2019 再会

今年も、待ちに待った
この季節がついにやってきた。

そう、イトウとの再会の季節だ。

私は、年明けから
産卵行動が見られなくなる5月19日まで、
毎年、イトウを
自主禁漁とすることに決めている。

だから、5月20日を過ぎて、
初めてイトウの川にエントリーする日が
毎年、楽しみで仕方ないのである。

今年は、5月21日に
道北のイトウの川へと向かった。

なかなかタイトなスケジュールだけれど、
仕事込みで2泊3日の日程を
何とか確保。

出発前からワクワクが止まらないくらい
精神的に盛り上がっていたのに、
当日は、事前の予報どおり、
あいにくの雨模様・・・

さらには、強い南風も吹き付け、
さながら春の嵐の様相を呈していた。

そんな天候でもあったので、
恒例の夜駆け朝撃ちは断念し、
仕事関係の用足しをしながら、
一般道をゆっくりと北上することに。

現地に到着した時のは、
時計の針が、16:00を
少しばかり回った頃だっただろうか。

午前中の予報では、18:00頃まで
雨が強く降ると見込まれていたが、
現地は、せいぜい小雨が降る程度。

風は強く吹き付けているものの、
十分釣りが可能なコンディションだ。

っていうか、風、ローライト、濁り。

さらには、ベイトの姿も
はっきりと確認できる。

「釣りが可能」どころか、
むしろ、絶好のコンディションじゃないの?

そう思えるほど、
こちら側にアドバンテージのある
状況だったと思う。

ところで、春のイトウ釣りには
どんな特徴があるのだろうか。

秋のイトウ釣りは、
フィールドに広く散った魚を探す釣り。

見つけるのが大変な反面、
見つけてしまえば、
口を使わすのは比較的容易だ。

一方で、春のイトウ釣りは、
その真逆と言っていいだろう。

居場所を絞り込むのは容易だが、
口を使わすのは大変。

目の前で派手なボイルを繰り返していても
「ニセモノ」に簡単に反応するほど
やわな相手ではないのである。

それも、そのはず。

10年以上もの長~い期間、
北の大地の過酷な自然環境の中で、
たくましく生き続けているのだから、
下心丸出しの人間なんぞに
そうやすやすと騙されるはずもない。

そんな中、春のイトウ釣りシーンにおいて、
私は、ルアーチェンジを
一切しないと決めている。

そう、全く同じルアーを
ずっと投げ続けるのである。

別に、修行だとか、
魚とフェアに対峙したいとか、
そんなたいそうな理由はない。

ただただ、それが一番愉しいのだ。

もちろん、ルアーチェンジをしないことと
変化がないことは、同義ではない。

アクションはもちろんのこと、
立ち位置、風の当たり方、
カレント、ライトの強さと方向。

ちょっと考えただけでも、
変えられるものは、たくさんある。

「味方につけられるものはたくさんある」
と言った方がより正確だろうか。

夕方2時間程度のエントリーだから、
この日は、特定の区間を
様子を見ながら釣り歩く。

昔なら、この時点で
かなり前のめりになっていたはずだけれど、
フィールドへの信頼感もあって、
落ち着いた気持ちでロッドを振れている。

湿原河川の景色を眺めながら
のんびりとロッドを振っているだけでも
十分幸せな気持ちになる。

やっぱり、道北のフィールドって
本当に素晴らしいな。

ドン!!!!!

ロッドを握る右手に衝撃が走ったのは、
釣りをはじめてから
およそ30分ほどが
経過した頃だっただろうか。

ヒットしたイトウは、
なぜか首振りを1ストロークしただけで、
突然、上流に爆走をはじめた。

マズイ!

イトウに引きずられながら、
必死にドラグを調整。

軽く50mほどは、走られただろうか。

ラインに絡みついてくる水草を外しながら、
必死に体勢を整える。

しばらくやり取りして、
ようやく、爆走が止まった。

オイオイ、最初の1尾は小型でいい。
これじゃ、リハビリ無しの本番だよ!(笑)

心の中でそう叫びながら、
後は、ゆっくり焦らず
魚との間合いを詰めていく。

ようやく、魚が見えた。
ん・・・、思ったよりは小さいな。

大爆走に引きずられるくらいだから、
軽くメーターは超えていると
思ったのだけれど、
そこまでのサイズではないようだ。

今年、最初の1尾ということもあって、
ランディングのコツを思い出しながら、
決して無理をすることなく、
慎重にネットに魚を誘導。

無事、キャッチすることに成功した。

97cm ♀

メジャーを当てると、
やはりメーターには少し足りないけれど、
迫力ある見事なイトウ。

サイズはさておき、
毎年のことではあるが、
心震える至福の瞬間だ。

ちょっと幼顔だが、
彼女は顔に似合わず
暴力的なファイターだったな。

リハビリ無しで
大型イトウとの再会を果たせたことに
ちょっとだけ安堵。

毎年思うことだけれど、
この最初の1本をキャッチした瞬間には、
アドレナリンが、
ドバドバと溢れんばかりに
放出されている気がする。

釣りっていいな・・・

オッサンになっても
大きく心揺さぶられる瞬間を味わえるなんて
本当に幸せだなといつも思う。

イトウにしばらく見惚れ、
数カットだけ写真を撮らせてもらってから、
時間をかけて、魚の回復を待つ。

幸い、この日は水中の溶存酸素量が多いのか
イトウは、すぐに体力を回復。

元気に流れへと、帰って行った。

この日の釣りは、これで終わり。

そう、イトウの再会を果たせたのだから
もうそれで十分なのだ。

この季節、北の大地の朝はかなり早い。

午前3時には、すでに東の空は
明るくなり始める。

翌朝、また新たな出逢いが
訪れることを期待しながら、
この日の宿へと車を走らせた。

スポンサーリンク
レクタングル広告(大)
レクタングル広告(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする