屈斜路湖爆釣劇 第2幕





前回からつづく)

ここまでの爆釣劇で、
50±5cmクラスのアメマスは
お腹がいっぱいになるくらいの数、
すでにキャッチできていた。

どの個体も美しく、
その満足度は十分すぎるほど。

けれども、
それで終了とならないのが
鱒たちを溺愛する
釣り人としての性なのだろう。

それまでのアプローチには
いったん見切りをつけ、
今度はひと工夫を入れた
別のアプローチで
よりハイクオリティーな
鱒たちに照準を絞ることにする。

ドン!

ジィィィィィィィィーーーーーーー

答えは、すぐに出た。

アプローチを変えてから
5キャストもしないうちに
今までにはない衝撃が
ロッドを握る右手に走ったのである。

アワセを入れてから数秒、
相手がこれまでと違う魚であることは
すぐに理解できた。

ジジジジィーーーーーーー

感覚的に
超ド級がヒットした感触はなかったが、
およそ春のニジマスとは
思えないほどの強烈なパワーで
何度も何度も繰り返し
スプールからラインが
どんどんと引きずり出されていく。

オイオイ、
いったいどうしちゃったのよ???

それにしても、
澄んだ空気の中で奏でるドラグ音って、
ホントに格別だな……

そんな満足感に浸りながら、
しばし、ファイトを愉しむことに。

そして、ついに魚が見えた。

うわー、太っ!

感想は以上、ってくらい、
ものすごい体型をしている。

サイズこそ
60cmには足りなそうだったけれど、
予期しないほどの
ハイクオリティーフィッシュ。

姿を見てちょっとビビり、
そこから少し慎重になって、
なんとかランディングに持ち込んだ。

いや~、
これは最高にいい魚!

サイズこそ
58cm止まりだったけれど
産卵とは無縁の
これぞ屈斜路レインボーという
見事な魚体をしている。

う~ん、
4月にこの魚は
いい意味での想定外。

この魚が客観的に見て
プラチナレインボーなのかどうかは
さておくとしても、
僕的に大満足の
一本であったのは間違いない。

いやはや、
それにしても美しい。

釣った喜びじゃなく、
この姿を拝めた喜びのほうが
圧倒的に大きいのだから
正直言って、自分でも驚く。

透き通った胸ビレなんか、
屈斜路レインボーならではの
気高さを誇っていたし……

キラキラと銀色に輝く魚体も
他のフィールドでは
なかなかお目にかかれない
存在感を放っている。

ちょっと余談だが、
もし、主な道内の湖の中で
美しいニジマスランキングを
独断でつけるとしたら、
トップを争うのが
ここ屈斜路湖と支笏湖の2カ所。

この2湖に
然別湖が差なく続き、
以下、洞爺湖、阿寒湖と続いていく。

漁業権のない
2つの湖のニジマスが
もっとも美しいなんて、
ちょっと複雑な気もするが、
まあ、考えてみれば
自然なことなのかもしれない。

やっぱり、
自然の力って凄いんだな、、、

さて、このニジマスの
リリースが完了してから約5分。

キャストを再開してまもなく
またしても、
アメマスとは違うバイトを捉えた。

遠目に見える魚体は
先ほどの魚よりも
ひとまわりか
ふたまわりくらい小さくは映るものの
それでも決して悪いサイズではない。

けれども、
さっきの魚と比べて
はっきりもの足りなさを
感じさせるファイト。

あれっ、
産卵絡みのニジマスを
ヒットさせちゃったかな???

その瞬間、
少しだけ不安が頭をよぎる。

なんたって、
そのシナリオは避けたかったから
あえてインレットを外した
ポイントを集中的に狙っていたのに
まさかここで……。

ところが、
ランディングした魚の姿を見て、
すべての謎が解けた。

あーなるほど、
この個体、成魚放流魚が
湖で成長したやつだな……。

この写真で比較してもらうと
先ほどの魚との違いは一目瞭然。

肌艶がくすんでいて、
鱗の乱れも気になるし、
なんと言っても、
胸ビレが小さくやや変形している。

たしかに、
湖に放たれてから
時間が経過している分、
顔つきなんかにいくらかは
回復した痕がないわけでもない。

だがこれが、
正真正銘の屈斜路湖レインボーで
ないことだけは明らか。

う~ん、かなりガッカリ……
でも、ポストスポーンの
個体じゃなかったことに、
ちょっとだけ
ホッとしたのも事実ではあった。

ちなみに、
屈斜路湖に成魚を放流することに対して、
感情的な批判をすることは
絶対に避けたいと思っている。

中身の良し悪しは別としても、
地元には地元の考え方があるし、
よそ者としてフィールドを
利用させてもらっている僕たちが
地域の考え方を尊重しないでどうする
というのが大前提だ。

その上で
あえて言わせてもらえば、
もし、屈斜路湖という
素晴らしいフィッシングフィールドを
全面に押し出すことによって、
地域への交流人口増を画策するならば
湖への成魚の放流は
マイナス要因にしかならないだろう。

首都圏から
わざわざ時間とお金をかけて
屈斜路湖にやって来たアングラーが、
やっとの思いで
キャッチしたニジマスが
こんな容姿だったら、、、

もう二度と
屈斜路湖に遠征しようだなんて
思わないだろうし、
そのお金があったら
箱根の芦ノ湖に10回通うはず。

よしんば
道東を再訪してくれたとしても、
リザーバーなどで
もっと美しいワイルドレインボーを狙うか
放流魚がもっと簡単に釣れる
阿寒湖や阿寒川へと
向かってしまうに違いない。

そんなリスクを承知で
屈斜路湖に成魚を放流しているのなら、
これ以上は
地元に意見することを
差し控えようと思う。

ただし、
いろんな意見があって、
さまざまな課題が
山積していたとしても、
なにはともあれ、
屈斜路湖という唯一無二の魅力を持つ
素晴らしきフィールドが、
地元の人々も
その地を訪れるよそ者も、
皆が心潤うフィールドへと
育っていくことを心から願いたい。

閑話休題、
その後は、アメマスの連発に
再び回帰することとなった。

ただ、狙い方を変えた分、
バイトの頻度は下がり、
一方で、サイズは確実に上昇。

カメラを首に下げながらの
キャスト&リトリーブでも、
こんな60cm超えの
立派なアメマスがヒットしてくる。

数だけを言えば、
もう数えきれないくらいほどの鱒を
キャッチできていたと思う。

だから、
今日のところは
良くも悪くも満腹感しかない。

「悪くも」なんて
魚には失礼な言い方なんだけど、
ここまで釣れちゃうと
ダラダラしてきちゃうというのが
本当のところ。

それじゃダメだって、
頭ではわかっているのだけどね。

天候は悪化の一途をたどっていて、
晩からは吹雪の予報。

そんな状況でもあったので、
翌朝、再びエントリーできるどうかかは
なんとも微妙な情勢ではあった。

しかも、急激な冷え込みで
フィールドコンディションが
大きく変化してしまうこともほぼ確実。

でもまあ、
それならそれでいいだろう。

春の屈斜路湖には
もう十分すぎるくらい
満足させてもらった。

こうして、
この日の釣りは
賑やかさが消えないうちに
幕を閉じたのである。

そして、
迎えた翌日、、、

宿の部屋のカーテンを開けると、
窓の外には、一面の銀世界が……

ありゃ、
これは次の仕事に直行か???

いやいや、
あきらめるのはまだ早いよね(笑)

次回に続く)

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