泥にまみれた不健全な渓で

前回からつづく)

その後は、
車を使って小渓流をラン&ガン。

事前に頭に叩き込んでおいた
保護水面にだけは気をつけながら、
気になる流れを見つけては撃つ。

ただひたすらに、
これを繰り返していった。

ところが
いくつかの渓では、
道外からやってきて
車中泊しながら
釣りを楽しんでいる先行者がいて、
入渓を断念。

コロナ禍だからこそ
こんな知名度のないマイナー河川に
入っているのかもしれないが、
これはちょっと意外な出来事でもあった。

そして、また別の渓では、
ウグイの猛攻に遭った挙句、
頑張ってキャッチしたアブラビレも
小型のエゾイワナというオチ。

う~ん、
秋ヤマメとの出逢いは
やはり簡単ではないな。

そんなこんな
日本海側を北上している中で、
集落の中を流れる小渓流を
偶然見つけた。

早速、スマホを開き、
地理院地図で河川名を把握。

次に道水産林務部の
ルール&マナーのページに飛んで、
ここが保護水面でないことを確認する。

うんうん、
ここは禁漁区じゃないからOK。

車を停め、
まずは川に降りてみる。

……が、
ここでアクシデント発生!

川に降り、
降りてきた斜面を
ふと振り返ってみると、
ヘビが狂ったように
もんどりうって
大暴れしているではないか。

どうやら
気付かぬうちに、
思いきりヘビを
踏んづけてしまったらしい。

こんなことは、
これが人生ではじめて。

ヘビだらけと言ってもいい
北関東の渓流でも、
ニアミスはすれば
まともに命中してしまったことは
ただの一度もなかった。

まあまあ、
マムシじゃなくてよかったけど、
あのヘビには
申し訳ないことをしてしまったな……。

そんな
アクシデントがありつつも、
まずはソロっと
川の様子をうかがってみる。

その雰囲気を
簡単に表すなら、
川は完全に荒れ果てている。
そんな印象であった。

写真だとちょっとわかりづらいが、
散見される人工建造物、
泥に埋まった底石、
透明度の低い水、
どれをとっても健全とは
言えない状態であったと思う。

ここまで回ってきた川の多くは、
堰堤こそあれど
ここまで状態が悪いことはなかった。

だからここは、
きっと期待薄かも……。

それが、
僕のファーストインプレッション
だったのだが、、、

そんな状況だったので、
過度な期待はせずに、
とりあえず流れにルアーをキャスト。

すると、
サイズは小さいながらも
魚が複数尾チェイス。

ありゃ、この川、
もしかして魚多いんじゃない!?

もちろん、
良い意味で、であるが、
ファーストインプレッションの不確実性は
もはや疑う余地がなくなっていた。

そうそう、
河川環境が良くないからと言って
イイ魚が棲んでいないのかといえば、
必ずしもそんなことない。

僕が10代の頃に通っていた
静岡県小山町を流れる小河川群は
かつて僕にそのことを
「これでもか!」と教えてくれていた。

その「河川環境が良くない」は、
おそらく、
人間目線による
非常に偏ったものなのだろう。

一見、魚にとって
過酷な環境のように思えても、
肝心の魚はその環境を厳しいとなんて
これっぽっちも思っていない。
……みたいなことが、
十分にありうるのだ。

少し歩いたところで、
20cmクラスのエゾイワナがヒット。

そして訪れたネクストバイト、、、

その正体は、
待ちに待った
待望のヤマメだったのである。

サイズは、
20cmソコソコ。

それでも、
いっちょまえに
ほのかに婚姻色を纏っているから、
おそらくこれで成魚なのだろう。

続いてヒットしたのは
エゾイワナ。

パッと見、
海からの遡上魚じゃないかと
見まがうような姿態だ。

正直なところ、
この渓は、
歩いていて気持ちいいと
感じることはなかった。

だから、
まだ30分も歩いていなかったけれど、
次のポイントで最後。

そう決めて、
ルアーを落ち込み脇の
ピンスポットに放り込んでみる。

すると……

おお!
まともなサイズのヤマメじゃないか。

色はいくぶん地味だが、
秋ヤマメとして申し分のない個体。

この渓にして、この魚。

やっぱり釣りは、
やってみないとわからないんだよなあ~。

いくつもの川をめぐり、
ようやく出逢えたまともな秋ヤマメ。

それっぽい川からは一尾も出ず、
言っちゃあなんだが
こんな泥まみれの不健全な渓から
何事もなかったかのように
ポンと飛び出してくるのだから、
面白いといえば面白い。

まあまあ、
腐ることなく
冒険を続けていたからこそ
知ることができた真実。
そうも言えるのだろう。

そう考えれば、
すべてにおいて
前向きな事象とは言えなくとも、
これはこれで
悪い経験ではなかったように思える。

結構歩き疲れたし、
あとは帰るだけ。

もし車の運転に疲れたら、
短時間の寄り道もいいだろう。

そうそう、
できるなら最後にもう一尾、
美しい秋ヤマメに逢いたい。

そんな少しの野望を持ちつつ、
奥尻島を望む
日本海ブルーの絶景に
別れを告げたのであった。

(次回につづく)

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