昨日は、貴重な全休日。
最近の重役出勤を反省し、
チョイと早起きして、尻別川へと向かう。
そう、何としても
美しいヤマメに会いたいのだ。
早出すればイイというものでは
ないかもしれない。
けれど、陽の高い時間帯に
尻別川のヤマメたちが見せる
ルアーへの反応の悪さを
少しは補えるんじゃないかという打算が
そこにはあったのである。
事前に確認した予報では、
雨は午後から。
午前中は、さぞかし快適に
釣りができると思いきや、
喜茂別町に差し掛かるあたりから
フロントガラスに
雨が激しく叩きつける。
オイオイ、
これじゃ一気に濁っちゃうんじゃないの?
そんな不安な気持ちを抱きながら
目的の留産地区を目指す。
駐車スペースに車を停め、
おもむろに川をのぞき込んでみると
目に飛び込んできたのは
クリアな尻別川本流の流れ。
最悪の事態を回避できたことに
少しだけ安堵する。
雨が小やみになった隙を狙い、
急いでタックルをセット。
明瞭な踏み跡をたどり、
小砂利が堆積した河原に降り立った。
この場所へは、
今回が初めてのエントリー。
グーグルマップはチェック済みだけれど、
明確な脱渓点は把握できていなかったから、
増水のリスクがある状況に
心はざわざわと落ち着かない。
万一のときの逃げ場をチェックしながら、
今日は川を釣り下る。
入渓してすぐにバイトを捉えるも、
17cmくらいのチビヤマメ。
その後も、断続的にバイトはあるが、
同型のヤマメばかりである。
ヤマメの反応がイイのは
悪いことじゃないんだけれど、
サイズが伸びる気配がないこと、
エゾイワナとニジマスから
何の反応も得られないことには
いささかの不安を感じざるを得ない
スタートとなった。
そうこうしているうちに、
スコールのような雨が打ち付けてきた。
あまりに激しい降りだったので、
底石もろくに見えない。
増水と濁りの発生まで
そう時間はかからないだろうと
思えるほどの豪雨が
およそ15分ほど続いただろうか。
やはりというか何というか、
水路を通じて
濁流が一気に本流へと流れ込んでくる。
安全な立ち位置は確保していたから、
しばらくキャストを続けてみたけれど、
魚からの反応は一気に消えてしまった。
仕方がないので、
一旦、車へと引き返し、
少しだけ様子を見ることにした。
しばらくすると、
雲が切れ、雨も小康状態となったので、
濁りの影響が少なそうな
上流域に入り直すことに。
次の入渓点に着くころには、
雨も完全に上がり、陽も差してきた。
しばらくキャストを続けると、
ようやく、まともなサイズの
エゾイワナが顔を出してくれた。
狙いの魚ではなかったけれど、
それでも、まともなサイズの
鱒の顔を拝めるのはうれしいことだ。
その後もキャストを続けていくが、
アタリは単発。
時折、小ニジとチビイワナが
顔を出してくれる程度で、
本命からの反応はない。
叩かれまくっている影響なのか、
渇水が続いている影響なのか、
なかなか渋い状況が続く。
すでに、時刻は10:00。
結局、いつもの重役出勤と
何も変わらない状況になってしまった。
仕方がないので、
気分転換の意味も込めて、
初めての支流に、様子見に入る。
入渓してしばらくは、
1尾の小イワナが
バイトしてきたのを除けば、
何もない時間が続いていた。
漂う閉塞感・・・
そんな空気が一変したのは、
見渡す範囲の視界から、
わかりやすいポイントが
消えるところまで来た時のことであった。
ちょっとしたピンスポットごとに
鱒からの反応が訪れる。
小ヤマメ、小イワナに混じって、
ようやく、まともなサイズのヤマメが
顔を見せてくれた。
まともなサイズと言っても、
せいぜい20センチを
少し超えた程度だったけれど、
それでも十分にうれしい。
その後も、
アングラーのプレッシャーから
完全に解放された流れからは、
純粋無垢な鱒たちが
果敢にルアーにアタックしてくる。
バイトがあまりに頻発するので、
2カ所あるミノーのフックを
ワンフックセッティングへと、急遽変更。
キャストを再開したところで
待望の良型ヤマメがヒット!
サイズは、23cmくらい。
体高があって、健康状態良好な夏ヤマメだ。
これこそが
"スモールフィッシング"の醍醐味。
やっぱり、
ヤマメ釣りって愉しいな。
納得のヤマメと出会えたので、
休憩をはさんで、
さらなるサイズアップを目論み、
再び、本流の流れに立つ。
複雑な流れに
オーバーハングが絡む早瀬を
丁寧に流していくと、
エゾイワナと小ニジが連発。
ミスバイトや
フックアウトした魚も含めると
相当な数の鱒と
コンタクトしたと思う。
ミミズの空き箱が
投棄されていないところを見ると、
おそらく、しばらくの間、
良識のないエサ釣り師は
入っていないのだろう。
確かに、大量捕獲を目的とした
エサ釣り師がエントリーするには
チョイと面倒な流れではある。
良識あるエサ釣り師は、
ミミズの空き箱を投棄したりはしない。
投棄された
ミミズの空き箱が散乱している流域は、
魚影が極端に薄く、
それがないところには、
たくさんの鱒たちが棲むという事実。
残念なことだけれど、
この事実が、
今の尻別川に横たわる悲しい現実を
雄弁に語っている。
資源豊かなこの川でさえ、
魚の大量捕獲を目的とした
アングラーの釣獲圧というものは
鱒たちに、甚大な影響を与えていることを
実感せずにはいられない。
早瀬が終わり、
トロ瀬が視界に入ってきた時、
ビックリするような景色が
目に飛び込んできた。
無数のライズが、
川面を埋め尽くしていたのだ。
「バッシャン」という派手なものもあれば、
「モワ~ン」とした静かなものもある。
ライズの主は、大多数がヤマメ。
中には、間違いなく
良型を予感させるライズも混じっている。
ただ、このパターンは、
ルアーだと、往々にして
不発になるケースが多い。
立ち位置を工夫し、
できるだけ魚に
プレッシャーを与えないように
アプローチを試みた。
けれど、鱒たちからの回答は
"完全無視"。
ざっと見える範囲だけでも
40や50といった数の鱒たちが
ライズを繰り返しているのに、
バイトはおろか、チェイスすらない。
やっぱり、
尻別川のヤマメは気まぐれだなと
思わず苦笑してしまった。
腕利きのフライフィッシャーが
この状況にアプローチしたら
いったい何が起こるのだろう。
そんなことを妄想してしまうほどの
圧巻の光景だったと思う。
さすがに歩きすぎて疲れたので、
深瀬にヨシが絡むポイントを最後に
脱渓することを決めた。
そのポイントで、
尻別川が、この日一番の
プレゼントを贈ってくれたのだ。
ダウンクロスで、
ヨシの際ギリギリにキャストしたミノーを
ネチネチとシェイクしていると、
小気味の良いシグナルが
ロッドティップに伝わる。
ギラッ、ギラッと
ローリングを繰り返すその魚が
良型のヤマメであることはすぐにわかった。
メーターオーバーのイトウを掛けた時と
同じくらいの気持ちで、
慎重にファイト。
小さなネットで
危なっかしくランディングしたその魚は、
太っちょな超美形ヤマメであった。
サイズにして、
およそ27cmといったところか。
パーマークは、
まるで、桜の花びらのような
特徴的な形をしている。
「いや~、こりゃ本当にキレイな魚だな」
あまりにうっとりとしてしまって、
そんなベタな感想しか出てこない。
本当は、もっといろんなカットを
撮影してみたかったのだけれど、
彼女は隙を見て逃走。
苦笑いを浮かべながら、
ちょっとした満足感に浸り、
昼下がりの尻別川を後にすることにした。
次は、別の川で
ヤマメを狙ってみるつもりだったけど、
これじゃ、また尻別川に来てしまいそうだ。
でも、やっぱり新規開拓も捨てがたい。
天気予報とにらめっこしながら
次なるフィールドを
検討することにしよう。