ラストエントリー

週明けの月曜日、
先週同様、夜中の道央道を北へ向かう。

この日は気温が高く、
深川JCまでの間は路面凍結もなく、
ストレスも少なかったのだが、
深川留萌道に入ると景色が一変。

テカテカのブラックアイスバーンを
低速で恐る恐る進み、
やっとの思いで、海沿いまで出た。

日本海側のオロロン街道は、
分厚い雲に覆われていたが、降るものは雨。

ここからは、快適とまではいかないけれど
順調なドライブで天塩川に到着した。

この日、明るい時間は
すべて釣りに費やせる予定だ。

週間天気予報を見ても、
今週末から真冬並みの寒波が
北海道にやってくるようだし、
ここから約2週間は
いろいろと予定が詰まっているから、
この日が、今年最後の
天塩川になる可能性は高い。

毎年、そんな日は、なぜか不思議と
自然体でフィールドに向き合える。

イトウに出逢えればもちろん最高だけれど、
12月の天塩川で1日を過ごせることが
何より、うれしいのである。

積雪状態の天塩川は、
アプローチの安全性や車の駐車場所の関係で
エントリーできるポイントが限られる。

まずは、おそらくエントリーできるであろう
中流域の4カ所を巡り、
もし、そこでスコアが出たら
下流域に移動して一発を狙う。

そんな算段であった。

早速、エゾシカが刻んだ足跡に沿うように
目指す1カ所目のポイントへと向かった。

この日は外気温が高いから、
霧が発生して、
水辺は春みたいな雰囲気となっていた。

天塩川の流れはというと、
うす緑色した水色で雰囲気は上々だ。

だが、期待に反し、
そこでキャッチしたのは
45cmクラスのアメマス1尾だけ。

前週のアメマスパラダイスもそこにはなく、
何となく生命感に乏しいことが
やや気がかりだった。

続く2カ所目、
そこでも、アメマスを1尾追加したのみ。

すぐに、3カ所目のポイントに向かう。

ここは、ウグイの群れを追って
大型のイトウが入ってくるポイント。

イトウが居れば勝負は早いし、
ウグイがヒットすれば、
イトウが入っていないとすぐに判断できる。

ファーストキャスト・・・

水温が1℃台だから、
イトウのステイしていそうなラインを
ゆっくりと丁寧にトレースする。

すると・・・

ギュー

まあ、そういうことでした・・・。

そして、中流域最後の4カ所目のポイント。

ここは、過去の実績はあるのだけれど、
今年は、未だイトウをキャッチしていない。

それでも、相対的に考えると、
キャッチできるとすればここかな
という期待も持ちつつ、
重たい流れにルアーを放つ。

魚からの反応は、
あっけないほどあっさりと
その1投目で訪れた。

独特のストロークの大きい首振りは、
アメマスではないことを教えてくれる。

サイズ的にはさほどじゃないけれど、
本流のトロ瀬でヒットしたイトウは
簡単に音を上げたりはしない。

心地よいドラグ音を響かせること数分、
無事にランディング。

サイズは83cmと、決して大型ではなかった。

それでも、それぞれのパーツが
凛とした雰囲気を醸し出している。

普段の80cmクラスとは、
私にとってちょっとだけ違う意味を持つ魚。

なにはさておき、
おそらく今年最後になるであろう天塩川で
美しいイトウに出逢えたことは
本当にうれしい。

太くて、強くて、美しいイトウであった。

イトウをリリースしてから数投後、
モードの切り替えもままならないうちに
次の衝撃が不意に訪れた。

サイズは下がったようだが、
流れに乗ったイトウは
なかなかのファイトを見せる。

ほどなくして無事キャッチしたイトウは
一応計測すると69cm。

背中の黒点がはっきりしていて、
なかなか特徴的な個体であった。

さらに魚体の大きさと比べて、
胸ビレが異様にデカい。

サイズの割に
いいファイトを見せてくれたのは、
この発達したヒレが
原動力になっていたのかもしれない。

これで、ようやく、
中流域でスコアを出すことに成功。

けれど、この時点で
すでに時刻は13:40を回っていた。

12月の道北を侮るなかれ。
16:00を過ぎる頃には、もう真っ暗になるのだ。

前がかりになった心をなだめつつ
下流域に向かって、
濡れた路面を慎重に車を走らせる。

残された時間、大型の一発に賭け、
下流域のピンスポットを
ランガンしていくことにした。

1カ所目、
1投目からドカンと来た。

この日の天塩川には
徐々に雪代が流入して、
流れの勢いを増していたこともあり、
このイトウのファイトには
随分、てこずらされた。

それでも、障害物をかわし、
何とか、ランディングに持ち込んだ。

サイズアップとはならなかったけれど、
ちょっとワルそうな顔をした74cm。

イイ感じの撮影場所もなく、
数カット撮影させてもらいすぐにリリース。

すぐに次のスポットへ向かう。

2カ所目、空のライトは
かなり控えめなトーンにまで下がり、
ここが最後のポイントと心に決める。

1投目、またしても
すぐに魚からの反応があった。

手元に伝わる感触は
間違いなくイトウなのだけれど
そのパワーはかなり控えめ。

それでも、いろいろな思いが頭をよぎり、
少しだけ慎重にランディングする。

一発狙いのこちらの思いとは裏腹に
さらにサイズダウンの50cm台後半。

それでも、下流域らしい
銀ピカの魚体には癒される。

私にとって、
今年最後のイトウとなるであろうその魚は
撮影中、身をよじらせて
枯草のわずかなすき間をすり抜け、
天塩川の流れに帰っていった。

「やり切った」

結局、大型のイトウに
出逢うことはできなかったけれど、
心の中は、やり切った充実感で
十分に満たされていた。

そこに棲む多くのイトウたちに
感謝の念を抱きつつ、
しばし、暗闇迫る天塩川の
広大な流れを見つめる。

年1回の自分なりの儀式を終え、
フィールドを後にした。

次は来年。

厳しい冬を越し、
またこのフィールドに立てる日を
今から心待ちにしたい。

道外にお住いの皆さんも、
いつか是非、
この天塩川という素晴らしきフィールドに
足を運んでいただきたいですね。

強くて、賢くて、美しいイトウが
きっと皆さんを迎えてくれることでしょう。

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