2020 釣り納め DAY2

前回からつづく)

その晩、
露天風呂に浸かりながら
翌朝の戦略を練る。

湖の状況に
明らかな異変を感じる中で、
さて、朝の貴重な時間を
どうやって有効に使っていくべきか。

ひとつ仮説を立てては否定し、
次の仮説を立てては
また否定することの繰り返し。

う~ん、
なかなか妙案が浮かんで来ない。

唯ひとつ、
拠りどころとなりそうだったのが、
夕方から夜にかけて
湖に強い北寄りの風が
吹き荒れていたこと。

こんな状況の時は決まって、
風が吹き込むワンド型の地形に
多くのベイトが集まり、
それを追うようにして、
大型の鱒たちが集まってくるものだ。

そんなスポットに
うまいことエントリーできれば
朝イチにワンチャンスくらいは
期待できるかもしれない。

早や一日目にして、
誰もが簡単に思いつくような
仮説にすがるしかない
危機的な状況が訪れていた。

それでも、
ノープランよりはよっぽどマシ。

そう割り切って、
翌朝向かうスポットを選定し、
まずはカラダを
休めることに専念する。

そうそう、
もうあんまり無理が利かない
お年頃になっちゃったからね。

翌朝、
朝マズメの時間に合わせて
宿を出発。

目的地に到着し、
やや白みかけた空の下、
湖岸までの道のりを
慎重に歩いていった。

ほどなくして、
無事、湖岸に到着。

ところが、
目の前に広がる屈斜路湖は
まだ薄暗さが残る中、
穏やかで優しい表情を浮かべている。

あちゃ~、
こりゃ厳しそうだなあ~。

これが湖を見た瞬間の
僕の率直な印象であった。

そうは言っても、
この日の朝は、
もうここでやり切るしかない。

なんたって、
ここは激戦区の屈斜路湖。

めぼしいポイントには、
おそらく
先行者の姿があるに違いないのだ。

ならば、どんなに
悲観的な条件が揃っていようとも
覚悟を決めてやり切るだけ。

そう、選択肢は
もうすでにひとつしか
残されていなかったのである。

早速、湖岸に立ち、
おもむろにキャストを開始してみるが、
やっぱり魚からの反応はない。

そうこうしているうちに
東の空から太陽が昇ってきた。

ふと岸際に目を向けると
天然のシャンデリアが
陽の光に照らされて
キラキラと輝いている。

う~ん、
こんな絶景が拝めるのなら
ノーフィッシュでも
まあ仕方がないか。

よく言えば潔い、
悪く言えば淡白とも言えるそんな感情に
その時の僕は
完全に支配されていたと思う。

グン、グン、グン、グ~ン!

それは、ふと後ろを
振り返った時のことだった。

近場のカケアガリを狙っていた
カミさんのロッドが
大きく弧を描いていたのだ。

そこから、慎重だけど
危なっかしいファイトが
しばらくの間、続くこととなる。

その様子を
遠目で見守っていた僕には、
その魚がニジマスで
しかも結構なサイズであることは
すでにわかっていた。

けれども、
変にプレッシャーをかけても
いいことは何もない。

だから、あえて
言葉を発することなく
しばし傍観者に
徹することにしたのであった。

エイ!

息が上がりはじめたニジマスが
ちょっとの隙を見せた瞬間を逃さずに
一気にネットイン。

そこには、
屈斜路湖としては
十分にグッドサイズと言える
立派なニジマスが横たわっている。

うんうん、
この状況でこの魚が獲れれば
文句はないだろう。

その時の感情は、
「ヤッター」みたいなものじゃなく、
どちらかと言えば安堵。

それくらい、
その魚が貴重な一尾であることを
僕たちは理解していたのである。

サイズを測ると61cm。

足元のカケアガリの魚だけあって
だいぶシックな装いにはなっているが、
胴回りはしっかりとしていて
顔つきもなかなか精悍である。

この魚が、
2020年最後の一尾に
なるかもしれないから、
その姿をちゃんと
目に焼き付けておく。

キンキンに冷えた
湖水に手を突っ込んで
魚をしっかりと回復させた後、
そっとリリース。

イケメンのニジマスは、
勢いよく湖水へと戻っていった。

そこから約2時間ほど、
ひたすらにキャストを繰り返したが
結局はノーバイト。

集中力も切れてきたので、
ここで午前の部を
終了することとした。

ここまで、
カミさんは2フィッシュと
なんとかスコアを出していたが
僕は言えば、
ノーバイト、ノーフィッシュ。

いや~、
それにしても
バイトが少なすぎるよなあ~。

確かに、僕の狙いは
沖目を回遊する
ビカビカの
グッドコンディションだけ。

だから、バイト数が
相当程度絞られるのは
ある意味、覚悟の上だ。

ただ、それにしても
延べ6時間ほど
キャストを繰り返してノーバイトとは、
この時季の屈斜路湖では
まったく未経験の出来事。

おそらく、
釣り方が合っていないとか
そんな単純な話ではないのだろう。

2フィッシュをキャッチした
カミさんにしたって、
例年よりも
明らかにバイトの数が少ない。

う~ん、
今回の釣り納めは
このまま何も起こらずに
終了となる可能性も十分だな。

2日目午前中の
釣りを終えた時点で、
僕はそう覚悟したのだった。

さらに、午後の部は
狙っていた場所に先行者がいて入れず、
空いていたオサッペに入るも
ノーバイト、ノーフィッシュ。

ローライト、
ザブンザブンの波と
こちらにとって一切不足のない
条件をもらっていたのに、である。

もはや
絶体絶命の大ピンチ。

このままでは
ノーフィッシュどころか
完全ノーバイトで
2020年は釣り納めとなることが
まさに現実味を帯びはじめている。

この時の僕は、
まさにそんな危機に
直面していたのであった。

次回へ続く)

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