2019 釣り納め DAY2 前編

DAY1 後編 からつづく)

前日の晩、
-15℃の冷え切った寒空の下、
露天風呂に浸かり
翌朝の作戦を練った。

出した結論は、
前日の夕方と同じ場所に
エントリーするというもの。

確かに、
なんともベタな結論ではある。

けれど、もちろん
その結論に至るには
自分なりの明確な根拠はあった。

それは、翌朝の冷え込みは厳しく、
深場隣接のスポットでないと
勝負にならないということ。

もちろん、
尾札部川インレットなら
その条件に
ジャストフィットすることは
いまさら言うに及ばず。

十分わかってはいるけれど、
進んでその選択をすることは
やっぱりありえない。

そうなると、
消去法で残ったスポットは3カ所。

さらに風向きや
他のアングラーとの
バッティングの可能性を考慮すると、
結局、1カ所しか
選択肢が残らなかったのである。

【DAY2】

翌朝、
宿を出る時の気温はー14℃。

屈斜路湖周辺地域の
年末の冷え込みとしては、
これで、だいたい平年並みだろうか。

ポイントへ向かう道中、
気温は-10℃からー15℃の間を
上がり下がりしていたのだが、
目的地に着いた時は、ー13℃。

概ね、前日の想定どおりと言える
気象条件ではあった。

まだ薄暗いうちに準備を済ませ、
獣道を辿って湖岸に出る。

すると、目の前には
前日よりも穏やかな
屈斜路湖の景色が広がっていた。

これも想定内とは言え、
フィールドの状況としては
あまり歓迎すべき材料ではない。

こうなると、
厳しい釣りを強いられることは
避けられないだろう。

残念だけど、この日の朝は、
やや悲観的な近未来を予想しながら、
キャストを開始することと
なってしまったのである。

キャストを開始すると、
未来予想図は
さらに悲観的なものとなってしまう。

どちらの方向にキャストしても、
前日と同様に、
引き抵抗を感じる場面が
全くなかったのである。

おまけに、
この日は近くに潮目も存在しない。

こうなると、
湖の釣りでは、もうバンザイ。

バイトを得られる感触がないまま、
ただひたすらに
時間だけが経過していった。

そんな退屈な時間が続く中、
ひとつだけハイライトがあった。

前年は拝むことができなかった
美しい日の出のシーンを
この日はしっかり見られたことだ。

釣れる魚も素晴らしいけれど、
この美しい景色も
冬の屈斜路湖の魅力のひとつ。

十勝川の河口で見る
ジュエリーアイスよりも
こっちの方が
よっぽど美しい景色だと
個人的には思っている。

だって、屈斜路湖の景色は
まったくの自然の造形美。

そこに、人の手は
一切加えられていない。

一方、あちらは
自然と人間の共同作業で創り上げた
いわば人造の美。

もちろん、
美しい景色には違いないんだけれど、
なんたって、
砂にまみれになった氷の塊に
わざわざ持参した
熱いお湯をかけないと
創り上げることはできない
美しさなんだからね。

あーあー、
またしても、
毒を吐いてしまった。

ついつい
話が横道に逸れるのは悪いクセ。
う~ん、反省。。

何はさておき、
話を屈斜路湖に戻そう。

期待感の薄い中、
黙々とキャストを繰り返していた
カミさんの方には、2回ほど、
魚からのコンタクトがあったらしい。

だが、バイトが浅いのか、
うまくフッキングに
持ち込めなかったようだ。

私の方はと言えば、
ここまでずっとノーバイト。

釣りを始めて
もう3時間になろうとするのに
どこまでも延々と
何もない時間が続いていた。

ここ屈斜路湖で、
3時間何もないなんて、
もしかしたら
初めての経験かもしれない。

湖の状態が良くないという
ネガティブな見立ては、
残念なことに、
どうやら的を射ていたようである。

ずいぶんと長い時間、
鱒からのコンタクトがなかったので
集中力の限界も
すぐそこまで迫っていた。

あとは、
いつ一時退散の決断を下すかだけ。

そのタイミングを
見極めようとしている時、
ようやくとなりで
カミさんのロッドが曲がる。

少しのやり取りの後、
キャッチしたのは
50cm台半ばのアメマス。

この時期にしては、
コンディションも良好だ。

前日飽きるほど数を釣った
アメマスではあったが、
この日は、初フィッシュ。

自分でキャッチしたわけじゃないけど、
アブラビレを拝むと
沈みかけた気持ちが一気に晴れるのは
何とも不思議な釣り人の性である。

だが、カミさんが
このアメマスをキャッチした後も
少しの間、沈黙は続いた。

さすがに集中力も限界を迎え、
「あと10投」コールをかける。

人間というのは不思議なもので、
ものごとに終わりが見えると
高い集中力が戻ってくることがある。

この時は、
まさにそんな状態だったと思う。

フレッシュな
命を吹き込まれたルアーは、
魚目線で見ると、
それまでとは全く別のものに
見えるのかもしれない。

ゴス・・・

ゴスゴス・・・

ドン!

3時間を超える長い沈黙が
ついに破られる瞬間が訪れたのだ。

それは、
「ラスト10投コール」から
4投目の出来事だったと思う。

ジィーーー

ジィーーー

ちょっと控えめな音色を奏でながら、
スプールから
ゆっくりとラインが放出されてゆく。

ハイシーズンの
スピード感こそないものの
ヒットした魚は、
広大な湖を縦横無尽に走り回っている。

そのファイトスタイルは、
今、つながっている相手が、
本命のターゲットであることを
はっきりと示唆していた。

時折、波間に見え隠れするその魚体は
LLサイズを予感させるもの。

そう簡単に
ランディングまで持ち込むことは
できないだろう。

ただ、フッキングには
さほど不安はなかったから、
変な胸騒ぎがすることはなかった。

ラインブレイクの
リスクを回避するため、
時折、ロッドティップを水中に突っ込み
ガイドの氷を湖水で融かしながら、
慎重に魚との距離を縮めていく。

ネットに気づいた魚に
最後、強烈な抵抗にあったが、
何とかネットインに成功。

ネットの中をのぞき込むと
そこには、
体高のある見事なスタイルをした
イケメンのニジマスが
おとなしく横たわっていた。

サイズを測ると63cm。
今度こそ、LLサイズに到達した。

50cmクラスの
ニジマスが多い屈斜路湖で
LLサイズは
意外と貴重な存在。

60超えとなると、
備わった風格は、もはや別物だ。

尾びれの大きさも、ケタ違い・・・

若い頃、いけすの中で
生活をしていた痕跡を残す一方、
この広大な湖を泳ぎ回っていると
見事なまでに
尾ビレは再生するのだということを
私たちに教えてくれている。

大きさだけでは
測れない魚の価値が
いろんなところに
隠されているんじゃないかな。

このニジマスをリリースして
2日目、午前の部は終了。

最後の最後に
イイ魚をキャッチできたから、
それまでの苦労も
全部、この1尾で吹っ飛んだ。

まずは、
素晴らしい鱒に出逢えた喜びを
じっくりとかみしめる。

ただ、その余韻は
あいにく長くは続かなかった。

なんせ、もらっている条件に対して、
本命からの反応が
極端に少なく感じられることは
なんとも気がかり。

さらに、
フィールドコンディションは
これから悪化の一途をたどると
考えられるわけだから、
喜んでばかりもいられない。

先回りして、
何とか効果的な
打開策を見つけなければ・・・

綱を渡っているような現状を
なんとか打破しなきゃ
いけないという切迫感が
ただひたすらに心の中で渦巻く。

充実感よりも不安感・・・

それがこの時の
正直な気持ちだったと思う。

DAY2 後編 に続く)

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