天塩川水系をロケハン

(前回からつづく)

翌朝、せっかく
上川町にいるのだからと、
石狩川水系の探索を
もう少しだけ続けてみることにした。

はじめに入ったのは、
ある程度、水量のある支流。

ロケハンだから
予備知識はゼロなのだけど、
雰囲気的には、
いかにも、ニジマスと
オショロコマの渓流といった趣だ。

エントリーしやすい場所から入渓して、
少しの距離を釣り上ってみたが、
魚からの反応はない。

それでも、
やっぱり北の大地の秋は
本当に美しい。

黄色やオレンジに色づいた木々を
朝の陽ざしがライトアップした様は、
見事というほかない
まさに圧巻の光景であった。

ちょうど、激流が形成する淵のところで
オショロコマらしきチェイスが
1回だけあったのだけれど、
バイトには至らず。

その渓をあきらめ、
事前に地理院地図で調べておいた
別の小渓流に移動することにした。

移動した先は、
川幅1m足らずの小渓流。

もうここは、
完全にオショロコマの
聖域であるに違いない。

少しだけ藪コキをして、川に出る。

ちょっとした深みにルアーを投じると
20cmほどのオショロコマが
すぐに反応してくれた。

やや薄暗い渓流の魚だけあって、
体色もやや濃い目。

前日のオショロコマと比べると
少しだけフォトジェニックにも映る。

すぐにリリースして、
同じポイントにルアーを投じると
2尾の小型オショロコマが
同時にチェイス。

サイズアップを望めないのなら、
この渓流を、
必要以上に叩く意味はないと判断し、
そそくさと脱渓して車に戻る。

この時、
時間は、すでに9時を回っている。

これ以上、石狩川水系にとどまっていては、
天塩川水系のロケハンがままならない。

そう判断し、天塩川水系に向けて、
大移動を敢行することにした。

前日、予定外ではあったが、
上流域の探索を終えていたこともあり、
まずは、音威子府あたりまで
休憩もとらずに一気に北上する。

天塩川温泉に向かう道に架かる橋から
天塩川の流れをのぞき込むが
やっぱり、本流にいつもの迫力はない。

今回はロケハンだから、
本当は、この界隈の未踏の地に
足を踏み入れるプランもあった。

けれど、きっと徒労に終わるのだろうと
半ば勝手に決めつけ、エントリーを断念。

ちょっと小腹が減ったので、
その真っ黒な見た目で
全国に熱烈なファンを持つ
"音威子府そば"でお腹を満たし、
その勢いに任せて
一気に下流域まで車を走らせた。

到着したのは、
ほとんど流れもない下流域の本流。

ロケハンである以上、
勝手知ったるポイントに
エントリーしても意味はない。

このあたりは、
完全にイトウのテリトリー。

もう少し秋が深まると、
外道としてアメマスが
ヒットすることもしばしばあるが、
今の時期、もしヒットするとすれば
イトウの確率が圧倒的に高い流域だ。

もちろん、ウグイという外道の存在も
忘れちゃいけないのだけれど・・・。

とりあえず、
目の前に広がる広大な景色の中、
めぼしい変化を見つけては
ピンポイントに
ルアーを撃ち込んでいく。

およそ1時間ほど
ゆっくりと釣り下ってみたけれど、
魚からの反応はない。

まあ、それもそのはず。

水色もクリアで、
カレントも弱いとなれば、
バイトがないのも
当然の結果と言える状況であった。

カキ~~~~~~ン!?

ウィ~~ン!

ウィ~~~~~ン!!

ウィィィィィィ~~~~~ン!!!

不意に訪れた強烈な衝撃に
その時は、一瞬、何が起こったのか
全く理解できなかった。

少なく見積もっても、
軽く50m以上は
一気にラインを引き出されただろう。

そのスピードは本当にすざまじく、
イトウのものではないと
すぐに確信できるものだった。

ドッボッ~~~ン!

ドッボッ~~~ン!

ドッボッ~~~ン!

今度は、スーパージャンプ3連発。

ただ、全身をあらわにしたその姿は、
想像していたような、
驚愕の巨大魚ではなかった。

今、自分の目に飛び込んできたのは、
間違いなくニジマスだ。

大きいと言えば大きいが、
パッと見、60cmクラス。

もう少し大きかったとしても、
70とか80といった
サイズの魚でないのは明らかだった。

昨日も、石狩川本流で、
近いサイズの魚をキャッチしているから、
目算が大きく外れていることはないだろう。

ただ、ここは、
ニジマスの生息する
流域なんかじゃないはず。

だから、この時点でもまだ、
目の前にある現実を
冷静に受け止めることはできていなかった。

その後も、殺人的なファイトが
しばらく続くこととなった。

が、周囲にファイトの邪魔になる
障害物がなかったことも幸いして、
魚の暴走を制御することに、
なんとか成功。

慎重にランディングした魚は、
60cm台半ばのニジマス・・・

その時は、そうとしか思えなかった。

でも、ちょっと待てよ!?

見た目からだけじゃ判断できないけれど、
もしかして、これってスチールヘッド??

サイズ以上の
爆発的なファイト。

ニジマスが生息するとは
およそ考えづらい流域。

銀ピカに輝くその魚体。

もしかしたらスチールヘッドかもと
疑ってみる要素は十分だ。

でも、北海道の川に
スチールヘッドが遡上してくるのは、
もう少し季節が進んでからのはず。

さらに、この時期は、
河口近くにシロザケを捕獲する
網も設置されているから
海から遡上して来るには障害も多い。

また、かつて日高地方の川で
キャッチしたスチールヘッドは、
もっとギンギラギンに輝いていて、
一部のウロコが
簡単にこぼれ落ちるくらいだった。

確かに、一升瓶みたいな
体型はしているけれど、
長さは60cm台半ばと
それほど巨大なサイズではない。

そんなもろもろの要素も考え合わせると
スチールヘッドと断言するには
いかにも根拠が弱いのである。

じゃあ、
いったいコイツは何者なんだ???

スチールヘッドなんかじゃなくて、
ただのニジマスかもしれないし、
もしかすると、河口域まで
一旦下ってから遡上してきた
疑似銀毛の個体なのかもしれない。

でも、そのすべては
あくまでも完全に想像の世界。

ちょっと考えたところで、
明確な答えなど出るはずがない。

まあ、いい。
ミステリアスなままにしておこう。

むしろその方が、
天塩川で起こった出来事らしいとも
言えるんじゃないだろうか。

そう心を整理し、
たっぷりと時間をかけて蘇生させた後、
その魚をリリース。

偶然のヒットだったし、
ちょっと充実感とは違うんだけど、
やっぱりスゴイ鱒を
目の当たりにした瞬間は
いつでも過度に興奮するものですね。

昨年、羊蹄山麓でも
ミステリアスな鱒ちゃん
キャッチしたのだけれど、
今年のヤツは、
全く違う意味でミステリアス。

何が起こるかわからない
北の大地のトラウトフィッシングは
言葉では言い尽くせないほどに
本当に愉しいものだなと
改めて実感することができました。

なにはともあれ、
北海道のフィールドに心から感謝です!

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