尻別川の底力

予定していた仕事が
急遽、キャンセルになったので、
これ幸いとばかりに
ウソウソとタックルを車に積み込む。

向かう先は、喜茂別方面。

そう、今年初めて、
尻別川にエントリーするのだ。

目的は、久しぶりに
美しいヤマメとの再会を果たすこと。

けれど、
それが簡単なミッションでないことは
容易に想像がついていた。

厳しい釣りを強いられるのは承知の上、
まずは、喜茂別町留産地区に向けて
車を走らせた。

途中、橋の上から見た尻別川は
相変わらずの渇水状態。

事前にテレメータの数値を
確認していたから
目の前にある状況は
十分、想定の範囲内ではあった。

先週末に降った雨の影響で
ピーク時には、一旦、水位が
10cmほど上がったのだけれど、
今は雨が降る前とほぼ同じ値。

川の状態は、
ほとんどリセットされていないと
考えた方が自然だろう。

予定していた入渓点に着くと、
そこにはすでに先行者の車が停まっていた。

人気河川、尻別川では
たとえ平日であっても、よくあること。

少し思案した後、
京極地区まで車を走らせることにした。

目的の駐車スペースに到着すると、
そこに先行者の姿はなかった。

手際よく支度をして、
昨年、ヤマメの実績が高かった
早瀬を目指して、
少しばかりの距離を歩く。

ポイントに到着すると、
目の前には、思い描いていたイメージとは
だいぶ異なる景色が広がっていた。

水位が低すぎて、貧相な流れ。

もちろん、テンションは下がったけれど、
ここで悲観的なことばかり考えたって
何もイイことはない。

できることは、予断を排し、
集中してルアーをキャストするだけ。

そう自分に言い聞かせるように、
小場所をひとつひとつ丁寧に撃っていく。

キャストを開始して5投もしないうちに
小ニジがヒット。

その後も、断続的に小ニジがヒットするが、
やっぱり、魚の活性はイマイチだ。

流速の遅いところでは、
ヒットして来るのは小ニジばかり。

今度は、少し流速のある場所を
集中して狙ってみる。

すると、次のガンガン瀬の瀬頭で
エゾイワナがヒット。

イワナっぽい場所じゃないところで
エゾイワナがヒットするということは
やっぱり川の状態は良くないのだろう。

ガンガン瀬へと流れ下る
一段上の瀬尻にルアーを流すと
今度は、ニジマスがヒット。

せっかくなので、
2ショット撮影を敢行してみる。

個人的な趣味なんだけれど、
違う魚種が並ぶ画って、
なんだか魅力的。

でも、主役であるはずの
ヤマメが不在なのは、
ちょっぴり寂しいものだなあ。

この後も、ヒットするのは
小ニジとエゾイワナだけ。

けれど、その中間の流速のところでは
散発的ではあるけれど
少なくない数の飛沫が上がっている。

きっと、その正体はヤマメ。

でも、私の投げるルアーには
一切反応しない。

そう、居ないんじゃなくて、
居るけど釣れないのだ。

そんな景色を見ているうちに、
学生時代、釣り仲間に
こんなことを言われたのを思い出した。

「お前の釣りは、
渋谷のセンター街を闊歩する
節操のないナンパ師みたいだ」と・・・。

「人聞き悪いけど、うまいコト言うなあ~」

それが、当時の率直な感想だった。

ヤマメを狙ってキャストはするが、
無視されると、決して深追いはしない。

ルアーチェンジをするでもなく、
すぐに次のターゲットを探す。

自分では往生際がイイと思っていたのだが、
手当たり次第にターゲットを
変えてばかりいるじゃないかと言われれば、
確かにその通り。

「節操がない」

うん、反論なし(笑)

その後も、なかなかヤマメを
ヒットさせることはできなかったけれど、
節操のないナンパ師のごとく、
ランガンを繰り返す。

そんなことを
ひたすらに繰り返していると、
ついに、私の投げたルアーに
振り向いてくれるヤマメに出逢ったのだ。

その娘は、
オーバーハングとスリットが絡む
複雑な流れに身を寄せていた。

長さにして7~8寸くらい。
超美形というわけでもなかったけれど、
ヤマメに出逢えた喜びはひとしおだ。

けれど、まともなカットも撮れないうちに
彼女は逃亡。

まあ、節操のないナンパ師の実力なんて
所詮、その程度のもんさ(笑)

狙っていた流域を
ひととおり流し終わったので、
少しの休憩をはさんで、
喜茂別町福丘地区に移動することにした。

ここは、昨年から気になっていたものの、
エントリーが叶わなかった場所。

まずは、ひと区間、
様子を見てみることにする。

河原を歩いていると、
おびただしい数の足跡に
思わず唖然としてしまった。

大した流れでもないのに、
ここ数日で、両手でも数えきれないほどの
人数のアングラーが
エントリーしているのであろう。

仕方がないので、
いわゆる竿抜けになりそうなポイントを
集中的に攻めていくと、
小ニジがヒットしてくる。

けれど、アタリは単発。
しかも、かなり魚がおびえているのも
手に取るようにわかる。

これ以上粘っても仕方ない。

そう判断して、
最初にエントリーするはずだった
留産地区に移動することにした。

目的に場所に着くと、
今度はアングラーの姿はない。

ここは、昨年、
かなり濃く叩いたポイントだから、
魚の着き場は熟知している。

先行者が抜けてから、
それなりに時間も経っていたので、
十分に勝算はあったのだ。

とにもかくにも慎重に
小さなスポットを叩いていく。

時折、青いアイシャドーが美しい
エゾイワナが顔を見せてくれるが、
ヤマメはおろか、
ニジマスさえも姿を見せない。

そうこうしているうちに
この流域の核心部にやってきてしまった。

ここで出なければ、今日は打ち止め。

そう決めてから、
ルアーをサイドハンドキャストで
オーバーハングの下に滑り込ませる。

バッシャン!

いきなりのヒットだ。
少しずつだが、ドラグも出ていく。

何やらスーパーライトタックルには
似つかわしくない魚が
ヒットしたようだ。

ただ、ローリングもしなければ、
ジャンプもしない。

しばらくのファイトで
その正体がエゾイワナであることは
すぐにわかった。

そこからは、
冷や冷やのファイトを楽しむ。

ようやくランディング態勢に入って
ネットに手をかけた時、
思わず笑ってしまった。

ヤマメ・オショロコマ用のネットじゃ
魚が入らないのだ。

仕方がないので、
少し離れたところにある浅瀬まで誘導。

50cmには少し足りないけれど、
貧相な流れには似つかわしくない
立派なエゾイワナであった。

体色は、居付きのエゾイワナらしい
色合いをしている。

オレンジ色をまとった
尾びれの艶めかしさも秀逸だ。

背びれや・・・

尾びれも見事。

外道っちゃ外道なんだけれど、
"鱒"には変わりないから
今日のところは、この魚で十分。

結局、ヤマメを追加することは
叶わなかったけれど、
なんだかんだで、
かなりの数の鱒に遊んでもらった。

こんな厳しい状況でも
アングラーを十分に楽しませてくれる
尻別川の底力は相当なもの。

改めてそれを実感することができて、
本当によかったなと思う。

できることなら、
次こそは、超美形の大型ヤマメが見たいな。

そのために、これからも、
愚直なまでに
節操のないナンパ師で
あり続けてやるのだあ~(笑)

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