天塩川冬の陣・前編

天塩川はこの夏、
氾濫寸前まで大増水していた。

その影響もあってか、
あちこちで地形に
大小さまざまな変化が……

こうなってくると、
魚の付き場が
大きく変化している可能性を
にわかに否定はできない。

11月の半ば、
増水した
天塩川の河畔を歩く中で、
つぶさに感じことであった。

今年の下半期、
プライベートフィッシングでは
初めてのエントリーとなる
天塩川中・下流域。

そんな予兆を
感じていたこともあり、
地形変化が懸念される
お気に入りのポイントに
まずはエントリーしてみることに。

するとどうだろう、
イトウの付き場であった深みは
倒木で完全に
埋めつくされていたのだ。

あちゃ~、
これは厳しい!
すぐにそう悟ったのは
言うまでもない。

それでも、
半ば無理矢理ポイントに
ルアーを流し込んでみると、
まさかの生体反応が……

うんうん、
何もないよりはよっぽどいい。

外道と言えば
確かにそうなのだけれど、
こんな60cm越えの
立派なアメマスを
邪魔者扱いしちゃいかん、いかん。

この魚もまた、
異次元のポテンシャルを誇る
天塩川本流の
立派な住人なのだから。

この後、
アタリが続くことはなく、
次なるポイントへと移動。

こちらは、
大増水があっても
地質的に大きな影響を
受けにくい場所だ。

実際、
河畔に立ってみても、
なんらの違和感を
感じることもなかった。

水位も水色も、最高に近い。
これなら……

コツ!

ロッドを握る右手が
確かなアタリを捉えたのは、
大河に向けてルアーを放った
その一投目のことであった。

思いっきりアワセを入れると、
ヒットした魚がすぐにそれとわかるほど
ストロークの大きな首振りが、
手元にズシンと伝わってくる。

だが、、、

次の瞬間に
手元で感じられたのは、
ルアーと魚体が一体化していない
あのいや~な感触。

針先がちょこんと
鼻っ面に掛かっているだけで、
一回の首振りごとに
針穴が大きく広がっていく……

そう、
時間の経過とともに
こちらの血の気がひいていく
最悪の感覚である。

そして……

ハ・ラ・リ

どうだろう、
約15秒ほどは
魚と繋がっていただろうか。

首を振った時の
ストロークの大きさから、
推定されるサイズは
90~100cmの間くらい。

プライベートで
イトウを狙う日数が
極端に減っているここ数年の中では、
手応え十分だったのに……

でもまあ、
終わってしまったことを
あれこれと
ボヤいても仕方がない。

ファイト中に
目立った粗相がなかった中で、
なにかこちらに
問題があったとすれば、
喰わせ方の部分。

次にもう一度
チャンスが訪れることを信じ、
その時に向けて
アプローチをカイゼンすればいい。
そう割り切れば
いいだけのことなのだ。

時間も時間、
すぐに移動を決断し、
この日、最後と決めたポイントに向け
そそくさと車を走らせた。

ポイントに到着すると、
ここも地形に目立った変化はなく、
パッと見、イトウの付き場が
大きく変わったようにも見えない。

ちなみにここは、
安易に水辺へと
近づいてはいけないピンスポット。

少し離れたところに
スタンスを取り、
最初の一投で決め切らないと
次の一手はほぼない。
そんなクセのあるポイントなのだ。

ククン……

ロッドを握る右手が
明らかな違和感を捉えたのは、
またもや
ポイントに着いて
一投目の出来事であった。

今後は、
ルアーと魚が一体化した
確かな感覚が
手元に伝わってきている。

そして、
一本のラインを通じて
つながっている相手も、
手頃なサイズ感。

あとは落ち着いて、
この至福の時を
心から愉しむだけであった。

長さ的には、
60cmに届くかどうか。

とはいえ、
ここ2年ほどは
他の魚種と戯れる機会が増えて
イトウとの出逢いが
少なかったこともあり、
このサイズでも出逢えたことが
ただただ純粋にうれしかった。

足場が悪く、
撮影に適したスポットでもなかったので、
このワンカットを撮影させてもらって
すぐにリリース。

心情的には、
このイトウとの出逢いをもって
天塩川冬の陣を
締めくくってもいい。
そんな心持ちではあった。

でもまだ、
日暮れまで
いくらか時間があるし、
川の雰囲気も上々。

この場所で
2本目が出たことは
過去に一度もなかったけれど、
もう少しだけ
ここでやってみるとするか。

そして
この決断が、
少し先にある未来を
劇的に変えてしまうことに。

天塩川のイトウ釣りは
これだから難しい……
と同時に、
これがあるからタマラナイのだ!

(次回へ続く)

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