嵐の前の悪あがき

今週は、仕事の関係で
どうしても道北地方へ
出かけなければならない。

いつもなら
これ幸いとばかりに
抜け駆けするタイミングを
推し量るところ。

けれど、週末に
嵐がやってくる予報が出ているから、
どうしても、週の前半に
出張の予定を組まざるを得なかった。

すなわち、イトウの川の水況に
気を配る余裕などは
一切ないということ。

あとは、
いかに効率よく時間を使えるか。

ワークライフバランスを
突き詰めることだけに注視して
夜の高速道路をひた走る。

おっさんのカラダには
かなり堪えるのに
わざわざ夜駆けする理由は
もちろんただ一つ。

何はともあれ、
まずは仕事前に
ひと勝負してやろうとの魂胆だ。

そうそう、
今週末は、札幌で嵐のライブがある。

おやじギャクの使い手には
またとないシチュエーションだな。

まあ、笑えない事態にだけは
ならないように願うばかり。

それはそうと、
やっぱり北の大地に
非日常感が漂っているのは間違いない。

昨年も経験したことだけれど、
ローカルラジオ局がかける音楽の選曲に
少々偏りがあるのは織り込み済み。

今年は、ちょっとした非日常を
楽しんでやろうくらいの気持ちで
のんびりとドライブを楽しめたと思う。

現地に到着したのは
朝7時過ぎのこと。

この日は、時間があまりないので
期待値の高いワンスポットに
一球入魂の戦略を採る。

ポイントへと向かう道は
先週末に降った雪に覆われたまま。

ということは、
少なくともここ数日は
アングラーが入っていないということ。

そのまま車を進め、
いつもの駐車スペースに車を停めた。

エッ!?

次の瞬間、
わが目を疑うような恐ろしい光景が
目に飛び込んできたのであった。

入渓点に目をやると、
雪上には、大きな足跡が点々と・・・

雪が降った先週末以降、
車がこの場所に入っていないことは
間違いない。

もちろん、徒歩でアプローチする人が
いるような場所でもない。

ということは・・・

もう頼みますよ、
そろそろ冬眠の季節だってば、
でっかいヒグマさん!

最強の先行者がいたんじゃ
どうしようもないので、
そのスポットをキッパリとあきらめ、
次に期待値の高いポイントへと向かう。

あいにく、天塩川の上空には
分厚い雲が垂れ込め、
時折、勢いよく雨粒が水面を叩きつけた。

とてもじゃないが
心地良さとは無縁の日和。

それでも、
十分に釣りが成立する水況を確認し
ひとまず安堵する。

早速、イトウの定位する
ポジションをイメージしながら、
ルアーを順繰りに撃っていく。

キャストを始めてからおよそ1時間。

期待を込めて
プレゼンテーションを続けてみるものの、
ルアーに接触してくるのは
流下してくる枯れ葉ばかりであった。

まあ、この時期、
枯れ葉にストレスを感じながらの
釣りを強いられるのは仕方のないこと。

残された時間が少ないこともあったから、
なんとか集中力を保ったまま
キャストを続けることができていた。

ヌ~~~~

不意に鈍重なコンタクトが訪れたのは、
ミノーが、トロ瀬の流心を通過する
まさにその瞬間のことであった。

ジィー・・・ジィー・・・

天塩川の重たい流れを
味方につけたイトウは、
トルクのあるファイトで対抗してくる。

けれど、首振りのストロークは
さほど大きくは感じない。

自分の立ち位置が
動きづらい場所だったこともあり、
しばらく行ったり来たりを繰り返す。

それでも、相手のサイズが
大きくないこともあって、
無事、ランディングに成功。

コンディションの良い
天塩川の秋イトウであった。

サイズ的には、
80cmにちょっと届かないくらい。

それでも、短時間のエントリーで
姿を見せてくれたことに
感謝の気持ちしかない。

澄んだ瞳や・・・

立派なヒレを
観察させてもらいつつ・・・

じっくりと時間をかけて
回復を図ってからリリース。

勢いよくカラダを翻し、
トルクフルな天塩川の流れに
飛び出して行った。

「もう少し時間がある。」

嵐の前の悪あがきに、
一切の妥協は必要ない。

ヌ~
ブンブンブンブンブンブン

さらに数歩ステップダウンした場所で
小気味よいアタリを捉えた。

だが、明らかにイトウのそれとは違う。

寄せてくると、やっぱりアメマス。

外道ではあるが、
サイズも悪くないし、
何より魚体も美しい。

11月の天塩川らしいこの展開に
充実感はMAXに達した。

さすがに、もうタイムアップ。

慌てて片付けを済ませ、
現場へと急ぐ。

さてさて、
今日中に仕事を終わらせることは
できるかな?

心の中で、そっとつぶやく。

邪念まみれの自分自身に
いつものように
冷たい視線を浴びせながら。

ただ、忘れてはならないことがある。

そう、嵐の足音は
確実に近づいているのだ。

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