シーズンラストを飾った丸太棒

前回から続く)

そして翌朝、
晴れ晴れとした気持ちで
天塩川の河畔に
立つこととなった。

この日はもう
どことなくやり切ったという
充実感があったので、
完全に肩の力は抜けていたと思う。

そして
目の前の流れは、
日ごとに水位が下がり、
12月の天塩川らしい姿に。

うんうん、
今年も気持ちよく
天塩川ラスト釣行を
締めくくることができそうだな。

と、ここで、
またしても思わぬ現実を
目のあたりに
することとなってしまった。

ありゃ、
ここにも出没しちゃったのね、
クマさん!

爪の痕に川の水が浸入して
凍り付いているところを見ると、
コレ、ついさっきでしょ!

だって、
たった数時間前まで
この場所は水の中。

ってことは、、、

ホント、
困ったもんだなあ~。

今年はクマ出没のニュースが
特に多かったけれど、
12月の天塩川、
しかも下流域でこれを見てしまうと
やっぱり例年とは何かが違うのかも……。
そう思わずにはいられない。

まあそれでも、
ここは視界が開けたポイントゆえ、
もうこの近くに
クマの姿がないことだけは確か。

ならば、
どうやらエスケープする
必要まではなさそうだな。

そんなこんな、
朝からひと悶着あったのだが、
クマのことは気にせず、
とにかく釣りに集中、集中。

そんな感じで
取り急ぎ、メンタルを
立て直してみることにした。

この日は、
川の水位が下がった影響が
水の中でも徐々に
出始めていたのだろう。

今シーズンは
数が少ないと感じていたアメマスだが、
この日はそのアメマスの
連続ヒットからのスタート。

そうだそうだ、
これが例年のパターンじゃないか。

こんな状況の中で
どうやって
イトウを絞り出せばいいのかって、
毎年、毎年、
いつも頭を悩ませていたっけな。

ここ天塩川では、
アメマスは外道という位置づけ。

だからと言って
無下に扱うわけではないけれど、
こちらのメンタルが下がっている時は
素直に喜べない時すらある。

でも、
この日は違った。

アメマスだって、
ちゃんとキレイに写真を撮らなくちゃ。
そんな心の余裕があったのだ。

結局、
最初に入ったポイントは
アメマスに完全占拠されていて、
イトウは最後まで不発。

それでも、
焦ることもなければ
ガッカリすることもなかった。

うんうん、
いつもいつもこんな精神状態で
釣りを楽しめたらいいのに……。

そうは思うけど、
でっかい幼稚園生には
やっぱり無理かな(笑)

その後、
めぼしいポイントを
何カ所か回ってみたものの、
ヒットするのは、
アメマス、アメマス、
またしてもアメマス……。

そして、
ここで最後と決めた
ポイントに到着したのは、
ちょうど午前11時を
少し回ったタイミングだったと思う。

泣いても笑っても、
今年の天塩川釣行は
このポイントでラスト。

前日は触らずにとっておいた
期待のピンスポットで、
最後に何かが起きてくれないか。

そんな淡い期待を抱きつつ、
「イトウがバイトするならココ!」
ってゾーンに向かって
そっとルアーをキャスト。

すると……

ヌ~~~~

それは、
地球を釣ったのとは違う
明らかな違和感。

ニセモノを
くわえてしまったことに
まだ気づいていないイトウが、
少しだけ動いた感覚である。

そしてここから、
今年最後のイトウとの
壮絶なバトルが
はじまることとなった。

ジジジジジィーーーーー

ブウン、ブウン、ワッシャーン!

首振りの
ストロークの大きさから
さほど長さは感じないのだが、
とにかくパワーがスゴイ。

流心に勢いよく
突っ込んだと思ったら、
今度は足元の
沈木めがけて猛ダッシュ!

そんなことを
何度も繰り返す。

オイオイ、
ちょっとやり過ぎじゃないか、
イトウさん!!

……とかなんとか言いつつ、
そんなイトウのやりたい放題を
心から楽しんでいる
別の自分がいたりもする。

だって、
こういう強い魚と
一本の糸でつながらない限り、
アドレナリンが
ドバっと出たりはしない。

アラフィフにもなって
そんな体験をする機会なんて、
そうそうあるもんじゃないだろう。

だから、これでイイ。
いや、これがたまらんのだ!!

慌てず騒がず
ファイトしていると
イトウのパワーが
だんだんと削がれていることが
ロッドを握る右手に伝わってきた。

よし、そろそろ
勝負のタイミングだな。

この秋、新調した超大型の
ランディングネットを左手に携え、
ロッドをゆっくりと煽って
一気にイトウを寄せる。

エイ!!

うわぁ、
なんじゃこりゃ!?

目の前に横たわる
イトウの姿を見て、
思わず声が出てしまった。

ビジュアル的には
いわゆる一升瓶体型。

長さは
メーターに届かないのに、
とにかく丸太棒のように
胴回りがぶっといのだ。

いかに
ハイクオリティフィッシュが多い
天塩川本流の魚とは言え、
このクオリティーはさすがに貴重。

そう思えるほど
素晴らしき魚体を
誇っていたのである。

ということで、
まずは上からのアングルで
ワンカット、パシャリ。

本物の臨場感を
ありのままに伝えるのは難しいけれど、
この写真なら、
魚の太さが少しは伝わるだろうか。

今度は、
太陽の日差しを浴びて輝く
鱗の様子をパシャリ。

こちらも
非常にきめが細かくて、
本当にイイ魚であることが
とてもよくわかる。

今度は、尾ビレ……。

大型イトウ独特の
ヒレの存在感が実に素晴らしい。

そして、
このイトウのハイライトは、
なんとびっくり、
腹ビレにあったのだ。

そう、このイトウ、
片方の腹ビレが、
鮮やかなオレンジ色に
着色されているではないか。

少なくとも記憶にある限り、
この色のヒレを持ったイトウに
出逢ったことは
ただの一度もなかったはず。

生物学的に
どれくらいレアなことなのかは
学者じゃないので
正直なところわからないが……。

それでも、
普段からビジュアルが異なる
一尾一尾の鱒との出逢いを
楽しみにしている僕にとっては、
この上ない衝撃的な出逢い。

あ~、
もう~、こりゃ最高だ!

いや~、
これはたまらんぞー

シーズンラストフィッシュが
コレとは、
変態釣り師からすると
完全に悶絶もの。

たった2日前まで
ドツボにハマっていたことを思えば、
こんなエンディングまでは
とてもじゃないが期待していなかった。

しばし興奮は収まらなかったが、
魚に余計な負荷をかけてもいけないので、
たっぷりとエラに酸素を送り込んでから
そっとリリース。

素敵な出逢いをくれて、
本当にありがとう!
そんな気持ちで
流れに帰るイトウを見送った。

こうして、
今年の天塩川ラスト釣行は
無事終了。

今年も
さまざまな思い出をくれた
天塩川に向かって一礼をしてから
車に乗り込んで帰路に就いた。

うんうん、
やっぱり天塩川は特別だ。

あと何年、ここに
立ち続けられるかはわからないけど、
カラダが動く限りは、
この場所に立ち続けたい。
そう思っている。

安全面にだけは
十分配慮してもらって、
人生に一度でいいから
是非ともこの地を訪れてもらえたら……。

ひとりの
しがないアングラーとして、
そう願っています。

確かに天塩川の攻略は
簡単ではないかもしれないけれど、
一般的に考えられているほど
難易度の高い
フィールドではないのも事実。

だから、
天塩川のイトウは、
一部のアングラーにしか狙えない
特別な存在などではありません。

このブログを
見てくださっている皆さんに
そこのところが
しっかりと伝わったら
管理人としては
この上なくうれしいですね!

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