原野を切り裂く水柱

前回からつづく

翌日、
午前2時半に設定しておいた
アラームが枕元で鳴る。

そう、北の大地の
夜明けはとても早いのだ。

防寒着を着こみ、
軽く腹ごしらえをしてから、
そそくさと川へと向かう。

この時点で、時刻はまだ
午前3時半過ぎ。

けれども、
空はもうすでに白んでいて、
ラインを余裕で結べるくらいの
十分な明るさになっていた。

それにしても、
やはり道北の朝は冷える。

氷点下になっていない分だけ
まだマシだけど、
風裏になっているような場所では、
芽吹き始めた草の葉に
ビッシリと霜が付いていた。

まあ、イトウは
もともと冷水性の魚。

魚を釣ることだけに関して言えば、
暖かいよりは寒い方がいいだろう。

この日も
前日と同様に風向きは東。

ただ、霜が降りるくらいだから、
そよそよと冷たい風が
頬を撫でる程度の強さであった。

ならば、通常は、
風が当たる面を攻めるのが
セオリーではあるのだけれど、
朝マヅメのタイミングなら
セオリーに固執する必要もないだろう。

とりあえずは
期待値が高いと考えていた
湿原河川下流域の
地味なストレッチへと向かった。

それは、キャスト開始から
わずか2投目のことであった。

イメージどおりの場所で
この日、最初のバイトを得ることに成功。

サイズは小さいけれど、
朝イチから、なんとも幸先がいいな
なんて思っていたら・・・

スッポ~ン!

ありゃ~、ダメじゃん!

サイズ的には、
だいたい70~80といったところ。

まあ、それほど悔やむような
サイズの魚でないとは言え、
こういうのが、
リズムを崩す原因になるから
看過などできない。

やっぱり、前日の好釣果で
少し余裕をぶちかまし過ぎた
きらいもあったようだ。

こんなんじゃ、ダメ!

少し頭を冷やしてから、
念のためフックを交換。

手を動かしながら
緩んだ気持ちを引き締め、
集中力を高める努力を
この朝イチから
やらなければならない羽目に
陥ってしまったのである。

気を取り直して
おもむろにキャストを再開。

そして、悪夢のバラシから
10分も経たずして・・・

ヌ~~~

ワッシャーン!

ワッシャーン!!

ワッシャーン!!!

今度は、
かなり集中していたから
会心のアワセも決まった。

デカいのはデカいが、
前日の魚の比ではなかったから、
心に余裕をもって
ファイトをとことん愉しむ。

いや~、
このサイズの魚と
喜びをかみしめながら
ファイトできる幸せ。

ホント、
もうたまらんな。。

およそ2分程度のやり取りを経て、
無事、ランディングに成功。

このイトウだって
まったくもって悪くないサイズである。

ただ、足場が高いので、
上手く撮影するのは難しいだろう。

加えて、まだライトも足りないから、
仕方なく、ストロボ撮影で
証拠写真だけを残しておくことにする。

う~ん、やっぱ
パッとしない画像だよな・・・(笑)

念のためサイズを測ると
101cmあった。

あちゃ~、
メーターを超えているのに
それを感じさせないのは、
前日の魚のインパクトが強すぎたから。

このイトウだって、
軽く扱うのはもったいないほどの
見事なクオリティーを誇っていたのだ。

だから、その姿を
ちゃんと目に焼き付けてから
すぐに魚の回復に努める。

幸い、負荷をかけないファイトで
キャッチすることができたから、
サイズの割には
回復のスピードが早い。

もう少し酸素を・・・

なんて考えていたら、
ものすごい瞬発力を発揮して
一気に川の中へと帰っていった。

やれやれ、
バラシは余計だったけど、
今日も順調な滑り出しだぞ。

まだ、チャンスはあるだろう。

そう感じさせてくれるだけの雰囲気が
この日のフィールドには漂っていた。

手早くフックを交換し、
ラインを結び直す。

そして、すぐにキャストを再開した。

ヌ~~~~

ジィーーーーー

はっきりとした記憶はないが、
先ほどの魚をリリースしてから
次のバイトが訪れるまで
たぶん5分もかからなかったと思う。

コイツも
なかなかのサイズだ。

ロッドティップに伝わる感触からは
先ほどの魚と
同じくらいのサイズを予感させた。

バイトの感覚から
フッキングの心配はなかったので、
慌てず騒がず
魚との間合いを詰めていく。

最後の最後に
強烈な抵抗に遭ったけれど、
なんとか無事にネットイン!

うんうん、
コイツもイイ魚だ。

でもやっぱり、
近くにいい撮影場所はない。

仕方がないので、
今度はストロボを使わずに
2カットだけ撮影させてもらった。

サイズは、99cm。

っていうか、
ほんの数ミリほど
メーターには足りなかった。

ただ、それは全然問題ではない。

メーター3連発なら
確かに会心ではあるのだろうけれど、
それよりも1尾1尾の
イトウとの出逢いの方が大事。

何センチのイトウを何尾釣ったかより
素晴らしい魚に出逢えた瞬間にこそ
何ものにも代えがたいほどの
大きな価値があるんだよね。

やることはやったので、
すぐに蘇生を開始し、
リリースは無事完了。

う~ん、
今朝はもうやり切ったな。

この時点で、時計の針は
まだ午前4時半を指していた。

けれど、
朝の釣りはこれにて終了。

さっと片付けを済ませてから
冷え切った車に乗り込み、
これ以上ないほど
充実した気持ちが残っているうちに
他の川の様子を
見に行くことに決めたのだ。

だって、そのほうが
変な欲望に駆り立てられることもなく
冷静にフィールドを観察できる。

次にロッドを握るのは
夕刻でイイだろう。

さてさて、
他のフィールドの状況は
どんな様子なのだろうか???

次回に続く

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