執着と焦り

もうほとんどあきらめていた
今シーズンの天塩川釣行。

毎日、欠かさずに
情報をチェックする中で、
わずかばかりのチャンスを見いだした。

週中に雪が降って
積雪は増えていたものの、
ラッセルできないレベルではなさそう。

さらに、ライブカメラで見る限りは
結氷している様子も見られない。

天気予報では、
土曜日がくもりで真冬日、
日曜日が雨かみぞれの
予報になっていたから、
快適とはいかないが
なんとか釣りはできそうな感触だ。

我ながら
この天塩川への執着心には
いささかドン引き気味のところもある。

とはいえ、そんな欲求を
無理やり抑え込んだところで、
何もイイことはない。

こうして、金曜日の夕方、
急遽、1泊2日の
緊急釣行を敢行することを
決意したのだった。

いつもよりやや遅めの
午前4時半に家を出発。

劣悪な路面状態を
想定しての判断だったが、
直前に少し雪が降ってくれたおかげで
ブラックアイスバーンを
走らなきゃいけない事態だけは
なんとか避けられた。

日本海側に出ると
事前にチェックしていたとおり
積雪はゼロ。

そんな好条件もあって、
いつもより30分程度
余計にかかったくらいで、
天塩川中流域に到着した。

国道脇から見た土手沿いの道は、
完全に雪に閉ざされ、白銀の世界に。

それでも、
積雪は30cm程度だったから、
車は無理でも
徒歩なら問題なく入れると確信し、
ちょっとだけ安堵する。

出発を遅らせたことあって、
時刻はすでに
午前9時を過ぎていたから、
時間的猶予はあまりない。

最初のポイントは、
ここのところ、先行者がいたり
水位が合わなかったりで
エントリーできていなかった場所。

さすがにこの状況になると
先行者の姿はないので、
今日こそは、
自分のペースで釣りをできそうだ。

プチラッセルして
河原までやってきた。

思ったより雪が軽かったので、
体力の消費は最小限で済んだ。

河畔に立つと、目の前には、
墨絵のような景色が広がる。

やっぱり、
この季節の天塩川が好き。

心底、そんなふうに思う瞬間だ。

川の流れに目をやると、
やや青緑がかった
この時期らしい水色をした
天塩川がとうとうと流れている。

うん、これならいける!

そう確信し、
一気にテンションが上がる。

慎重に足場を固め、
早速、キャストを開始する。

一投目・・・

何もなし。

二投目・・・

何もなし。

何やら、ちょっと様子がおかしい。

前週の感じなら、
せめてアメマスの反応くらい
あってもいいはず。

イイ感じで
ミノーは流れを捉えているから、
キャストごとに
緊張感は極限まで高まる。

けれど、何も起こらずに
ミノーはお帰りになる。

この後も、
丁寧に探ってみたけれど、
結局、魚からの反応は得られず。

早々にそのポイントを見切り、
次に予定していた
ポイントへと向かった。

次のポイント、
ここも見た感じの雰囲気は絶好。

期待感は高まる。

だが、ここでも
期待は裏切られる。

一度たりとも
生命反応を得ることができないのだ。

「何かがおかしい。」

この日は、
日中も氷点下だから
ガイドが凍る。

ガラコで対策を打ってはいるから、
だいぶマシにはなっているはずだが、
それでも完全な凍結防止は難しい。

それもまた、ストレスになる。

あれこれと違和感を抱え、
集中力も次第に低下。

気分を変える意味も込めて、
すぐに移動を決断した。

この時点で、
時刻はもうお昼過ぎ。

楽観的な予想を裏切られる
ここまでの展開に
少しばかり焦りの色がにじんできた。

強い執着心を持って
ここへやってきたからこその弊害。

本当は、この時期に
天塩川で釣りができるだけでも
十分に幸せなはずなのに・・・

さらに翌日もあるんだから、
必要以上に焦ることもないはず。

なのに、気持ちばっかり先走って
どうにもリズムが悪い。

さらに悪いことは重なるもので、
気温の上昇に伴って、
国道40号と周辺の道路の路面は、
スケートリンクの上に
水が浮いているような状態に。

時速30kmでも制御ができず
蛇行運転状態になってしまう。

そんな強烈なストレスを抱えながら、
なんとか次のポイントに
辿り着いた時には
もう、午後1時を過ぎていた。

そのポイントは、前週の日曜日、
スタートポイントに予定していたものの、
あいにく先行者がいて
エントリーできなかった場所。

期待度の高いポイントだったこともあり、
自然と歩きのテンポも速まる。

メンタルが前のめりになった状態のまま、
5分ほど歩いて、ポイントに到着。

このポイントも、
例外なく、雰囲気だけは抜群だ。

早速、キャストを開始するが、
やっぱり、魚からの反応はない。

前のめりになった
メンタルが影響してか、
なんとなく、リトリーブのテンポが
ズレているようにも感じる。

深呼吸したりしながら、
何とかリズムを整えようとするが、
どうにもうまくいかない。

そんなモヤモヤを抱えつつも、
角度を少しずつ変えながら
キャストを繰り返した。

すると・・・

コツ!

ついに、
この日初めてのアタリを捉えた。

アワセを入れると、
右へ左へと首を振っている。

サイズは小さいが、
イトウであることは間違いない。

が・・・

フッ

次の瞬間、テンションが消えた。

ア~、最悪。。

サイズは60くらいだったけれど、
この日初めての魚だったから
何としてもキャッチしておきたかった。

でも、このバラシは、
完全に自分のせい。

リトリーブのリズムが悪いから、
ショートバイトになってしまって、
バラしを誘発するという
最悪の循環だった。

そうは言いつつ、
起こってしまったことは、
もう仕方ない。

この日最後となる
次のポイントへと車を走らせながら、
何とか、メンタルを整えようと
必死にもがく。

その効果があったかどうかは
正直わからない。

それでも、なんとか次のポイントで、
“鱒”を拝むことができた。

1本キャッチしたことで、
リズムが整ったのか、
その後は、アメマスの連続ヒット。

中には、70cmクラスも混じり、
気休めにはなった。

あっ、気休めなんて
なんと失礼な!

アメマスだって、
北の大地の生粋のネイティブなんだ。

釣れすぎると、
だんだんとありがたみが
薄れてきてしまうのは事実。

けれど、そんな時こそ、
アメマスの価値を
ちゃんと見つめ直さないといけない。

だって、意識してそれをやらないと
知らず知らずのうちに
アメマスを
軽視するようになってしまうから。

そんなふうに、
何度も自分に言い聞かせる。

まあ、こんなふうに
魔がさしているようじゃ
全然ダメなんだけれどね。

結局、この日、
イトウに出逢うことは
できなかったけれど、
最後に、悪いリズムを
変えられたところだけは収穫。

なんてたって、
あと、もう1日ある。

悪いリズムのまま日をまたぐのと、
リセットボタンが押された状態で
次の日を迎えるのでは
全く意味が違うのだ。

さてさて、
明日こそ、今日とは違った景色が
見られるかな???

次回へ続く

スポンサーリンク
レクタングル広告(大)
レクタングル広告(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする