シーズンラストの天塩イトウ

前回からつづく)

河畔に立って
天塩川の流れに目を遣ると、
そのスポットは
抜群の雰囲気で満ちあふれていた。

うんうん、
これで何にも起こらなければ
今日はもう仕方がない。

前がかりになったメンタルが
ストンと落ちるような不思議な感覚。

高揚した気持ちを
瞬時に落ち着かせてくれるくらい
期待感満点の景色が
目の前に広がっていたのだ。

まずは、一回、深呼吸。

さらに心を落ち着けてから、
流れに向かってルアーを放つ。

ところが、
何の反応もないまま
僕が投じたルアーは
天塩川の流れを
あっさりと横切ってきてしまった。

あれっ、おかしいなあ~

そんな
ちょっと落胆した気持ちで
目の前のカケアガリから
ルアーをピックアップ…

…しようとした
次の瞬間のことだった。

今、まさに
ルアーに襲い掛かろうとする
真っ黒な魚の姿を
僕は視界にとらえたのだ。

あっ、マズイ!!!

前回は、
ここでピックアップしてしまい
空中でバイト。

その結果、
たった1秒しか
魚とつながることができなかった。

このままいくと、
同じ過ちを繰り返すことになる。

咄嗟にそう判断して、
一か八か
ロッドティップを水中に突っ込んだ。

数十センチでもいいから
ルアーが動いている距離を稼いで
なんとしても、
魚がバイトする"間"をつくらなければ。

無意識に
頭に浮かんだその問題解決法が
僕の咄嗟の行動を
呼び込んだのだった。

ギュイーーーーン!!!

次の瞬間、
ロッドは大きく弧を描く。

そして、それと同時に
もう手が届くような至近距離で
イトウが激しく抵抗。

それを見て僕は、
左手を反射的に
リールのグリップから離した。

そして、咄嗟にラインをつかみ
ジリジリ、ジリジリと
何度か無理矢理に
強引に引き出すという行為に打って出た。

そんなドタバタ劇を経て、
なんとかイトウとの
距離を取ることに成功。

とっても不格好ではあったけれど、
どうやらここ一番で、
前回の反省が生かされたらしい。

そしてここからは、
決して大きくはないイトウと
一本のラインでつながった
至福の時間をじっくりを味わっていく。

いや~、やっぱり
天塩川のイトウ釣りは最高だな。

キャッチしたイトウは、
およそ80cmほど。

もうちょっとだけ
大きかったかもしれないが、
正確なサイズなど、
もはやどうでもよかった。

どことなく
あどけなさを残す表情ではあるが、
これはこれで悪くない。

体側には、
ほんのりとではあるが、
紅色の婚姻色が
浮かびはじめている。

そうそう、
多くのイトウの成魚は
師走に入ると、
来たるべき産卵の季節を
すでに意識しはじめているらしいのだ。

もう、今日はこれで十分。

最後にローアングルから
ワンカットだけ写真を撮らせてもらって、
少しの時間だけ
至福の時の余韻に浸る。

その後速やかに
水温1℃台の水中に手を突っ込んで
魚の回復を図る。

すると、
イトウは力強く尾を振って
元の住処へと帰っていった。

不思議なことに
アドレナリン全開の時は
手の冷たさが
まったく苦にならない。

というか、
むしろ心地よく
感じられるくらいなのだから
人間というのは
本当におかしな生き物である。

いやいや、
"人間"なんて大くくりにしたら、
みんなに怒られるでしょ。

ここは、
"アホアングラー"程度の
くくりにしておかないとね(笑)

こうして、
今年の天塩川釣行は終了!?

…のつもりなんだけど、
もうあとワンチャンスくらいは
あってもいいんじゃない。

往生際の悪い僕の心が
念仏のように、
そう唱えているような
気がしなくもない。

さてさて、
今年もボーナスステージはあるのか。

そこはもう、
おてんとさんと相談だな(汗)

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