外道祭り最終章

遠征3日目の朝、
しっかり朝食を摂ってから
宿泊していた
天塩川温泉の宿を出発。

この日は、
天塩川下流域のポイントを
チェックする予定だったので、
国道40号を左折し
一路、北上するつもりだったのだが……

出発の1分後、
この日の予定が、
なんと脆くも
完全崩壊してしまったのだ。

温泉近くの
橋の下を流れる天塩川本流は、
一気に水かさが増し
水色はカフェオレそのもの。

確かに、
窓越しに聞こえてくる
前夜の激しい雨音が
少しばかり気になってはいた。

ただ、
長く降り続くような
雨だとは思っていなかったし、
多少の増水はあれど、
ポイントチェックに
支障を生じることまではないだろうと
高を括っていたのだけれど、、、

まあまあ、
こうなってしまった以上は
ブツブツ言ったところで
何も始まらない。

テレメータで
道北地方を流れる各河川の水位を
スマホですぐに確認。

名寄以北は
ほぼ壊滅状態であることがわかったので、
先週、フォトジェニックな
本流ニジマスを仕留めた
あの河川に向かおう。

まったくの想定外ではあったが、
即席でそんな決断を
下すことになったのである。

途中、
名寄、士別と
昔、よく通った街に寄り道。

お気に入りのパンやスイーツを
これでもかと買い込んだ。

これは
ロケハンメインの行程では
到底実現できなかったこと。

天塩川の大増水は
確かに誤算だったけれど、
「禍を転じて福と為す」ではないが
こんな釣り旅も
時に悪くはないものである。

そうこうしているうちに、
陽も高くなって幾分水温も上昇し
ニジマスの活性も
少しは上がってきただろうか。

そんな妄想を
頭の中で描きつつ
現地の川に到着。

ところが、、、だ。

前週から
一気に水位が低下し、
目の前にはなんと
広い河原が露出しているではないか。

あらあら、
これは一番ダメなヤツ。

そうか、
どうりで先週は
サクッといいニジマスが
釣れたわけだ。

はじめて目にした
この川の平水の景色。

この状況では、
どう頑張っても
フォトジェニックな
ニジマスをキャッチするのは
難しいだろうな……。

そんな絶望的な景色を
目の当たりにし、
期待度が激下がりしてしまったのは
言うまでもないこと。

ただ、
この日の状況で
釣りが成立するだけでも
十分じゃないか。

そんなふうに
気持ちの切り替えが
できたのがよかったのだろうか。

なんとこの後、
今回の遠征で3回目となる
驚きの事件が
起こったのである。

めぼしいポイントを
一ヶ所、二ヶ所と叩いてみるも
魚からの反応は皆無。

まあそうだろう、
この水況だと苦戦は必至。
それも仕方のないことだ。

そうこうしているうちに
やおら辿り着いたのが、
この日、
三ヶ所目となるポイント。

先週はいかにもな感じを
漂わせていたのだが、
ここも例に漏れず、
雰囲気がずいぶんと貧相な印象に。

あちゃ~、
この感じだと
ハイクオリティなニジマスは
居ても容易には
反応しないだろうな……。

すぐにそう悟ったのだけれど、
せっかく来たのだからと
ここぞというスポットに
ひとまずルアーを
送り込んでみることに。

最も期待度が高かった
適水勢のエリアを
何も起こらないまま
ルアーはあっけなく通過。

足元の緩流帯に向けて
ゆっくりと泳ぎを進めている。

あ~、
やっぱりダメか……。

そう思った
瞬間のことであった。

動きこそ緩慢だが
ルアーの背後を
明らかにやる気のある魚が
チェイス。

そんな様子が
突如、視界の中に
飛び込んできたのである。

けれども、、、であった。

あの緩慢な動きでは、
ピックアップまでの間に
バイトまで持ち込むのはかなり難しい。
すぐにそう判断できた。

こうなったら
一か八かの
賭けに出るしかないだろう。

そう、
ルアーを一気にピックアップし
魚にスイッチが
入った状態を維持したまま
次のキャストに
全身全霊を注ぐのだ。

そして、
この作戦が功を奏すこととなった。

次のキャストで、
狙いどおりの
ヒットに持ち込むことに成功。

もちろん、
この魚の正体が
本命のニジマスでないことには
すでに気づいていた。

だが、
「もしかして……」の想いが
頭の中を縦横無尽に駆け巡っていた分、
いつも以上に
緊迫したやりとりになったことだけは
今でもよく覚えている。

うわー、
これはスゴイ!

この川には、
こんなビックリするような
サイズのオショロコマが
息をひそめるように潜んでいたのか。

この景色を
目の当たりにした瞬間はもう、
頭の中がパニックになるくらい
興奮していたと記憶している。

この魚は、
間違いなく「外道」。

この川では
最初からニジマスだけを
狙っていたのだから、
その事実が消えることはない。

でも、
自分の中では
「本命」以上の価値があることには
違いなかった。

そうそう、
こんな不思議で
エキサイティングなことが起こるから
鱒釣りはいくつになっても
やっぱりやめられないのである。

あんなこと、
こんなことがあった3日間。

長きにわたり
鱒釣りを続けてきた人間にとっても、
知らない景色は
まだまだ無数にある。

今回は、
それを再認識させられる
印象的な釣り旅となった。

外道……
それはアングラーにとって
愛すべき存在であり、
人生に刺激を与えてくれる
かけがいのない存在。

熱が冷めないうちに
こう書き留めておくことにしよう。

(外道編、おしまい)

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