vs. 潜水艦

前回からつづく

今シーズン初のイトウとの出逢いを
無事に果たせたことで
この日のタスクはすでにクリア。

気持ちも足取りも軽やかに、
その後もランガンを繰り返す。

けれども、
やはりバイトが続くような
フィールドコンディションではない。

気が付けば、
時刻はすでに午後6時半。

夕マズメのプライムタイムを
どこのポイントに賭けるか
僕は、ずっと思案していた。

日暮れまで
このままランガンを
続ける手もあるけれど、
翌日以降のことを考えて
別の場所を
見ておくプランも悪くない。

う~ん、どうしよう・・・

かなり迷ったのだけれど、
すでにイトウとの再会を
果たすことができたわけだし、
やはり別の場所を
見ておいた方がいいだろうと判断。

車で5分ほどの
イメージした場所へと向かった。

ところが、、、

そこには、
すでに先行者の姿が・・・

仕方がないので、
もう1ヶ所、
あらかじめイメージしていた
別の場所へと向かう。

がしかし、
移動した先にも先行者の姿が・・・

いかに平日といえども、
やはりこのシーズン、
アングラーの数が多いのは
仕方のないことだろう。

とは言え、
う~ん、困った・・・

さてさて、
どこへ行ったらいいべか???

いろいろと
想いを巡らせてはみたけれど、
日暮れまで時間がないから
あまり悩んでいる場合でもない。

東風が強いというこの日の条件と
過去の実績がシンクロするスポットを
必死に思い浮かべてみる。

う~ん、
何かあるとすればあそこかな?

直感的に
頭に浮かんだ場所へと車を走らせると
幸い、そこに先行者の姿はなかった。

入る場所が決まれば、
あとはできることをやるだけ。

足早に河畔へと向かい、
ラインとフックをチェックして
狙いのスポットへと
ルアーをキャストする。

その1投目、
ロッドティップには
イイ感じの引き抵抗が伝わってくる。

おっ、これは
ワンチャンスあるんじゃないの!?

・・・が、
期待に反し、何も起こらなかった。

じゃあ、次はこっち。

2投目は、
パッと見ではわからない
ちょっとした地形変化を狙い撃つ。

ヌ~~

ブゥゥゥゥ~~ン

ブゥゥゥゥ~~ン

ブゥゥゥゥ~~ン

ブゥゥゥゥ~~ン

ヨシ!

だけど、コレ、
絶対、やばいやつでしょ!?

ワッシャーン!

ワッシャーン!!

ワッシャーン!!!

大きなストロークで
首を振ること3回。

続いて奴は、
まるで潜水艦の如く
川底を這うように疾走をはじめた。

ジィー

ジィィィーーー

ジジジジィィィィィィィーーーーーーー

きつめに設定してあるドラグが
潤滑油でもさしたかのような勢いで
軽やかに悲鳴を上げている。

魚の動きに合わせて
僕も下流へと走るが、
目の前に
密度の濃いブッシュが迫る!

いや~、マズい!

仕方がないので、
とっさに水辺へと飛び降り、
ロッドティップを
ブッシュから引き離す。

ジィー

ジィィィーーー

ジジジジィィィィィィィーーーーーーー

こっちの努力なんて
まったくのお構いなし。

魚は、下る下る、
ドンドンと下る。

すでに軽く100m以上は
走られただろう。

うわ~・・・・・・

残りのラインが少ない。
スプールの金属面が
ずいぶんと透けて見えてきている。

このままやられっぱなしでは
座して死を待つのみ。

ならば、一か八か
ここで勝負をかけるしかない。

もう開き直って
一段一段、
少しずつドラグを締めていく。

ドラグを一気に締めてしまえば
ラインブレイクするか、
フックが伸びるのは間違いない。

だから、
ラインテンションを感じながら
そのギリギリの線を
微妙なさじ加減で調整していく。

すると、
ついに潜水艦の動きが止まった・・・

ヨシ!

これでイニシアチブは
こっちが握ったぞ!

これ以上ラインを出されないように
一気に反転攻勢を仕掛ける。

ここから、
一進一退を繰り返しながら
魚との距離を詰めにかかった。

寄せては出され、
寄せては出されの繰り返し。

それでも、
しばらく折れずに辛抱していると
さすがに奴も
疲労の色が濃くなってきたようだ。

とは言え、相手は結構な大物。
少しの油断が命取りになる。

我慢、我慢、プレッシャー、
我慢、我慢、プレッシャー・・・

慎重に、時に大胆に
奴にプレッシャーをかけ続けた。

そんな攻防が
もう10分は続いただろうか。

そして、
ついに奴がその姿を現した。

ウォー、デカい!

さすがに見たことがないほどの
ビッグサイズではなかったけれど、
簡単に出逢えるような
ちょいデカ程度の魚でもない。

すでに、奴には
激しく抵抗できるほどの体力は
もう残っていなかった。

こちらは、すでに
ウォーミングアップを済ませている。

形勢は、完全に逆転!

ロッドをゆっくりと煽って
プレッシャーをかけると
頭をこちらへ向けて
水面を滑るような体勢で
スーッとこちらに寄ってくる。

エイ!

お~、入った!

こうして、
10分以上にも及んだ潜水艦との格闘は、
ついに終止符を打つこととなった。

目の前に横たわったのは
メーターを軽く超える
ド迫力のイトウの魚体。

このボリューム感、
ちょっと久しぶりだな。

長さはもちろんだが、
胴回りの太さも尋常でない。

・・・っても、
なんかこの写真じゃ
凄さがあんまり伝わらないよね・・・(笑)

サイズを測ると
ジャスト110cm。

でもこの魚、
長さよりも太さ、
そしてパーツの大きさが魅力だな。

唇の逞しさなんかは、
滅多に拝めないほどのスゴイ迫力。

う~ん、この表情、
ホント、たまんねーな!

いつでも
簡単に出逢える魚じゃないから
その凛とした姿を
じわりじわりと
脳裏に刻み込んでゆく。

残念なことに
ファイト時間が長かったから
上手く撮影するには
光量が足りなくなってしまった。

いい写真は撮れなかったけれど
それはもう贅沢というもの。

価値ある潜水艦、
いや、でっかいイトウに
出逢えたことに感謝しつつ
じっくりと時間をかけて
蘇生措置を施してゆく。

魚がデカいこと、
ファイト時間が長かったこともあり、
蘇生時間は10分以上に及んだ。

それでも、時間をかけて
たっぷりと酸素を送り込んであげると
徐々に体力が回復してくる様子が
手に取るようにわかる。

イトウは、身体を激しく左右に
動かせるところまで回復すると、
最後は尾ビレをホールドしていた
僕の手を振り払うような勢いで
川の中へと姿を消していった。

うわ~
すでに辺りはほぼ真っ暗だ。

この時点ではまだ
アドレナリンが
ドバドバと放出され続けていたけれど、
ふと我に返り、
慌てて片付けを済ませて車へと戻る。

ふぅ~
これだからイトウ釣りはやめられない!

こうして、
今シーズンの開幕戦初日は
これ以上ないほどに
充実したものになった。

もう十分だという気持ちが大部分。
でも、もうちょっとだけ
至福の時を愉しみたい・・・

ちょっと厚かましいのだけれど
夢の続きがあることを祈りつつ、
この日は、早めに床に就く。

さてさて、
明日はどうなることやら・・・

次回へつづく

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