ボクの夏休み ~後半戦~

前半戦からつづく)

移動先の
長万部川に到着したのは、
午前10時半頃の
ことだっただろうか。

早速、川の状態を確認すると
ほんのわずかに
濁りが残っているけれど、
水色はほぼクリアに近いところまで回復。

水量も、平水よりも少しだけ高い
絶好のコンディションのように思えた。

なんたって、
この川のことは、
他の川とは比べものにならないくらい
熟知しているつもり。

ベースとなるデータが
30年も昔のものとはいえ、
その再現性は、
間違いなく今も担保されている。

この条件をもらえたなら、
きっといい釣りができるに違いない。

ひと目川を見たその瞬間から、
僕には、そんな確信があったのだ。

この日、入渓したのは
長万部川の上流部。

もちろん、
中・下流部にも魅力はあった。

でも、下流部には
この増水で
釣っちゃいけない魚が
一気に遡上してきている
可能性も十分考えられる。

そうなると、
狙いのヤマメは
おびえて反応が悪くなるはず。

そんな予想もあったから、
まずは上流部という
選択をしたのだった。

この条件なら、
入渓点目の前のポイントから
すぐに反応が得られるだろう。

そんな楽観的な予測は
ほどなくして、
脆くも崩れ去ることになる。

いくつかの
目立つポイント探ってみるものの、
まったく魚からの反応がないのだ。

足元に目を落とすと、
そこには、真新しい足跡が。

なるほど、そういうことか。

水が引ききる前の
このタイミングで
すでに先行者が入っていることは
ちょっと意外だったが、
これで、魚が反応してこない
理由ははっきりした。

ならば、少し場所を変えてみよう。

そう決断し、
およそ1kmほど下った場所から
改めて入渓することを決めた。

今度は、入渓点前のポイントから
早速、アタリが出た。

一応、フッキングはできたのだが、
魚種を確認する前に
すぐにフックアウト。

この日は、
どうにもバラシが多くて、
なかなかリズムが掴めない展開が続く。

そんな悪い流れが変わったのは、
入渓点からおよそ100mほど
釣り上ったポイントでのこと。

ぶっつけの淵に流れ込む瀬の頭に
小型のフローティングミノーを
プレゼンテーションした次の瞬間・・・

ジィーーーーーーーーーーーー

けたたましい音を立てて、
一気にラインが引き出される。

ん!?
何、この魚???

戸惑いを隠せないこちらを尻目に
魚の方は傍若無人に
暴れる、暴れる!

なんたって、
こっちはヤマメ用タックル。

ラインもナイロン4lbだから、
無理などできるはずもない。

肝を冷やすこと十数回、
ようやく、魚の動きが止まってきた。

ん!?
ニジマス???

半分以上、
遡上魚の誤爆を疑っていた
僕のテンションは急上昇。

でも、持ち合わせのある
ランディングネットは
ヤマメ用のスモールサイズだ。

到底、ネットインなど
できるはずもない。

仕方がないので、
じっくりと時間をかけて
魚の体力を奪いにかかる。

幸い、増水によって
小砂利で形成された浅場が
すぐ下流に見つかった。

長いことファイトしていれば、
口切れのリスクも高まる。

ここは覚悟を決めて、
魚が浅瀬の方を向いた瞬間に、
一気に勝負を仕掛けるしかない。

どりゃあーーーー

ロッドワークを使わずに
ラインテンションを保ったまま
一気に後ずさり。

ヨシ!

この瞬間、長い闘いに
ようやく終止符が
打たれることとなったのであった。

ニジマス、54cm。

サイズだけで言えば、
超大型というわけでもない。

でも、ここ長万部川で
このサイズのニジマスを
キャッチできたことが
なによりうれしかった。

それも、そのはず。
そもそも、僕はこの川で
今までにたった3尾の
ニジマスにしか出逢っていない。

30年もの歴史の中で、だ。

しかも、最後に出逢ったのだって
もう20年以上も前のこと。

だから、この非の打ちどころがない
立派な魚体を見れば
いろんな思いがこみ上げてくるのも
無理からぬことなのである。

そしてもうひとつ、
昨年、近くのポイントで
ニジマスをバラしたこともあった。

その時は、多分、
30cmあるかないかの
サイズだったのだけれど、
その魚のことが
ずっと気になっていたのだ。

僕が、昨年から引きずっていた想いへの
ひとつの答えがこのニジマス。

おそらく
微々たる数ではあるのだろうけれど、
この長万部川で、
ニジマスは脈々と命を繋いでいたのである。

それにしても、
ニジマスを撮影するには
これ以上ない最高の日和。

魚が弱らない
最高の場所も確保できたから、
ここぞとばかりに
バシバシと写真を撮らせてもらう。

たかがニジマス、されどニジマス。

さっき、尻別川本流で
思いっきりフラれたばかりの魚に
この長万部川で出逢えるとは
想像もしていなかった。

しかも、過去、
この川でキャッチしたニジマスは
最大で30cm台後半。

だから、このサイズがいること自体、
まったくの想定外だったのだ。

僕に最高の夏休みを届けてくれた
ニジマスに御礼を言って、
そっとリリース。

いや~、こんなことが起こるから、
やっぱり釣りって楽しい!

その後も、ボクの夏休みは
本当に充実していた。

ニジマスをリリースして
およそ10分後にヒットしたのが
この夏色をした遡上アメマス。

サイズは
60cmに迫るほど。

だから、
またしても大捕り物に
なってしまったのだが、
さすがにニジマスよりは御しやすく、
比較的スムーズに
浅瀬に誘導することができた。

こっちも
実にイイ魚。

つぶらな瞳と言い・・・

立派な尾ビレと言い・・・

いやはや、もう最高だな!

なんて、調子に乗っているけれど、
実は、まだ本命のヤマメを釣っていない。

今度はヤマメが好みそうな瀬を中心に
釣りを組み立てていく。

すると、ほどなくして
コツンと小気味よいアタリをとらえた。

待望の本命魚、ヤマメ。

サイズこそ、20cmを
わずかに超えたくらいの小型だけれど、
これはこれで本当にうれしい。

この後も、飽きない程度に
ヤマメが釣れ続いた。

キャッチできたのは、
最大でも22cm。

サイズこそ伸びなかったけれど、
可憐な姿を拝めただけでもう満足。

まだたっぷりと
時間は残っていたけれど
これ以上、無理して
釣りを続ける必要もないだろう。

いや~、
前半戦はどうなることかと思ったが、
後半戦に巻き返しに成功。

結果的には、
大満足の夏休みにすることができて
本当によかったなあ~。

そうそう、
あのニジマスをリリースして以降、
ニジマスらしきアタリは
ただの1回もなかった。

きっと、狙って釣れるほどは
棲息していないのであろう。

まあ、もともと長万部川は
ガツガツ釣るような川じゃない。

これからも、
一年に1回か2回でいいから
のんびりと川歩きを楽しみながらが
郷愁に浸れたらいいな。

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