いざ、リベンジの時!

前回から続く)

そして迎えた翌日の朝、
車は一路、天塩川下流域へ。

いろいろと悩んだ末、
中流域を完全に見切り、
この日は下流域を集中的にサーチする。
そう心に決めたのだ。

もちろん、
本来は魚影が濃いはずの
中流域を見切るという選択には、
当然リスクが伴う。

ただ、
今は守りに入ったら
絶対にダメ。

考えうるすべてのリスクを許容し、
その上で攻め続けない限り、
前回から続く
悪い流れを断ち切ることなんて
できるはずがない。

ならば、
ハイリスク上等。

普段は
引き出しの奥にしまってあるような
コアなノウハウも全部使って、
あとはやり切るだけ。
そう覚悟を決めたのである。

この日も、
朝から頭上には
きれいな青空が広がっていた。

一般的な話をすれば、
魚釣りには向かない生憎の空模様。

でも、
初冬の天塩川に関しては、
こんな天気でも、
十分に勝負は成立する。

そのことは、
過去の実績から明らかであった。

ドン!

ジジジジィィーーーー

それは、
河畔に立って
2投目のことだった。

守りに入ろうとする
弱い気持ちを払拭できたことで、
ついに流れが変わったのだ。

ただ、
前回のことがあるので、
油断は禁物。

そんなこともあって、
いつも以上に
慎重なファイトを心掛ける。

よしよし、
フッキングは大丈夫だ!

そんな
確かな感触を得て、
スッと心が落ち着くのが
自分でもわかった。

もしかしたら、
これがイトウとの
今年のラストファイトに
なるかもしれない。

そんな思いを抱きつつ、
一本のラインで大鱒とつながった
至福の時間に
しばし浸り尽くす。

長いようで
あっという間の時間……

そして、、、

サイズは
90cmそこそこ。

がしかし、
サイズなんて
もはやどうでもよかった。

だからこの時は、
メジャーをあてて
ちゃんと計測する気になんか
とてもなれなかったのだ。

ついに訪れた、リベンジの時。

やったというよりも
ホッとしたというのが、
当時の正直な感想だったと思う。

それにしても
この魚体のツヤ……

そして、
パンパンに張った
ぶっとい胴回り……

この姿を見れば、
少なくともこの個体に関しては
夏の渇水と高水温を
うまく凌げたことがよくわかる。

そうそう、
天塩川のイトウは
そんなにやわじゃないのだ。

だって、そうだろう。

たった
一ヶ月程度の渇水と高水温で
個体数を一気に
減らしてしまうくらいなら、
もうとっくに
イトウが絶滅していても
おかしくはないはず。

確かにこの夏、
一部の河川で起きた
イトウの大量死事件は
とても悲しい出来事ではあった。

が、それがただちに
種の存続を脅かすような
大災害であるとまでは
とてもとても思えない。

たった一尾で
結論じみたことを言うのは早計だが、
この魚の見事な姿は、
楽観的な説を補完する
ひとつの材料には
なってくれるんじゃないかな。

相手がある
勝負というのは、
勝利の女神が頻繁に行き来をして
本当に面白いもの。

一旦こちらに流れを引き寄せると、
いとも簡単に期待以上の
成果を手にしてしまうということが
往々にして起こったりする。

はて、今までは
いったい何だったんだ!
思わずそう
叫びたくなるくらいに……。

この日は、
まさにそんな状況
だったのかもしれない。

無事にリベンジを果たし、
意気揚々と向かった次なるポイント。

その一投目に、
また新たな
うれしい出逢いが訪れるのであった。

(次回に続く)

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