あと1cmが足りない!?

前回からつづく)

それから
チャラ瀬のポイントを探すこと
およそ数十分。

苦労の末、
ついに見つけたそのポイントは、
変化のある瀬にヨシが絡む流れ。

この日の理想と思えるそんな流れが
わずか100mほどの区間だけ
続いていたのだ。

うんうん、
ここにヤマメが着いてなけりゃ
諦めもつくというもの。

そう思えるくらい、
いかにも
ヤマメが好みそうなスポットであり、
この日のパターンと
見事に合致するスポットでもあった。

真新しい先行者の足跡はあったが、
そんなことよりも
とにかくポイントの特性を優先。

まずは、ヨシ際をタイトに
フローティングミノーで攻めてみる。

すると、すぐに魚からの反応が!

サイズは22cmほどと小型だったが、
狙い通りの展開に、思わず頬が緩む。

エントリーして
わずか2投目でのヒット。

ついさっきまで
長く続いた沈黙が
まるで嘘のようである。

そして、さらに一段下の瀬で
次のバイトが訪れた。

ギラギラ系のファイトだから
ヤマメには違いないが、
今度は、トルクフルな引きが
ロッドを握る右手に伝わってくる。

バレるなよ、
バレるなよと念じながら
慎重に寄せてくると、
これはいいサイズのヤマメだ。

タイミングを見計らって
さっとネットイン!

お~、この重量感は
尺ヤマメのそれじゃないか!?

久しぶりの感触に
テンションはMAXまで急上昇!

ところが・・・

ん・・・!?
でも、なんだか寸が詰まっているぞ。

あちゃ~、これは
いわゆる"泣き尺ヤマメ"っぽいな。

一応、メジャーを当ててみると
その長さは、29.3cm。

あ゛~、やっぱりか。
あと1cmが足りない。

まあまあ仕方がない、
というよりも、
十分すぎるサイズのヤマメだろう。

そう、もともとこの日は
ハイクオリティーなヤマメを
釣りたかっただけで、
そこまでサイズに
執着していたわけではいない。

そりゃー、尺モノだったら
それに越したことはないけれど、
"泣き尺"だからって、
別に落胆するわけでもないのだ。

"泣き"といっても、
出てくるのは悲しい涙ではなく、
どちらかと言えばうれし涙。
そんな感覚であった。

せっかく見事な良型ヤマメを
キャッチすることができたので、
何カットか写真を撮らせてもらう。

まあそれにしても
太くて、超幅広の魚体だ。

北海道はおろか、
本州でも
あまりお目にかかれないような
レベルだろう。

イメージ的には、
狩野川支流の地蔵堂川のアマゴとか
木曽川水系のタナビラ。

そんなイメージだと表現すれば
ディープなトラウトフィッシャーには
ギリギリ伝わるかもしれない。

そう、どこかの川の
「ヤマメ」で表現するのが難しいくらい
スゴイ体型をしていたのである。

また、この魚も
やや地味な体色をしていて
一般的な夏ヤマメの姿とは少し違った。

もしかすると、
木々に覆われた
やや暗いポイントから出てきたことも
影響したのかもしれない。

ただ、産卵期突入というレベルまでは
色褪せておらず、
写真のアングルによっては、
こんなふうに
まだまだ銀色に輝く様子もうかがえる。

やはりこの魚も
衣替えの真っ最中という表現が
ピッタリと当てはまるのかもしれない。

その後も、
20~26cmクラスのヤマメが
次々にヒットしてくる。

さながら
プチパラダイスの様相だ。

これは、その中で
もっとも秋色に近い姿態をした
ヤマメの画像。

特徴的だったのは、
未成熟と思われる魚は別として
釣れてくるヤマメは、すべて♂。

産卵行動のお相手は
すでに川に遡上している♀のサクラマス、
ということになるのだろうか。

こんな現象もまた
なんとも興味深かったりするのである。

この日は、
もうこれで満足。

コンビニで
遅い昼ごはんでも調達して
そろそろ帰ろうか。

一瞬、本気で
そんなことを考えたのだけれど、
この日は、貴重な終日休暇。

今、帰ったら
もったいないじゃないか。

結局、サイズアップを求め
別の川に移動して、
もうひとあがきしてから
帰ることを決定。

え~と~、
サイズアップ!?

こんな渇水が続く状況で
尻別川、朱太川以外で
尺ヤマメが期待できる川なんて
近くに本当にあったっけ!?

次回につづく)

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