波乱の道南遠征 DAY_2

(DAY_1からつづく)

初日の晩、
明日は日本海側を
そのまま南下すべきか、
それとも太平洋側に戻って
新規開拓に精を出そうかと
私はしばし迷っていた。

そしてその夜、
なんとも不吉な
夢を見ることになる。

夢に出てきたのは、
高速道路上でよく見かける
あの緑色の道案内表示。

そこに書かれていたのは、、、

「直進、死亡事故」

は???

正直、こんな
不吉な夢を見たのは
生涯、これが初めてだった。

元来、
占いなんて一切信じないし、
神さまや仏さまに
願いことをする機会も
まったくない私ではあるが、
さすがにこの夢にはマイッタ。

翌朝、目が覚めた時、
「こんな夢が現実になるはずはない」
と信じつつも、
やっぱり穏やかな
気持ちでいられなかったことは
もちろん言うまでもない。

こうなってしまった以上は
仕方がない。

日本海側の国道を
直進するのは避け、
まずは太平洋側に出て、
新規開拓に精を出すという
プランBを選択。

そしてそれは、
荷物をまとめて宿を出発し、
日本海側を通る
主要国道に出る時のことであった。

国道に出る際、
停止線で一時停止して
おもむろに右手に目をやると
一台のバスが
かなりのスピードを出して走ってくる。

そのバスをやり過ごす際、
手書きのような
文字で書かれた表示が
チラッと目に入った。

そこに書かれていたのは
「バトミントン」という文字。

ああなるほど、
近所の学校が
部活で遠征にでも行くんだな。

その時は、
シンプルにそう思った。

ただ、学生を
乗せたバスにしては
ずいぶんとスピードが出ていて
しかも運転が荒っぽい。

私も海沿いの国道を左折して
バスのあとを追う形になったが、
一向に追いつく気配がないまま、
雲石峠へと向かう分岐に
到達してしまったのである。

そうか、
あのバスは
乙部方面に直進したんだな……。

その時は、
そんなふうに
ただ漠然と
思っただけだったのだが、、、

その後、
そんな朝の出来事はすっかり忘れ、
太平洋側に出て
渓の新規開拓に精を出すことに。

そして、
この日最初に訪れた河川は、
函が続く渓相が特徴的な
こんな様子の川。

流れる水は
どこまでも澄みわたり、
いわゆる北海道っぽさを
まったく感じさせない
ナメ状の渓であった。

この渓で
最初にヒットしてきたのは、
意外にも
サイズのいいヤマメ。

といっても
せいぜい25cm程度であるが、
北海道でこのサイズは
十分に良型と言っていいだろう。

薄暗い渓だけに
もっと黒ずんだ魚体をしていても
よさそうなものだが、
さにあらず。

いかにも
コンディションが良さそうな
ビカビカの
肌艶をした個体であった。

次に訪れた渓では、
この遠征で唯一、
生命反応が皆無であった。

あくまでも
見た目の印象ではあるが、
どうやらクセのある
温泉水が流入しているらしく、
まるで鍾乳洞の中を
歩いているような気分。

うんうん、
新規開拓では
こういったことも
日常茶飯事のこと。

これもまた、
いい経験と言えばそうなのだろう。

次に訪れた川で
ヒットしてきたのは、
おなかが実に鮮やかな
オレンジ色をした
このエゾイワナ。

ここも
水の印象はあまり良くなくて、
実際、魚影も極端に薄かったが、
こんな超美形魚が
不意に飛び出してくるのだから
やっぱり新規開拓は愉しい。

そして、
次に訪れた川が凄かった。

地形や川の規模など
決して期待度が高いと言える
河川ではなかったが、
実はこんなところにパラダイスが
残されていたりするのだから
やはり自然の力は偉大だ。

一投目から、
この魚が出てきて、、、

二投目には
スマートな魚体ながら、
この尺イワナがバイト。

そして極めつけは、
下手をすると見逃してしまいそうな
小さなスポットから飛び出してきた
この大イワナ。

こちらも
スマートな魚体ではあるが、
いかにも「小渓の主」という
風情を醸し出していた。

サイズも、
あともう少しで40cmという
貧相な流れには
およそ似つかわしくないサイズ。

ヒレはどれも巨大で
長い年月、この厳しい環境の中で
生き延びてきたことが伺える
超ハイクオリティな個体だったのだ。

このエゾイワナを最後に
この日の探検は終了。

少し走って宿に入り、
ビジネスプランの食事を満喫する。

宿のHPには
「少し軽めの夕食」と書かれていたが、
前浜で揚がった
地魚の刺身が食べられるんだから
こんな贅沢はないだろう。

そして、
予期せぬ衝撃が走ったのは、
温泉に浸かって
のんびりと疲れを癒し、
部屋に戻りおもむろに
テレビをつけた時のことだった。

その時、
流れていたニュースがコレ。

そうだ、
間違いない!
朝、目前を走って行った
あのバスだ。

もちろん、
その瞬間、思わず
固まってしまったのは
言うまでもない。

なにより
不幸中の幸いだったのは、
これが「死亡事故」には
至らなかったことだろう。

それでも、
私はひどく動揺してしまった。

もし、
あのバスの後ろを追うように
日本海側の国道を
南下して行っていたら……。

そう考えただけでも
本当に恐ろしい。

私はこれまで、
霊感とか神のおぼしめしとか
そういったものとは
いっさい無縁だったはずなのに……。

う~ん、
これで今年に入って
3回目の命拾い。

いやはや、
悪運が強いと言えばそうだが、
正直、穏やかな
気持ちでいられるはずはない。

そして、そして、、、

心がザワつく出来事は、
なんとこれでは
終わらなかったのである。

実際に人身事故が起こってしまったという背景から、この話題に触れるべきかかなり迷いましたが、
ありのままを表現することを大切にするこのブログの趣旨に鑑み、包み隠さず書き綴ることとしました。
事故に遭われた皆様には、この場をお借りして心よりお見舞い申し上げます。

(DAY_3に続く)

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