奥深き天塩川

出張の帰り道、
稚内市から天塩町に向かう道道沿いには
見事な原生花園が広がっていた。

6月中旬のこの時期になると
毎年出現する北海道らしい風景だ。

今年は季節の進行が早いこともあって、
例年なら主役を張っているはずの
エゾカンゾウはすでに盛りを過ぎ・・・

替わって、ハマナスのピンクや・・・

エゾスカシユリのオレンジが
北の大地に鮮やかな彩りを添えていた。

そんな自然の造形美を横目に
天塩川下流域のポイントを目指す。

一昨日の出来事によって、
いつも以上に、大型のイトウ以外は
全く目に入らない精神状態に
自らを追いやっていたように思う。

さりとて、そんな邪念に
満ち溢れたアングラーのことなど、
大型のイトウが
歓迎してくれるはずもない。

めぼしいポイントを
何カ所か回ってみたものの、
イトウからの反応は皆無。

こちら側の精神状態を
一旦リセットしない限り、
何も起こらない時間は続く。

そんなふうに考えられる程度に
少しだけ冷静になったところで、
中流域のポイントまで
ちょっとした移動を敢行する。

水位の下がった中流域のポイントを
いくつか巡ってみたけれど、
期待に反して、すぐにイトウからの
反応が訪れることはなかった。

それでも、集中力と冷静さを保ったまま
勝手知ったるランに差し掛かった時、
待ちに待った
イトウからの反応が・・・。

全くもって、
一昨日にスレ掛かりしたサイズとは
比べようもなかったけれど、
それでも、ようやく
1尾のイトウとつながれたことに
何とも言えない安堵の気持ちが芽生える。

浅瀬に誘導すると
まだまだ幼い表情が残る
70cmに少しばかり足りないサイズの
かわいらしいイトウであった。

スキニーな個体も多く見られる
流域でキャッチしたイトウだったけれど、
思いのほかコンディションは良好。

イトウの澄んだ瞳を見ていると、
心にのしかかった重しのようなものが
スッと消えていくのがわかる。

後から考えると、
この小型のイトウこそが、
天塩川が与えてくれた
慰め程度のご褒美だったのかもしれない。

そんな精神状態を
持続できればよかったのだけれど、
情けないことに、
ここで、大型イトウへの邪念が
また、沸々と湧き上がってしまったのだ。

そんな時、天塩川は
またしても厳しい表情を見せる。

下流域に戻り、
この日最後と決めたポイントでのこと。

首尾よく、ベイトをロックオンする
イトウの姿を発見したのだけれど、
こちらが何をやっても
完全無視を決め込まれてしまった。

挙句の果てには、
リアルベイトにだけ
ガンガンボイルし始める始末。

"完敗"

この時の状況を適切に形容する言葉は、
これ以外、見つからなかった。

まあ、邪念に満ち溢れた精神状態では
奥深き天塩川のイトウは
攻略できるはずもないということ。

もう一度、作戦を練り直して、
リベンジの機会を窺おうと思っている。

でもね、こういうことがあるから
アングラーとして
少しずつでも成長できるのかもしれない。

「そう思えたことこそが、収穫だった」

後日、しっかりとリベンジを果たし、
涼しい顔してそんな言葉を
吐いてみたいものだなあ~

ん!?

そんな妄想してる時点で
ダメだな、こりゃ(笑)

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