃にキャッチした
スーパーなヤマメたちは、
どれもネクトンで獲ったんですよね。

雰囲気だけでもということで
ほんの一部ですが、
古い写真を撮影した写真を
アップしてみます。

ちょっとしたコツは
ヤマメ狙いにはやや大きめの
この7.5cmを使うこと。

それにしても
魚たちの反応が違いました。

どのヤマメも
ベリーのフックをガブリですからね。

複数の先行者がいて
かなりハードな
プレッシャーがかかった状況下でも
ネクトンなら
なんとか攻略できる、みたいな…。

もちろん、
ネクトンはヤマメだけに
その威力を
発揮するわけではなかったですね。

イワナでも、
ニジマスでも、
そしてイトウでも……

特にイトウの激戦区、
猿払川を遠征で訪れた時なんか、
それまで何を投げても
見向きもしなかったイトウが
ネクトンに変えたその1投目に
突然、口を使ったこともありました。

これは僕じゃなくて、
カミさんの話ですけど・・・(笑)

魚目線で見ると、
ネクトンのアクションには
他のルアーにはない
捕食のスイッチを入れる
ファクターXが
隠されているのでしょうね。

ちなみにイトウ狙いなら
9cmがジャストフィット。

7.5cmがダメ
ということはなかったけど、
やっぱりミノーの
サイズを大きくしたほうが、
より効果的に
アピールできている印象もあったかな。

そんなこんなあって、
僕は、ネクトンのない鱒釣り人生など
絶対に考えられないとばかりに、
一生分のネクトンを買いあさって
いざ、北海道へ。

特に移住直後は、
ネクトンオンリーで
道内のフィールドを
歩きまわる週末を続けていました。

だから、北海道に移住して
たくさんの素晴らしい
トラウト達に出逢うことができたのは
まさにネクトンのおかげ。

回顧として
そんなふうに話をまとめても
きっと、言い過ぎではないのでしょう。

とは言え、
ネクトンを絶賛するばかりだと
いくら廃盤品とはいえ、
商品のPR記事みたいになっちゃって
やや面白みに欠ける印象も…。

そこで、今度は、
ネクトンが期せずして
廃盤になってしまった理由について
僕なりの考察を書いておこうと思います。

ただし、
廃盤になった理由云々について、
もちろんメーカーさんから
公式のコメントが
出ているわけではありません。

なので、ここに書くのは、
あくまでも個人の見解であることを
念のため付記しておきます。

ヘビーユーザーの立場から
ネクトンの欠点を評価するとすれば、
まず気になったのは、その価格。

約20年前、店頭で
概ね1,500円前後の
値がついていましたから、
他のメーカーの
プラスチックミノーと比べると
若干、割高な印象もありました。

ただ、割高と言っても
せいぜい、1割程度のもの。

だから、
価格面で優位性がないことが、
アングラーの購買意欲が高まらない
ひとつの原因になった可能性はありますが、
それだけが決定的な廃盤理由とは
さすがにちょっと考えづらいな、と。

そうすると、
次に疑われるのは、
ネクトン本体に
何らかの致命的な欠点が
あったのではないか、ということ。

う~ん、
致命的かどうかはなんともですけど、
いくつかの明確な欠点があったことは
確かだったと思います。

まず、標準でセットされている
トレブルフックが
大型魚狙いの場面では
強度不足で使い物にならないこと。

そうそう、これは
たしかに明確な欠点ではありました。

ただこの点は、
多少手間はかかるけれど、
自分でフックを交換すれば済む話。

実際、僕もそうしていましたし、
アングラーが自らの力で
改善できる欠点であったという意味では、
致命的な欠点とまでは
言いづらい気もします。

もう一点、
これは結構気になったのですが、
リップに強度がなく、
ボトムや岩にコンタクトさせて使うと
すぐに折れてしまうということが
よく起こりました。

こうなると、ミノーとしては
もはや使い物になりませんから、
よくフィールドで、
"あ゛っー"って声を上げたものです。

この点は、
仲間のアングラーからも
同じような声が
聞こえてきたこともありましたから、
安くないルアーとしては、
およそ褒められたものではない
致命的な欠点では
あったのだろうと思います。

ただし、
ユーザー側がネクトンを
障害物にコンタクトさせるような
使い方をしなければ、
そこが欠点として
露呈することはありません。

だとすると、この点も
ネクトンが終売に追い込まれる
決定打になったとは
ちょっと考えづらいな、と。

ここで僕なりの
結論めいたことを書くとすれば、
結局のところネクトンは、
誰にでもすぐに使いこなせる
ミノーではなかった
ということなんじゃないかと
思い至るのですよね。

僕自身も、
初対面時に「これは救世主だ!」
と思ったわけではなく、
むしろ「期待ほどじゃないかも…」
と、正直、思ったくらいでしたから。

そうそう、このルアー、
使いこなすのが
ちょいと難しいのですよ。

例えば、急流の中で
安定した泳ぎを実現しようとすれば、
そのスイートスポットは意外に狭い。

今どきのミノーなら、
多少雑な扱いをしても、
水面からスッポーンと
飛び出してしまうようなことは
ほとんどありません。

でも、ネクトンを
ゴリゴリと力任せに使おうものなら、
その長所を発揮することができずに、
水中でただの異物と化してしまうという
ネガティブな側面が
あったような気がします。

その一方で、ネクトンを
ある程度使いこなせるようになると、
そのポジティブな特徴を
どんどんと引き出すことができる。

だから、他のルアーでは
バイトに持ち込むことができない魚にも
口を使わせることが
できてしまうのでしょう。

そういう意味で言えば、
ネクトンは間違いなく
高付加価値のミノーだったとは思います。

ただ、「わかりやすさ」が
偏重されるようになった21世紀には
あまり親和的でない
隠れた傑作だったのかもしれません。

最後に……

このネクトンというルアー、
使いこなすのが難しいがゆえに、
ずっと継続して使っていると、
自分でも驚くほど
釣りのスキルが上がってくるんですよ。

昔、"○○養成ギブス"
みたいなものがありましたけど、
それのルアーフィッシング版というか
何というか…。

実際、僕が
ネクトンを重用していた時代に
身に着けたスキルは、
今や、激スレしたイトウ狙いには
欠かすことのできない
タクティクスのひとつとなりました。

このルアーとの出逢いがなかったら、
きっと、僕の鱒釣り人生は
まったく別のものになっていたはず。

そんなふうにも
思ったりもするのですよね。

最近は、
市場でほとんど
見かけることがなくなってしまった
ネクトンという名の傑作ミノー。

かつて大量に買いだめた分を
少しずつ切り崩しながら、
これからも大事に
使って行けたらいいなと思っています。

記事の中では、
ちょっとだけネクトンを
ディスってしまった部分もあったけど、
個人的には、
メーカーさん、デザイナーさんに
感謝の気持ちしかないですね。

でも、ネクトンのような
こういうひとクセあるルアーって、
やっぱり市場で広く
受け入れられることはないのかな……

う~ん、そう考えると
やっぱちょっと
せつない気持ちに
なってしまうよなあ~(泣)

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