秋燃ゆる屈斜路湖

北の大地の水族館に隣接する
「果夢林の館」さんに
「feat.鱒」を納品した後、
翌日の仕事に向け
さらに東へと車を走らせた。

この日の予定としては、
宿泊地の弟子屈町まで
とりあえず
移動さえしておけばOK。

だから、
途中の川で
恒例の道草を喰う算段も
もちろんあった。

ところが、、、

今の季節、
北海道の川は
落ち葉の量がハンパない。

無風ならともかく、
少しでも風が吹こうものなら、
川面は落ち葉で覆われ、
もはや釣りどころではないのだ。

この日は、
どちらかというと
穏やかな天気ではあったが、
どこの川を覗いてみても
色鮮やかな落ち葉が
密度濃くひらひらと流れ下っていた。

あちゃ~、
こりゃダメだ!
川の釣りはあきらめるしかないな。

そして、
なんだかんだ
辿り着いたのは屈斜路湖。

ここも
落ち葉の量がスゴイのは
あらかじめわかっていたけれど、
なんたってここは止水。

風下の岸沿いを避ければ、
まったく釣りにならないことはない。

けれども、唯ひとつ、
僕は大きな問題を抱えていた。

それは、
車に積んであるのが、
小渓流用の
ライトタックルだけだということ。

そう、
とてもじゃないが、
屈斜路湖で大鱒に対峙できるような
まともな準備が
整っていなかったのである。

ということで、
釣りはあきらめ……

いや、ほどほどにして、
屈斜路湖畔に広がる
見事な秋景色を楽しむことにした。

それにしても
今年の北海道は、
どこへ行っても紅葉が見事だ。

例年なら、
もうとっくに見頃を過ぎているはずの
ここ屈斜路湖でも、
いまだにこんな
燃えるような紅葉を
堪能できたりするんだから。

うんうん、
こりゃ景色を眺めているだけで
もう満足だな。

でもやっぱり、
水面の様子は気になる。

さざ波を照らす午後の日差しも
風情があって悪くない。

枯れ葉の浮く水面を
よ~く観てみると
カメムシも
たくさん浮いている。

だが、ウグイ以外の
ライズを見つけることはできなかった。

そうそう、
どうやら鱒たちは
あまり岸寄りしていないらしい。

客観的な視座から言えば、
それこそ無理してまで
釣りをするほどの
状況ではなかったと思う。

でもそこは、
やっぱり釣り人の性。

釣れようが釣れまいが、
とりあえずは
ロッドを振りたい。

その衝動を
どうしても抑えることができず、
広大なフィールドには
およそ似つかわしくない
ライトタックルを右手に握り、
まずは湖畔へと降りてみることにした。

ここ屈斜路湖において、
小渓流用のライトタックルで
できることと言えば、
どシャローに差してきた
鱒をターゲットにすること。

それくらいしか、
アブラビレを拝む手段は
持ち合わせていない。

だが、この湖の鱒は、
くるぶしくらいの深さしかない
ひたひたの水深のところでも
大胆な捕食行動を取ることは
よくわかっている。

だから
安易に湖には立ち込まず、
少し離れたところから
テレストリアルや小魚が溜まりそうな
スポットを狙い撃てば、
決してノーチャンス
ということはないだろう。

そんな感触は
十分に持ち合わせていた。

そして
その狙いは見事的中。

ライトタックルに
フローティングミノーを結んだ
ファーストキャストで
水面が激しく割れたのである。

まあ、ここからは
皆さんのご想像どおり。

静かな湖畔で
ひとり大捕り物劇が
不意にスタートしたのであった。

湖用のタックルなら
なんてことないサイズの魚。

でもそれを
ライトタックルで
ヒットさせたとなると、
それはもう大騒ぎなのだ。

それでも、
ここは止水なので、
慌てずにファイトすれば
ランディングには持ち込める。

そんな感触はあったので、
タックルと鱒とのミスマッチを
むしろ心の底から
楽しんでしまっていたかもしれない。

キャッチしたのは、
こんな秋色をしたアメマス。

サイズは50cmちょっと。
屈斜路湖では、
ほぼアベレージと
言ってもいいサイズだろう。

それでも、
ライトタックルで
ファイトする相手としては
十分すぎるサイズの魚。

今日はこの一投、
この一尾でもう満足だな。

ただ、このアメマスは
産卵を控えたメスだったので、
ちょっと申し訳ない
気持ちにもなってしまった。

通常、このやり方で
ヒットしてくるのは、
ニジマスか
オスのアメマス。

でも、やはり
100%の確率というわけではない。

インレットの直撃を
意識的に避けていても、
得てして
こういう誤爆もありうるのだ。

ということで、
サッと写真を2枚だけ撮って、
すぐにリリース。

肉体的なダメージは
それほどでもないはずだが、
モタモタしていたら、
精神的なストレスが
どんどんと蓄積してしまうから。

秋の湖で釣りをやる以上、
絶対に避けられないアクシデント。

とは言え、
やっぱりモヤモヤが心に残ったのは
言うまでもない。

ということで、
この日の釣りは
たった一投で終了。

あとは
仕事をしっかりとこなして、
時間が空いたら、
ちょっとだけ釣り。

そんなこんな
妄想を膨らませつつ、
そそくさと
この日の宿に引き上げたのであった。

(次回に続く)

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