天塩川は裏切らない

(前回からつづく)

この日の宿は、枝幸町歌登。

ツルッツル、
テッカテカの道を1時間ほど走って、
「うたのぼりグリーンパークホテル」に
なんとか無事到着した。

このホテルのいいところは、
コスパが良くて、
ちゃんとした温泉があること。

2食付きで、
源泉が注ぎ込む炭酸泉にも
のんびりと浸かれて、
6,000円でおつりがくる。

急遽の釣り旅には、
これほどありがたいことはない。

翌朝は、ちゃんと朝食を食べて
7時半前に出発。

本当は、6時過ぎに
出発することも考えたけれど、
路面状況のこともあるし、
少しばかりリズムを
変えたかったこともあって、
そういう判断に。

おかげで、
道中は特にアブナイ場面もなく、
天塩川中流の目指すポイントに
無事到着することができた。

早速、準備にとりかかるが、
ここで焦りは禁物。

2日も続けて
同じ轍を踏んじゃいけない。
一応、大人なんだから・・・

今、釣りができる幸せを
ギュッとかみしめながら、
決して焦ることなく
河畔へと歩を進めた。

目の前を流れる天塩川は、
水位が大きく変化した様子もなく、
相変わらず、イイ感じを保っていた。

そのポイントは、
天塩川としては中規模の深瀬。

瀬頭からキャストを開始し、
徐々にステップダウンして、
瀬尻までを丁寧に探っていく作戦だ。

キャストを開始してから、
ステップダウンを続けること
およそ15m。

早くも、
この日最初のアタリを捉える。

残念なことに
ロッドのスペックに合う
サイズの魚ではなかったが、
ファイトの様子は
アメマスとはちょっと違う。

ピチャピチャピチャと
水面を滑るように寄ってきたのは、
マイクロイトウ。

推定、35cm。

これじゃあ
釣ったうちに入らないけれど、
「流れを変える」という意味では、
とても幸先の良い
魚であったのは間違いない。

この後も
ステップダウンを繰り返し
時折、ロッドが弧を描くが
正体はすべてアメマス。

この日は、
70cmにこそ届かないものの
それでも60cmを超えるサイズも
混じってくるから
集中力が途切れることはないし、
釣れればやっぱり楽しい。

アメマスのヒットを
心から喜べるのは、
気持ちに余裕がある証拠。

今シーズン最後になるであろう
天塩川釣行を
存分に楽しめている感覚もあって
とってもスッキリとした気分で
釣りに没頭することができていた。

瀬尻まで撃ち終わったので、
次のポイントに移動。

今度は、久しぶりに入る
ピンスポットだ。

この日は、
ここでヒットが集中する水位と
ドンピシャ。

鬼気迫る集中力で、
ピンスポットにミノーを撃ち込む。

けれども、
ここでは結局何も起こらなかった。

期待していただけに
当然、ガッカリ感もあったけれど、
決してメンタルは崩れない。

すぐに切り替え、
次のポイントへと向かう。

次のポイントは、
前日、60クラスのイトウを
バラしたところ。

鮮度の高いポイントに
向かっても良かったのだが、
リピートするだけの価値は
十分に見い出していた。

過去の経験に照らし合わせても
きっと、前日とは違う魚が
差してきているに違いない。

そんな確信めいたものが
あったのだ。

ポジションを決め、
早速キャストを開始する。

ところが、期待に反し、
魚からの反応はない。

岸際をよ~く観察すると、
前日よりも少しだけ
水位が上がっていることに気が付いた。

とすると、
魚のポジションにも
変化があるかもしれない。

“適水勢”を見極め、
やや上流側のポイントにキャスト。

コン!

期待どおり
魚からの反応が訪れた。

首尾よくフッキングには成功したが
ヒットした魚は
ギラギラとローリングしながら、
水面を滑るように寄ってきた。

ただ、小さい割には
尋常じゃない暴れっぷりだ。

スレ掛かりかと疑ってみるが、
そんなこともなさそう。

そのまま手元まで寄せてくると
なんてことない
30cmほどのアメマスであった。

ん!?

何だ、この違和感は。

ちょっと待てよ、
ローリングするアメマスの下あたりで
さっきなんか
黒い影が走らなかったか?

そう言えば、
最初は普通だったアメマスの動きが
突然おかしくなった気もする。

気のせいかな・・・
いや、気のせいなんかじゃない!

さっきのアメマスに
何らかの異変が起きたのは事実。

とすると・・・

次のキャストは
ちょっとばかり痺れた。

「目の錯覚じゃないとすれば、
きっと何かが起こる。」

そう、確信していたからだ。

ドン!

なんとも言えないワクワク感は
次のキャストで現実のものとなった。

想像していたほどの
ビッグワンがヒットしたわけではない。

でも、それは取るに足らないこと。

ちょっと妄想を膨らませすぎた
自分のことを嘲笑しながらも、
今年最後になるであろう
イトウとのファイトを胸に刻む。

まさに、至福の時間だった。

キャッチしたイトウは、
なかなかいい顔をしたオス。

サイズこそ、80cmを
ちょっと超えた程度だったけれど、
もはやサイズなんかどうでもいい。

浅瀬に定位させて、
何カットか撮影させてもらう。

魚体のバランスはいいし・・・。

パーツもしっかり・・・

イトウと言えば、
チャームポイントは
そのちょっとブサイクな表情。

なのに、コイツは
なかなかのイケメンじゃないか。

体力は完全に回復しているのに
なぜか、なかなか逃げようとしない。

仕方がないので、
水温0℃台の水に手を突っ込み、
早く流れに帰るようにチョイと促す。

「な~んだ、自由の身だったのか」

そう気づくと同時に、
イトウは身を翻して一気に急加速し、
天塩川本流の
トルクフルな流れへと姿を消した。

これで満足だった。
もう、お腹いっぱい。

でも、もう1カ所だけ
別のポイントに入る時間はある。

少し迷ったけれど、
せっかくだからと、
今年、好んでエントリーしていた
今シーズン最後の
ポイントへと向かった。

ありがたいことに
次のポイントでも、
1尾のイトウが反応してくれた。

サイズは60cmクラス。

まったりとした気持ちで
やり取りする相手としては
ちょうどいい。

間違いなく、今年一番、
肩の力が抜けた
心地よいファイトができた。

感無量とは、こういうことか。

ネットインすることもせずに
フックをさっと外し、
1カットだけブサイクな写真を撮って、
すぐにリリース。

琥珀色した天塩川の流れに
ゆっくりと帰ってゆくイトウを見送って、
今年のイトウ釣りは
ついに締めくくりとなった・・・。

あ~、やっぱり天塩川は裏切らない。
そして、最高だ!

あと何シーズン、
満足に通えるのかは
正直なところわからない。

だからこそ、
今を大切にしなきゃいけないと思う。

だとすると、
本当にこの日が
今年最後になるのか・・・?

たぶんそうなるはずだけど、
年末まで、道北地方の天気予報は
チェックし続けるんだろうな。

あ~あ~、
せっかくイイ感じで
締めくくったはずなのに
またいつもの病気が始まったぞ(笑)

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