無事に仕事も終わり、
翌日は、昼前から自由の身に。
嵐の襲来は迫っているものの、
当日中は、何とか静けさを
保ってくれそうだったので、
夕刻まで道北に居残ることを決意する。
とは言え、北の大地の11月は
とにかく陽が落ちるのが早い。
ビッシリやっても
せいぜい4時間がいいところ。
セコマで買ったパンで
軽い昼食を済ませ、
フィールドへと急ぐことにした。
え~と、「セコマ」とは
セイコーマートの略称。
天塩川流域で言えば、
ローソンは名寄、セブンイレブンは
美深が最北の店舗となる。
よって、音威子府以北のまちにある
メジャーなコンビニは、セコマだけ。
「Qマート」という
道北資本のコンビニも店舗拡大中で、
今後はこちらにも期待大なのだが、
現状は、セコマへの依存度が
道内随一の地域と言えるだろう。
ちょっとばかり
話が横道に逸れてしまったので、
天塩川に話を戻すことにしよう。
時間の制約もあるから、
期待度の高いポイントから
順番にエントリーする。
ただ、ひとつだけ問題があった。
前日は午前が雨、
午後は天気が回復し気温が上昇。
その影響で雪どけが進み、
天塩川の水位が上昇していたのだ。
そうなると、
河畔に打ち上げられていた枯れ葉が
増水とともに流され、
まともな釣りをさせてもらえない。
中流域で少し様子を見てみたが、
やはり枯れ葉が
ワンキャストワンヒット状態。
これじゃあ
全く釣りが成立しないので、
比較的枯れ葉の影響を受けにくい
下流部のポイントを
ランガンしてみることにする。
最初にエントリーしたポイント、
見た目の雰囲気は悪くない。
流下する枯れ葉も少なくないが、
中流域よりも密度が薄いから、
なんとか釣りが成立しそうだ。
期待を込めて
キャストを開始する。
ワンキャスト・・・
ツーキャスト・・・
フックが枯れ葉を拾うことは稀。
けれど、魚からの反応もない。
さらにキャストを続けてみる。
けれど、やっぱり無反応。
粘っても仕方がないので、
次のポイントへと移動する。
次のポイント、
ここも雰囲気は悪くない。
ただ、時刻は13:30を過ぎ、
早くも陽が傾きはじめた。
迫り来るタイムリミットに
急かされるような感覚に陥りながらも
何とか焦る気持ちを押し殺す。
いつものリズムを守ることに
意識を向けながら、
キャスト&リトリーブ。
ルアーが水を噛む感覚から
「これは」という緊張感がみなぎる。
ドン!
答えは、その一投目に出た。
首振りのストロークは小さいが
その鈍重なファイトは
イトウに間違いない。
フッキングには確信を持てたので、
そこからしばらくの間、
心に余裕を持ちつつ
トルクフルなファイトを楽しむ。
増水した重たい流れに押され
サイズの割に、
少してこずることになったけれど、
無事、ランディングに成功。
70cmを少し超える
スタンダードな体型のイトウであった。
下流域の魚だけあって、
前日の魚よりも
シルバーの色合いが強い。
できることなら
サイズアップを狙いたかったけれど、
それは贅沢というもの。
この日も、グッドコンディションの
イトウに出逢えたのだから
文句などあるはずがないのだ。
水没した草の上で撮影していたから、
隙を見て魚は元気よく脱走。
琥珀色の流れに
勢いよく帰っていった。
さて、このポイント、
まだワンキャストしかしていない。
まだ次があるんじゃないかと
期待を抱くのは必然だろう。
高まった集中力を維持しながら
キャストを再開する。
すると、その1投目。
今度は、ピックアップ直前に
ロッドに衝撃が走った。
反射的にアワセを入れると、
ホワイトスポットを身にまとった魚体が
目の前でクネクネと激しく揺れ動く。
正直、少し"ガクッ"ときたけれど、
魚は良さそうなので
真面目にランディング。
今度は、60cmを
少し超えるくらいのアメマスであった。
まあまあ、
本命ではなくとも
イイ魚であることは間違いない。
アブラビレだってちゃんと付いてるし、
「テンションの下がらない外道」
みたいな感じかな。
2キャスト2ヒット。
そりゃ、まだ次があるかもと
当然、期待はしてしまう。
ドン!
その期待は、
現実のものとなった。
今度は、少し上流側の
流れのヨレでヒット!
サイズは小さいが、
魚種は本命へと回帰したようだ。
今度は、さほど苦労することなく
ランディングに成功。
先ほどよりもひと回り小さい
ジャスト70cmほどの
若いイトウであった。
サイズも似ていたから、
まさか同じ魚じゃないよなと
マジマジとイトウを見つめてみる。
よかった。
スポットの配置が違うから、
間違いなく別の個体だ。
こちらの魚も
何カットか撮影させてもらった。
胸ビレとか・・・
顔のアップとか・・・
そうこうしているうちに、
この魚も、隙を突いて勢いよく脱走。
イトウは、一瞬のうちに、
天塩川の流れに姿を消した。
ここまでの展開で、
もう十分お腹いっぱいになっていた。
フルタイムで
釣りができているわけじゃないのに
サイズはともかく、
魚にはちゃんと出逢えていたから。
けれど、迫り来る嵐が通り過ぎたら、
次のエントリーが叶う保証などない。
これで、今シーズンの
打ち止めになってしまう可能性だって
十分に考えられる。
そんな想いが
瞬間的に頭の中を駆け巡った。
「まだ、少しだけ時間はある。」
そう思い直し、
もう1カ所だけ、
気になっていたポイントに
入ってみることにした。
けれど、残念ながら、
次のポイントで狙いのサイズの魚に
出逢うことはできなかった。
それでも、
挨拶代わりに
60cm弱の小イトウが
反応してくれたのは
なんともありがたいこと。
その日最後のシーンを
リリースで終われるかどうかは
自己満足度に
大きな影響を及ぼすものである。
写真を撮れる場所もなく、
一か八か、
イトウを水中で手持ちしての撮影。
この1枚を撮影した次の瞬間、
すでに私の手元から
イトウの生命感が消えていた。
十分満足はした。
でも、まだ
11月の中旬だという思いもある。
もし次があるのなら、
仕事抜きで
天塩川にエントリーしたいと思う。
さて、そんな私のわがままが
現実となる日は
果たして訪れるのだろうか。
嵐は嵐でも
国民的アイドルのARASHIが
ここ北海道で大暴れするのは大歓迎。
でも、歓迎しない方の嵐には
何事もなく過ぎ去ってくれることを
今はただ、願うしかない。