(前回からつづく)
少しのクールダウンを終え、
向かった先は
同じ長万部町内を流れる国縫川。
実のところ、
となりまちの八雲町を流れる
遊楽部川や野田追川に向かうことも
ひとつの選択肢ではあった。
けれど、
体力の消耗度合いも考慮して、
ひとまずは、昨年と同様に
近場で手を打つことを決断したのだった。
踏み跡をたどり河原に立つと、
青々とした雑草の上を
澄んだ透明な水が流れている。
水量が多めで、
水質がクリアという状況は
それだけ見ても、
期待を十分に抱かせるものであった。
ただ、外気温は
概ね30℃近くにまで達していたから、
水温は、朝からずっと
上昇し続けていたはず。
それでも、
さすがに20℃は
超えていない体感だったから、
なんとかなりそうな感触を得て
小さなポイントに
ルアーを撃ち込んでいく。
すると、最初に反応してきたのは、
意外にもアメマスであった。
その姿をよく見ると、
ホワイトスポットは大きいものの、
魚体は少し黄色味がかっている。
尾びれの先には、
赤色系の派手な発色も見られた。
見る限りでは、
エゾイワナと呼んでもいいような
気さえする魚体。
もしかすると、
居付きの個体なのかもしれない。
続いて反応してくれたのは、
待望のヤマメ。
サイズは小さいが、
この川の魚らしいその姿に、
ちょっとほっこりしてしまう。
20cmクラスを数尾釣った後、
レイダウンの下から
少しサイズの良い魚が飛び出してきた。
ルックスは、
可憐さが際立つ尻別川のヤマメに比べ、
ちょっとばかり
ワイルドさが目立つ風貌だ。
やや乱れたパーマーク、
腹部にも点在するスポットが、
そんな印象を与えているのかもしれない。
小渓流の魚らしく、
よく見ると、色彩も豊か。
ただ銀ピカというのではなく、
味わい深さを感じさせる
独特の雰囲気を放っている。
サイズ的には、
だいたい26cmというところ。
川のスケールを考えれば、
十分に満足のいくサイズである。
理想的なヤマメを
キャッチすることができたので、
それ以上に粘る理由はない。
すぐに脱渓して、
次なるプランを練ることにした。
残り時間を考えても、
大きな移動は非現実的。
ならば、帰り道に
ちょっと寄り道できる場所を
検討するほかない。
寄り道する先として、
もちろん、尻別川も頭をよぎった。
けれど、それでは、
あまりにベタ過ぎるという
否定的な思いの方が
やや優勢だったと思う。
せっかくなら、
ちょっと違うことをしたいなと
思っているうちに
頭に浮かんできたのが、
黒松内町を流れる朱太川であった。
朱太川は、
言わずと知れた鮎の名川。
ここ北海道内では珍しく、
毎年、多くの天然遡上が見られる
とても貴重な川なのだ。
この日も、平日とは言え、
ところどころに
長竿を携えたアユ師の姿が見える。
道内の他の川では
あまり見かけない光景に
昔、よく見た本州の里川の風景を
懐かしく思い出してしまった。
周辺を少し車で走って回り、
アユ師のいない場所を探して、
ひとまず川に降りてみた。
朱太川にエントリーしたのは、
私が18歳の時以来。
だから、何にも
予備知識がなかったのだ。
思いつきで降りたスポットにしては、
雰囲気は悪くない。
ただ、長万部川、国縫川という
噴火湾に注ぐ河川に比べると、
確実に水温が高い。
たぶん、20℃は超えていただろう。
底石も黒褐色をしていて、
いかにも鮎河川らしい趣だ。
石には食み跡がたくさん確認できるし
よく見ると、15cmくらいの鮎が
たくさん泳いでいる。
客観的に見れば、
正直、期待感はさほど高くはなかった。
それでも、トロ瀬を眺めていると
散発ながら、鱒のライズが見える。
その様子に、
わずかばかり期待値が増す。
少し下ったところに、
沈み石と流木が複雑に絡みあう
ポイントが形成されていた。
サイドからでは狙えないので、
流れの上流に立ち、
ルアーを流し込むようにアプローチ。
すると、待望のアタリが・・・
大事にランディングすると、
美しいヤマメ。
サイズは、
25cmを少し超えるくらい、
いや、もう少しだけ
大きかったかもしれない。
よく見ると、
長万部川、国縫川のヤマメと比べると
底石の色が影響しているのか、
発色が強めの印象だ。
この魚も、パーマークが乱れていて
原始的な雰囲気を漂わせている。
ヒレの美しさも、
魚体の肌艶も申し分ない。
普通に考えて、
さほど特筆するような
個体ではないのかもしれないが、
私にとっては、
十分に満足のいく1尾だった。
しばし、その姿に見惚れてから、
ヤマメをそっと流れに戻す。
充実の1日は、
このヤマメを最後に
締めくくられることとなった。
意表を突く
ニジマスのバイトに始まって、
カラフトマスの遡上に、
ヒグマの痕跡も・・・
いろんなことがあった
1日だったけれど、
冒険は、やっぱり愉しいというのが
この日、心底感じたこと。
冒険したいときに、
冒険できる環境が、
ここ北海道には残されている。
本当に、
素晴らしいことだなと思います。
是非、この夏、皆さんも、
北海道の渓流に
"冒険"しに来ませんか?